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写真家・幡野広志さんエッセイ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』が刊行

写真家・幡野広志さん文・写真『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』がポプラ社より刊行されました。

行きたい場所へ行き、会いたい人に会い、生きたいように生きる。ぶれない意志をもつ写真家が1枚の写真とともに切りとる、息子のこと、写真のこと、病気のこと、旅行のこと……。新たに書き下ろしエッセイと、古賀史健さんとのロング対談「エッセイでも写真集でもない、あたらしい本の形」を加え、ポプラ社のWebサイトでの人気連載「幡野さんの日記のような写真たち」を書籍化した一冊です。

 

”ふつうの日常をいちばん出せた本”

本書は、幡野広志さんが ”ふつうの日常をいちばん出せた本” というほど、素の幡野さんが垣間見られるエッセイ集です。

息子さんのこと、病気のこと、写真のこと、旅行のこと、料理のこと……テーマは多岐にわたりますが、幡野さんのぶれない価値観や幡野さんならではのモノの見方は本全体に通底しています。

 
本書の「はじめに」で、幡野さんは「自分を好きでいる」ことができているから、人生を楽しめていると綴ります。

「ぼくは写真家だけど、カメラから生まれたわけではない。ガン患者ではあるけど病人として人生を生きているわけじゃない。一児の父ではあるけど子どもに人生を捧げているわけでもない。人生はバランスだ。人生の時々でハマるものや人間関係や環境も変化する。(中略)人生は和食のようにバランスよくバラけているものだ。

人生が和食なら、主食のご飯が美味しいことが理想的だ。ご飯が美味しけりゃ、おかずは焼き魚でもトンカツでもなんでもいい。ぼくにとって人生の主食は『自分を好きでいる』ということなんだと思う。人生の主食が羽釜で炊いたご飯のように美味しいから、しっかり人生をたのしめいているつもりだ」

幡野さんの生き方から、参考にできそうなことがきっとあると思います。

『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』はじめに

『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』はじめに

 

本書よりエッセイを一部抜粋

病院にいく準備をして玄関で靴をはいていると、妻と息子が応援してくれた。たけのこがのびるような感じの手の振りと変な踊りと歌で、足をバタバタさせながら「がんばれっがんばれっ」と応援してくれた。おもわず笑ってしまった。写真をたくさん撮ろうかとおもったけど、こういうものほど目に焼き付けておいたほうがいい。きっとぼくが死にそうなときにみる景色はこれだろう。
(「写真には撮らない景色」より)

 
気仙沼でお世話になっている民宿を訪れると、お正月の挨拶のように近所の人が訪れ、みんなで会話をしたあとに海で一緒に黙祷をした。「私たちも笑顔になっちゃいけないって思ってたんだけど、そうじゃなくて明るく生きたいんだよね。」といっていた。現地を訪れないと吸えない空気がある。いつか妻と息子を連れて行ってあげよう。
(「3.11の気仙沼」より抜粋)

 
小学校の入学式の日は雨がしとしと降っていた。息子はすこし残念そうだった。お父さんは雨の日が好きだよといった。息子はぼくが雨好きということを耳のタコがずぶ濡れになるほど聞いている。そろそろウザったく感じているだろう。だけど息子はぼくが雨の日が好きな理由までは知らない。息子が生まれた日が雨だったから、ぼくは雨の日が好きなのだ。いまでも雨の日に一人で車を運転していると、息子が生まれた日のことを思い出す。
(「息子が生まれた日から、雨の日が好きになった」より抜粋)

 
――何も考えずに笑えるエッセイから、結末がどうなるかハラハラするもの、新しいものの見方を教えてくれるもの、ぎゅっと胸を締め付けられるものまで、それぞれが心に染みこんでいくようなエッセイ集です。

 

『嫌われる勇気』著者・古賀史健さんとの対談「エッセイでも写真集でもない、あたらしい本の形」収録!

『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』対談

『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』対談

親交の深いお二人による、写真と文章についての20ページの対談です。
古賀さんはこの本を「写真の読み方がわかる本」と表現します。

 
「幡野さんの長くも短くもないエッセイが淡々と続いて、そこにパシャっと取られた写真が添えられている。つまり、それぞれのエッセイが『この写真が生まれるまで』のストーリーになっている」と感じたそう。

 
おふたりの対談から、「写真と文章の関係」がよくわかると思います。

 

本書の目次(抜粋)

・治療のこと
・写真には撮らない景色
・お寿司屋さんへ
・料理はおもしろい
・大人にならなければ気づかなかった
・チョココロネをわけあって
・お年玉でお金の教育
・3.11の気仙沼
・外出自粛の週末
・あたらしい日常を生きる
・ヘタだけどいい写真を撮ろう
・雪の山で撮影していた
・息子が生まれた日から、雨の日が好きになった

ほか、全51本

 

著者プロフィール

著者の幡野広志(はたの・ひろし)さんは、1983年生まれ、東京都出身。写真家。2004年、日本写真芸術専門学校をあっさり中退。2010年から広告写真家に師事。2011年、独立し結婚する。2016年に長男が誕生。2017年、多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。近年では、ワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」、ラジオ「写真家のひとりごと」(stand.fm)など、写真についての誤解を解き、写真のハードルを下げるための活動も精力的に実施している。

著書に『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)、『写真集』(ほぼ日)、『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)、『なんで僕に聞くんだろう。』『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。』『だいたい人間関係で悩まされる』(以上、幻冬舎)、『ラブレター』(ネコノス)がある。

 

 
【関連】
幡野広志 ほぼ週刊連載 幡野さんの日記のような写真たち|ポプラ社

 


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