本屋、やりませんか? トーハンが小型書店の開業パッケージ「HONYAL」(ホンヤル)をサービス開始
書店取次大手のトーハンは、小型書店の開業をサポートする少額取次サービス「HONYAL」(ホンヤル)をスタートしました。
日本中の「本屋をやりたい人」へ小型書店の開業をサポート
「HONYAL」(ホンヤル)では、本の流通フローを簡略化することで、従来は口座開設に至らなかった少額の取引先とも持続的に取引可能なスキームを実現しました。これにより書籍販売への新規参入を促し、人と本とのタッチポイントを増やすことで、無書店自治体の増加などの課題解決に寄与することを目指します。
【「HONYAL」の主な特長】
◎HONYALとは、総合出版取次トーハンが提供する書籍少額取次サービス。
◎開業に際して、連帯保証人や信認金が原則不要。
◎出版社3,000社以上から本を調達可能。
◎全国エリア対応。
HONYAL(ホンヤル)について
HONYALはトーハンが提供する書籍少額取次サービスです。
取扱いは書籍の注文品のみ、返品は仕入額の15%まで、配送は週1回となりますが、こうした流通フローの簡略化によりコストを削減し、従来は成約に至らなかった少額取引に対応します。
想定月商は30万円~100万円とし、小型書店の開業や、飲食店・ヘアサロンなど他業種店舗での書籍販売、また公共施設や一般企業との連携も視野に入れています。HONYALにより、トーハンは全国各地に人と本とのタッチポイントを増やします。
【ポイント1 取引条件の緩和】
書店業の「はじめやすさ」を第一に考え、信用取引で一般的な連帯保証人や信認金(取引保証金)をHONYALでは原則不要とします。同じく、一般的な書店では開業時に一括払いとなる初期在庫費用も、HONYALでは分割払いの相談を受け付けます。
【ポイント2 総合取次の商品調達力】
HONYALではトーハンの一般的な取引書店と同じく、国内出版社の大多数となる約3,000社以上からの商品調達が可能です。トーハン桶川センター(埼玉県桶川市)で注文に対応し、保有在庫70万点500万冊から随時ピッキング、非在庫品は出版社へ発注します。
【ポイント3 全国エリア対応】
トーハンの全国配送網を活用し、HONYALは全国エリアに対応します。
ほとんどのエリアで、一般的な書店と同程度のマージン率(書店粗利益率)となります。
★「HONYAL(ホンヤル)」公式サイト:https://honyal.jp/
HONYALの開発に至った経緯
【本と書店を取り巻く環境】
近年、街の書店が減り続けています。1990年代には全国で2万数千店あったとされる書店が、日本出版インフラセンターの調査によれば、2024年3月には10,918店となりました。年間の閉店数が高水準で推移する一方、新規出店は減少し、2022年度以降は年間100店未満となっています(※一般社団法人日本出版インフラセンター調べ 共有書店マスタ登録店舗数の推移:https://www.jpoksmaster.jp/Info/documents/top_transition.pdf)
また、出版文化産業振興財団の調査によれば、2024年8月末日現在、全国の市区町村のうち27.9%には書店がなく、ゼロまたは1店だけの自治体は47.7%という状況にあります。(※一般財団法人出版文化産業振興財団調べ 2024年9月18日 出版文化産業振興財団による記者発表会(資料PDF 54ページ以降):https://www.jpic.or.jp/topics/2024/09/18/133641.html / https://www.jpic.or.jp/topics/docs/4eba38157f49c7dab4273095f1daa2f4cc835ac0.pdf)
多くの人の生活圏から書店が消えていく状況は、単に出版業界の収益機会の減少を意味するだけではありません。書店を通じて培われてきた出版文化の危機であり、長い目で見て社会全体が受ける影響は、決して看過できるほど小さいものではないとトーハンは考えています。
【独立系書店の増加】
しかし一方で、いわゆる独立系と称されるタイプの書店が、いま静かに存在感を増しています。比較的小規模な単独店で、店主の個性や選書のセンスが大きな魅力であるといった特色があり、メディアやSNS等を通じて本好きの間に知られるようになりつつあります。
トーハンの調査によれば、2024年10月現在日本全国で341店の独立系書店が営業中と見られ、こうした書店では取次との取引がない(あるいは取引開始に至らなかった)ケースも多いと考えられます。
【書店の“はじめにくさ”に課題】
おそらく潜在的にはもっと多くの「本屋をやりたい人」がいるはずなのに、そのニーズに応える仕組みが、いまの出版業界にはないのではないか……書店をサポートする取次の視点から、トーハンは“書店をはじめにくい状況”に課題があると考えました。
対策として「本屋をはじめやすい仕組み」をつくるにあたり、専業書店にこだわらず、他事業との「兼業書店」も視野に入れた開業支援を、コンセプトの中心に据えました。
実効性ある仕組みとするためには、少額取引でも継続可能なスキームの開発が必要でした。流通・小売に関わる諸経費が上昇する中でシビアな課題設定ではありますが、これを実現すれば、小規模でも個性的な店舗を取次としてサポートでき、より多くの人に本を届けることが可能となります。社会的・文化的にも意義のある、トーハンこそが取り組むべき事業だと考えました。
【書店の新たな形を求めて】
トーハン社内のプロジェクト「Book Boost Lab.」が中心となって調査研究を重ね、ハードルとなる要素を精査し、既存のスキームを見直し、持続可能なビジネスモデルの具体化に取り組みました。
そして、このたび少額取引を前提にパッケージ化した取次サービスが、HONYALです。
トーハンは、今ある書店を減らさないための努力を続けるとともに、HONYALによって、新たに書店を増やすためのアプローチを開始します。構えは小さくともオーナーの思いがこもった書店、あるいは書店という形式にこだわらず、地域のなかで人と本とのタッチポイントとして歓迎される場所が、一つでも多く登場することを願って、トーハンはHONYALのサービスを開始しました。
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