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「山岳遭難捜索」のリアル『「おかえり」と言える、その日まで』が刊行

「山岳遭難捜索」のリアルを描いたノンフィクション、中村富士美さん著『「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から』が新潮社より刊行されました。

「今日もどこかの山で、助けを待っている人がいる」。ニュースにならないだけで、山岳遭難は低山・里山で頻繁に起きています。なかには命を落としてしまうケースも……。本書は、実際に捜索を手掛ける団体の代表・中村富士美さんによる捜索実話です。

 

発見の鍵を握るのは、行方不明者の「癖」……のこされた家族のために私が見つけ出す――。

登山ブームにともない、遭難数が増加傾向にあります。著者は警察や消防による捜索が打ち切られた後に、家族から依頼を受け手遭難者捜索に携わるプロ。看護師として患者に寄り添ってきた経験を活かし、「この登山者だったら、どのルートを進んでしまうか」と探偵のように考え、登山者のご遺体を発見していきます。その現場の様子、またご家族との交流を描きます。

 
<本書の概要>

「せめてお別れだけでもしたい」――いくら探しても見つからないという家族から依頼を受け、著者は山へ向かう。たとえ身近な低山でも、運命の分かれ道は登山道の随所に潜んでいるのだ。家族のケアをしながら丹念に話を聞き、プロファイリングで消えた足跡を辿る6つのエピソード。予防と早期発見に役立つコラム付き。

 

本書の構成

第1章 偶然の発見
登山経験がほとんどなかった著者が、小学生が遠足で登るような山で2人の遭難者の遺体を見つける。地元の里山で、そんなことが……。衝撃を受けた彼女は、「山岳遭難捜索」の世界へ足を踏み入れることになる。

コラム 山の看護師

第2章 母が帰らない
60代の女性がひとり埼玉県の奥秩父へ登山に出かけ、行方不明になった。登山前 の行動をよく調べてみると、彼女は友人から手渡された「写真」を参考に山に入 っており――。

コラム 捜索費用・保険

第3章 一枚の看板
埼玉県秩父槍ヶ岳で、男性が忽然と姿を消した。利用した登山道をプロファイリ ングから推定し、捜索を進める中で、ある気になる証言が。「その日、山頂を示す 看板の矢印が反対側を示しているように見えた」。

コラム 帰りを待つ家族の気持ちの変化

第4章 捜索の空白地帯
神奈川県丹沢の沢登り制覇を目前に、ある男性の行方が分からなくなった。テント近くにビールも冷やしたまま、一体どこへ? 広大な範囲を捜索した末、遺体 が見つかったのは「誰も見ることのない」場所だった。

第5章 目的の人だけが見つからない
日光で縦走に挑んだ男性が遭難した。全く足取りが掴めないまま時間だけが過ぎ ていく。捜索を広げていく中で同じ山で遭難していた2名を発見。そして、遭難者につながるヒントが出てくる。

コラム 遺留品

第6章 長いお別れ
新潟・群馬県境の巻機山。雪がまだ残る季節に、男性がひとり山に入って消息を 断った。すぐに見つかると思われたが、2年経っても行方知れず。裁判所から、 危難失踪認定を受けた2日後に、遺留品が山で発見された。

 

著者プロフィール

著者の中村富士美(なかむら・ふじみ)さんは、1978年生まれ、東京出身。山岳行方不明者遭難捜索活動および行方不明者の家族サポートを行う民間の山岳遭難捜索チームLiSS代表。DiMM国際山岳看護師、(一社) WMAJ(ウィルダネスメディカルアソシエイツジャパン)野外災害救急法医療アドバイザー、青梅市立総合病院外来看護師。遭

難事故の不明者について、丁寧な取材をしながら、家族に寄り添った捜索活動を行っている。また遭難捜索や野外救急法についての講演などの情報発信もしている。

 

「おかえり」と言える、その日まで
中村 富士美 (著)

発見の鍵を握るのは、行方不明者の「癖」。プロファイリングによる捜索実話。

 


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