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伊集院光さんが名著と対話するシリーズ第2弾『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』が刊行

昨年刊行された、伊集院光さんが自身の心に刺さった3冊の本を徹底的に語りつくす対談集『名著の話 僕とカフカのひきこもり』に続く、「名著の話」シリーズ第2弾『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』がKADOKAWAより刊行されました。

 

読んで語って見えてきた、深夜ラジオと芭蕉の名句、その意外な共通点とは?

伊集院光さんは、2012年よりNHK Eテレ「100分de名著」に出演し、100冊以上の名著を紹介してきました。番組で取り上げた古今東西よりすぐりの名著の中から、自身の心に刺さった3冊を改めて厳選、本をよく知る三人と再会して、時間無制限、語り下ろしの徹底トークを繰り広げるのが書籍版『名著の話』シリーズです。

 
最新刊『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』では、松尾芭蕉『おくのほそ道』、デフォー『ペストの記憶』、コッローディ『ピノッキオの冒険』をとりあげ、3冊をすみずみまで読んだ伊集院光さんが、それぞれの名著のエキスパートと語り尽くします。

 

本書「まえがき」より

古池や蛙飛こむ水のおと。
 ……だから何? というのが、松尾芭蕉と出会ったころの僕の素直な感想。

 
古い池に蛙が飛びこんだんでしょ。
音がしたんでしょ、おそらく。
「……ぽちゃん」
って音がしたのかな? で? それが何か?
正直なところ、この句をきいて「さすが俳句の天才松尾芭蕉だ!」などという人のことを「影響されやすい人だなあ」と思っていました。「松尾芭蕉の作品だって言われたから、無理やりそう言ってるんでしょ?」くらいの感じ。

 
そして今、この句に対する僕の感想は……「天才・松尾芭蕉の宇宙の中にいるようだ!」です。
どうぞ存分に、「思い込みの激しい人だなあ」「他人が芭蕉を祭り上げるものだから、わからないと格好が悪いとばかりに知ったかかましてるなあ」と思ってください。これは自分が受けなければいけない罰ですから。吐いたツバですから。
けれどその後で本書を、まずは最初の、長谷川櫂さんとの松尾芭蕉『おくのほそ道』についての対談をお読みいただきたい。俳人で、松尾芭蕉についての著作もある長谷川先生が説明してくださった「古池や 」の「や」についての考え方が、僕の松尾芭蕉に対する気持ちをガラッと変えてしまいました。一気に「さすが芭蕉だ!」と言っていた人に対する気持ちまで。
今や「夏草や兵どもが夢の跡」だけでご飯数杯行けるくらい世界に入っちゃいますから。

 
名著と出会うと、自分の中で何かが変わります。
すでに出会っていた名著も、大きな知と融合することでさらにまた変わります。(後略)

 

本書の目次

■長谷川櫂(俳人)と語る、松尾芭蕉『おくのほそ道』
 ──蛙飛びこむ宇宙空間

・「古池に」でなく「古池や」なのはなぜ?
・芭蕉はどこが革命的だったのか
・心の地図と歌枕の廃墟
・『おくのほそ道』のフィクション
・なぜ松島に芭蕉の句がないのか
・虫と夏草にシンクロする俳句
・会ったことのない死者の前で
・ボーッとするから俳句が生まれる

 
■武田将明(英文学者)と語る、ダニエル・デフォー『ペストの記憶』
 ──伝染病のすべてをあらゆる書き方で

・デフォーの細かさ
・「コロナの記憶」を残すとしたら?
・ペスト禍の笑い話
・「見えない」という根本的な不安
・帽子を盗んでいく女たち
・「死者を捨てる穴」のやりきれなさ
・書き手であるH ・F の死
・原発事故の記憶
・デフォー嫌いの夏目漱石
・『ロビンソン・クルーソー』との共通点
・どこからでも読める本

 
■和田忠彦(イタリア文学者)と語る、コッローディ『ピノッキオの冒険』
 ──ピノッキオは死にました。でも……

・落語のような会話のリズム
・わかりやすい善人や悪人は描かない
・キツネとネコがあらわすもの
・サメの喩え
・「母を訪ねて三千里」とピノッキオ
・ディズニーの『ピノキオ』から消えたもの
・糸のきれたあやつり人形

 

著者プロフィール

伊集院光(いじゅういん・ひかる)さんは、1967年生まれ。1984年に六代目三遊亭円楽さんに弟子入りし、落語家・三遊亭楽大として活動。1987年ごろから伊集院光としてタレント活動をはじめ、「伊集院光のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)、「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)といったラジオ番組のパーソナリティをつとめる。2012年よりNHK Eテレ「100分de名著」に出演。

『世間とズレちゃうのはしょうがない』(養老孟司さんとの共著、PHP研究所)、『のはなし』(宝島社)などの本も出版している。

 

名著の話 芭蕉も僕も盛っている
伊集院 光 (著)

NHK「100分de名著」で出会った約100冊より、伊集院光が、心に刺さった3冊を厳選。名著をよく知る3人と再会し、時間無制限で新たに徹底トークを繰り広げる、100分de語りきれない名著対談!

■松尾芭蕉『おくのほそ道』──蛙飛びこむ宇宙空間
長谷川櫂(俳人)×伊集院光

■ダニエル・デフォー『ペストの記憶』──伝染病のすべてをあらゆる書き方で
武田将明(英文学者)×伊集院光

■コッローディ『ピノッキオの冒険』──ピノッキオは死にました。でも……
和田忠彦(イタリア文学者)×伊集院光

<既刊>

名著の話 僕とカフカのひきこもり
伊集院 光 (著)

「この孤独わかるよね」 ──本の話をすると、もう孤独じゃなくなってる。

NHK「100分de名著」で出会った約100冊より、伊集院光が、心に刺さった3冊を厳選。名著をよく知る3人と再会し、時間無制限で新たに徹底トークを繰り広げる、100分de語りきれない名著対談!

■川島隆(京都大学准教授)と語る、カフカ『変身』
──“虫体質な僕ら”の観察日記

■石井正己(東京学芸大学教授)と語る、柳田国男『遠野物語』
──おもしろかなしい、くさしょっぱい話たち

■若松英輔(批評家、随筆家)と語る、神谷美恵子『生きがいについて』
──人生の締め切りを感じたとき出会う本

 


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