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直木賞作家・西加奈子さん5年ぶりの長篇小説『夜が明ける』が刊行

西加奈子さん著『夜が明ける』(新潮社)

西加奈子さん著『夜が明ける』(新潮社)

直木賞作家・西加奈子さんの5年ぶりとなる最新長篇小説『夜が明ける』が、新潮社より10月20日に刊行されました。

 

小泉今日子さん、是枝裕和さん、仲野太賀さん、二階堂ふみさんから感涙のメッセージ続々! 西加奈子さん5年ぶりの最新長篇『夜が明ける』

直木賞受賞作『サラバ』から7年、本屋大賞第7位『i』から5年。西加奈子さんが悩み苦しみ抜き、全力で書き尽くした渾身の作品『夜が明ける』が刊行されます。

「当事者ではない自分が書いていいのか、作品にしていいのか」という葛藤を抱えながら、それでも社会の一員として、作家のエゴとして書き抜いた本作は、著名人、書店員をはじめ、多くの人の心を揺さぶる救済と再生の感動作です。

 
「書きながら、辛かった」と西加奈子さん自身が振り返る、最新長編『夜が明ける』の主なテーマは現代日本に存在する若者の貧困、虐待、過重労働です。

直木賞受賞後に友人たちが連れて行ってくれたモノマネパブで見た「誰かに似ている人」という存在、フィンランドのバーで出会った男性など、様々な西さんの実体験がつながって物語は構築され、執筆途中で生活拠点を移したカナダで諸外国人の「日本の若者の貧困」に対する認識を痛感された西さんの想いが反映された、まさに5年かけて変化し続けた作品です。

 
主人公は「俺」です。彼に名前はついていません。

誰でも、それこそ女性でも、「俺」のような状況に陥ることがある、ここには「この小説はあなたの物語なんだよ」という西さんのメッセージが込められています。

 
【あらすじ】
15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家 庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、共有できる ことなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。

大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、 焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、俺たちは少しずつ、心も身体 も、壊していった……。

思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く。本書は著者が初めて、日本の若者の生きていく上でのしんどさに真正面から取り組んだ作品。

イラスト(C)西加奈子

イラスト(C)西加奈子

 
苦しい人が苦しいと声をあげられる、弱さを認めていいと、まるで今と過去の自分が赦されたような気持ちになる本書に、著名人の皆さんから感動の声が寄せられています。

◆小泉今日子さん(俳優)
今、社会の中で、気付かなくちゃ、感じなくちゃいけないことがきっちり書いてある。

◆是枝裕和さん(映画監督)
読んでいる間中、自分も主人公と同じように経験した「痛み」が胸にこみ上げ息が苦しくなった。これが小説であることをしばしば忘れ、その度に本を閉じたが、読み終わったときに感じたものは「希望」に近い何かだった。「幸福」とも「解放」とも違う、何かだった。

◆仲野太賀さん(俳優)
息を殺しながら生きなくてもいいように、誰かの心が壊れないように、この物語が生まれたんだと思う。

◆二階堂ふみさん(女優)
ページを捲る度に、五感が研ぎ澄まされる。
匂い、味、温度、小さな痛み。
この国に、アキはどれほどいるのだろう。
人間は脆く、そして哀しい。
どこまでも、哀しい。
だからこそ”優しさ”の奇跡が生まれるのだと、西先生の綴る文章から感じました。
これは遠い誰かの話では無く、間違いなく”我々の話”であると思います。

 

西加奈子さんからのコメント

日本に確実にある貧困や虐待や過重労働や生きることそれ自体が辛い人たちを自己責任という名のもとで断罪する状況など、あらゆることを書きました。

ある部分では私は当事者であり加害者でもありますが、ある部分では当事者ではありませんし、私が書いていいのか、作品にしていいのかという葛藤がありましたが、この五年間、ずっと考えて書き続けて、途中バンクーバーに生活拠点を移して、この生活の中で、やはり社会の一員として、作家のエゴとしてこの作品を書きたい、書かかないといけないと思って、全力を尽くして書きました。読んでいただけると本当に幸せです。

 

 

著者プロフィール

西加奈子さん(C)山崎智世

西加奈子さん(C)山崎智世

著者の西加奈子(にし・かなこ)さんは、1977(昭和52)年、イランのテヘラン生れ。エジプトのカイロ、大阪で育つ。2004(平成16)年に『あおい』でデビュー。翌年、1 匹の犬と5人の家族の暮らしを描いた『さくら』を発表、ベストセラーに。

2007年『通天閣』で織田作之助賞、2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞、2015年に『サラバ!』で直木賞を受賞。ほか著書に『さくら』『円卓』『漁港の肉子ちゃん』『ふる』『まく子』『i』『おまじない』など多数。

 

夜が明ける
西 加奈子 (著)

直木賞作家が5年間苦しみ抜いて到達した祈り。再生と救済の長篇小説。思春期から33歳になるまでの男同士の友情と成長、そして変わりゆく日々を生きる奇跡。まだ光は見えない。それでも僕たちは、夜明けを求めて歩き出す。どれだけ傷ついても、夜が深くても、必ず明日はやってくる。

 
【関連】
『夜が明ける』西加奈子著 特設サイト | 新潮社

 


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