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【訃報】英文学者・高松雄一さんが死去 訳書に『アレクサンドリア四重奏』『ダブリンの市民』

英文学者で東京大学名誉教授の高松雄一(たかまつ・ゆういち)さんが8月19日、間質性肺炎のため死去しました。88歳。北海道出身。葬儀は近親者で執り行われました。喪主は妻の禎子さん。

 
高松雄一さんは、1929年生まれ。東京大学文学部卒業、東京大学大学院博士課程中退。東京大学教授、駒澤大学教授などを歴任。1985年から1988年まで日本英文学会会長。著書『イギリス近代詩法』で第54回読売文学賞研究・翻訳賞を受賞。

訳書に、ロレンス・ダレルの4部作『アレクサンドリア四重奏』、ジェイムズ・ジョイスの『ダブリンの市民』、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『声たちの島』、丸谷才一さんとの共訳『ユリシーズ』などがあります。

 

イギリス近代詩法
モダニズム文学の丹念な解読、渾身の詩学講義
20世紀は、英文学に豊穣な実りと新しい批評の地平を生みだした。著者は、ワイルドから始めて、イェイツ、エリオット、ジョイスらを中心に、小説と詩の技法と構造、批評の方法を解読し、20世紀文学の総括的詩学論を展開する。第54回読売文学賞(研究・翻訳賞)受賞。

 
アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ
三島由紀夫をして「20世紀最高傑作の一つであり、優にプルースト、トーマス・マンに匹敵する」と言わしめた歴史的大作が、名訳をさらに磨き上げた全面改訳で遂に刊行。

このエーゲ海の孤島に、ぼくはぼくたちの心を引き裂いたあの都会から逃れてきた。ぼくをメリッサに会わせ、そしてジュスティーヌに会わせたあの都会―ぼくがメリッサを見出したとき、彼女はアレクサンドリアの淋しい海岸に、性の翼を破られて、溺れかかった鳥のように打ち上げられていた。彼女の明るいやさしい眼差しはぼくを幸せにした。それなのに、やがて出会ったジュスティーヌの仄暗くかげる凝視に、ぼくは抗うことができなかった。メリッサとジュスティーヌの夫を不幸にすることがわかっていても。ジュスティーヌがある日こう言ったのを思い出す。「わたしたちはお互いを斧の代りに使って、本当に愛している人たちを切り倒してしまうんだわ」しかし、ぼくはいま、あの埃にまみれた夏の午後から遠く離れたいまとなって、やっと理解した。裁きを受けるべきはぼくたちではない、あの都会なのだと―。

 
ユリシーズ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
20世紀最高の文学「ユリシーズ」待望の文庫化。新しい文体を創始し、表現の可能性の極限に迫ったといわれる傑作。最高の訳者たちによる達意の完訳は、世界にも類のない作品。

ダブリン、1904年6月16日。私立学校の臨時教師スティーヴンは、22歳、作家を志している。浜辺を散策した後、新聞社へ。同じ頃、新聞の広告を取る外交員ブルームの一日も始まる。38歳、ユダヤ人。妻モリーの朝食を準備した後、知人の葬儀に参列し、新聞社へ。二人はまだ出会わない。スティーヴンは酒場へ繰り出し、ブルームは広告の資料を調べるため国立図書館へ向かう。時刻は午後1時。

 


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