本のページ

SINCE 1991

構想10年!岩井圭也さん『水よ踊れ』が刊行 「彼らはなぜ抗い、何を目指すのか」激動の香港を描く、迫真の青春巨編

岩井圭也さん著『水よ踊れ』

岩井圭也さん著『水よ踊れ』

2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー、2020年に『文身』(祥伝社)が「本の雑誌」2020年上半期エンターテインメントベスト10の第8位に選ばれるなど、注目の作家・岩井圭也さんによる、迫真の青春巨編『水よ踊れ』が6月17日、新潮社より刊行されました。

 

中国返還に揺れる激動の90年代~国家安全法が施行された現在まで闘い続ける香港の街――彼らはなぜ抗い、何を目指すのか

岩井圭也さんがデビュー前の「投稿時代」から長年構想を練り続けたという今作は、中国返還に揺れる90年代後半の香港を舞台に、主人公が謎の死を遂げた恋人と事件の真相を探る青春小説です。

骨太なストーリーとともに熱量たっぷりに描かれるのは、混沌とした社会情勢、それぞれの信念を貫こうとする香港市民のすがた……。そして終盤、物語は〈香港国家安全維持法〉が制定された現代へと繋がります。

 
<冲方丁さん激賞!「推薦の言葉」>

◆冲方丁さん(作家)

「寄る辺なく脆弱そのものといった若者が、やがて途方もなく力強いメッセージを放つに至るさまは、読んでいて鳥肌ものだ。私は本書を読んで、日本人であるとはどういうことかを語ることに無為を抱かせられた世代の一人として衝撃を受けた。主人公の決断に、いよいよ日本人を覆うガラパゴスの膜が破れるときが来たと快哉を叫びたくなる。まさに現代の物語であった。

作中で採用された、ある闘争のためのフレーズは、まさに今後我々が古い世代の因習から解放され、新たな世界と対峙する上で不可欠な、痛快きわまりないメッセージだ。これからしばらく、私は折にふれて本書を読み返すだろう。そして歴史の推進力が我々をどこに運ぼうとも、抱くべき志(ウィル)をおのれのうちで確かめ続けることになるに違いない。」――

 
◆北上次郎さん(文芸評論家)(『波』七月号より)

「未来に向けて歩きだす強い意思が、ここにある。」

 
◆内田剛さん(ブックジャーナリスト)

「心を震わすアイデンティティの物語であり、込められたメッセージは社会に向けた拳でもある。今年のというより、この時代に刻まれるべき一冊だ!」

 
■いま小説で、香港を書かずにはいられなかった理由

幼少期から香港に関心を抱き、動向に注目してきた岩井圭也さんは、本書へ挑戦した理由をこう語ります。

「まさにいま抗っている香港市民の「何かを変えようとする力」を描くことで、少しでも「日本人」の読者の意識を変える小説を書きたいと思いました。日本では、政治的に話題に対してどこか冷笑的な視点でみてしまう節があると思います。見てみぬふりとも言えるし、政治というものに対する諦念も抱いている。「どうせ何をしても変わらないのだ」と。確かにそうかもしれません。

ただ何も声を上げなければ、悪い方向に変わってしまうこと、変わらないと思っていたものが変わってしまう恐怖があること、香港の状況を見ているとその危機感を抱かざるをえません。香港を描いた今作が、日本の政治を自分ごととして捉えるきっかけとなってほしいと考えています。」

 
■フィクションだから提示できる可能性、フィクションにできること

物語の終盤、中国が香港の統制を強めた現代で、主人公は未来を切り開くための行動をとります。

「小説の最後には、現実的に中共の支配が着実に進んでいく香港で、対抗する手段を私なりの答えとして書きました。自分の行動次第で困難な状況も打破できる可能性がある。それはフィクションでしか提示できないものですし、いまだからこそ描ける希望だと考えています。」

 

『水よ踊れ』あらすじ

七百万人都市、香港。一人の少女が、スラムの闇に飲み込まれた。

「ぼくは、彼女の人生を、まだ見届けていない」
日本の大学に通う瀬戸和志は、亡き恋人の幻影に導かれ、建築学院の交換留学生として、再び香港の地を踏む。

幽霊屋敷に間借りする活動家、ビルの屋上で暮らすボートピープル、黒社会の住人、〈共産党員〉と噂される大物建築家。さまざまな出会いを通じて、次第に浮かび上がる都市の実相。そして、彼女がひた隠しにしていた過去。

「誰も、この街の引力には勝てない」〈回帰〉の時が刻一刻と近づくなか、いくつもの謎と、矛盾と、混沌をはらみながら、和志は、民主化運動の狂騒へ引きずり込まれてゆく。若者たちの抵抗と魂の煌めきを描く、革命的青春巨編。

 

著者プロフィール

著者の岩井圭也(いわい・けいや)さんは、1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。

2019年『夏の陰』(KADOKAWA)を刊行、2020年に『プリズンドクター』(幻冬舎文庫)、そして同年『文身』(祥伝社)は「本の雑誌」2020年上半期エンターテインメントベスト10の第8位に選ばれるなど、若手最注目作家のひとりに挙げられる。

 

水よ踊れ
岩井 圭也 (著)

97年、回帰に揺れる香港。
ある「日本人」青年の熱き祈りが、混沌の雑踏を駆け抜ける。
若者たちの抵抗と魂の煌めきを描く、革命的青春巨編。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です