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「このミス」大賞受賞『怪物の木こり』刊行 作者・倉井眉介さんは初就職した年に初受賞!フリーターから小説家へ

倉井眉介さん著『怪物の木こり』(宝島社)

倉井眉介さん著『怪物の木こり』(宝島社)

宝島社は、同社が主催する新人ミステリー作家の登竜門『このミステリーがすごい!』大賞の第17回の大賞受賞作品、倉井眉介さん著『怪物の木こり』を1月12日に刊行しました。

また、著者の受賞インタビューも公開しています。

 

フリーターから小説家に!『このミス』大賞作家・倉井眉介さん受賞インタビュー

(聞き手:ライター・大西展子さん)

倉井眉介さん

倉井眉介さん

<プロフィール>
1984年生まれ。帝京大学文学部心理学科卒業。学生時代より社会心理学、発達心理学などに興味を持つ。卒業後、フリーターをしながら執筆を続けていたが、2018年に就職。ガスボンベの管理会社で作業員として働いていたところ『このミス』大賞を受賞。趣味は自転車。左利き。

 
■2018年は初就職!初受賞!フリーターから小説家へ

「自分は将来、会社の社長になることはないだろうけど、小説家としてデビューすることはできる」という確信から、大学を卒業後、フリーターをしながらこつこつと執筆を続けました。実家暮らしをいいことに、3年ぐらいニートだったことも。

父親から「うちから小説で賞をとるやつが出てくるとは思わなかった」と言われるほど、本とは無縁の家庭環境で、小説を書いていることをカミングアウトしたのは30歳になってから。親に定期的に怒られながらも公募に作品を送ったりしながら10年以上足踏みをしていました。

 
■思い切って就職したことが受賞のカギに!

受賞を知った瞬間、うれしい気持ちはあふれていましたが、叫んだり、万歳することには違和感がありできず…それで仕方なく腕立て伏せをしました。意外と気持ちが発散されてしっくり来たのを覚えています。
もちろん、一番に父に報告。北島康介選手風に「(ずっと心配していたけど、)もうなんも言えねぇ!」と言われ(笑)、すごく喜んでくれました。

実は第15回の『このミス』大賞に応募したものの、締切りに間に合わず第16回にまわされ落選。同じ作品をまた書き直し第17回に応募。大賞受賞となりました。

一度就職して、働きながら書いたほうが長く続けられるのではないか、チャンスが広がるのではないかと思い、34歳で初就職。思い切って就職したことで生活にリズムができ、改めて作品に向き合えたのも良かったのかもしれません。

 
■大学では心理学を専攻!“脳チップ”のアイディアの源は!?

もともと「人の心」に興味があり、大学時代に心理学を専攻しました。ヒーロー的な主人公よりも、社会のマイノリティに属す人物の葛藤を描いているようなストーリーに興味があります。

次回作も「人の心は操れるか」をテーマに、ちょっと特殊な設定を与え、社会的なリアリティに少しおとぎ話のような要素を混ぜたミステリーを構想しています。

今作を執筆するきっかけになったのは、海外ドラマ『デクスター』です。殺人鬼でありながら「人」であろうともがく主人公を見て、「人」であろうとするのではなく実際に「人」になってしまったサイコパスの話でも面白いのではないかと思ったことがきっかけです。

 

『このミス』大賞受賞作品『怪物の木こり』について

本作は、日常的に殺人を犯しながらも普通の生活を続けるサイコパス弁護士・二宮が主人公のミステリーです。

二宮はある日、怪物のマスクをかぶった男に斧で襲撃され頭部を負傷。搬送先の病院で脳に感情をコントロールする“脳チップ”(マイクロチップ)が埋められていることを知らされます。
自分を襲った人物に復讐を誓いながらも、自分の行動に変化が起きていることに気づき……。

死体から脳が盗まれる連続猟奇殺人事件や26年前の児童連続誘拐殺人事件、合間に導入される童話など、複数のストーリーが交差するプロットは、テンポよく展開する海外ドラマのようで最後まで一気に読ませます。

選考委員からは、「意表を突く出だしと驚異の展開、独特の世界観で読ませる怪作」と激賞されました。

 
脳科学の研究から、サイコパスは、他者に対する共感性や「痛み」を認識する脳内の部分の働きが一般の人と大きく違うことが明らかになってきています。著者の倉井さんは、その働きの違いをもとに物語を構想することで、本来は感情を持たないサイコパスの“心の揺れ”を描いています。

約100人に1人ほどの割合で存在するといわれている「サイコパス」。最後まで先が読めないストーリーと独特な世界観は、ミステリー好きにはもちろん、海外ドラマや映画好きにもお薦めの一冊です。

 
【あらすじ】

勝つためには手段を選ばない弁護士、二宮彰。彼はその実、邪魔な人間を何人も殺してきたサイコパスだった。そんな彼がある日、地下駐車場で怪物のマスクをかぶった男に襲撃され、斧で頭を割られかける。頭部に酷い打撲傷を負ったものの、九死に一生を得た二宮は、犯人を捜し出し復讐することを誓う。

一方その頃、連続猟奇殺人事件が世間を賑わしていた。被害者は脳味噌を持ち去られていたため、犯人は「脳泥棒」と呼ばれるようになる。警視庁捜査一課の戸城嵐子は、品川署の乾とコンビを組み、捜査を開始する。どうやら事件は、26年前の「静岡児童連続誘拐殺人事件」に端を発しているようで……。

 

ミステリー作家のための新人賞『このミステリーがすごい!』大賞とは

『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー好きのためのブックガイド『このミステリーがすごい!』を発行する宝島社が、新たな時代のミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘と育成を目的に、2002年に創設した新人賞です。

累計1000万部突破の「チーム・バチスタの栄光」シリーズの海堂尊さん、第153回直木賞を受賞した東山彰良さん、第69回日本推理作家協会賞を受賞した柚月裕子さん、第71回日本推理作家協会賞を受賞した降田天さんなどを輩出。
『さよならドビュッシー』(中山七里さん)、『がん消滅の罠 完全寛解の謎』(岩木一麻さん)など、映像化作品も送り出しています。

また、将来性を感じる応募作品を「隠し玉」として書籍化。『スマホを落としただけなのに』(志駕晃さん)は2018年、北川景子さん主演で映画公開され話題に。書籍も54万部を突破しています。

 

【2018年・第17回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 怪物の木こり
第17回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作は、
サイコパス弁護士 vs. 頭を割って脳を盗む「脳泥棒」、最凶の殺し合い!
すべては26年前、15人以上もの被害者を出した、児童連続誘拐殺人事件に端を発していた……。
選考委員各氏も絶賛した、サイコ・スリラーです。

「手に汗握る展開、衝撃的な要素、次々に起きる新たな事件と、読み始めたら止まらない」北原尚彦氏(作家)
「ぶっ飛んだ設定のおもしろさに加えて、テンポのよさと意外性のあるプロットが光る」大森望氏(評論家・翻訳家)
「サイコパスの弁護士が謎の覆面男に襲われるという意表をつく出だしからはまった。謎を追い始める展開もスリリング」香山二三郎氏(コラムニスト)
「飽きさせない話運び、毒の強いキャラクターの描き方などにおいて、他より抜きん出ていた。勢いがあり強い個性が感じられた」吉野仁氏(書評家)

 


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