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【訃報】詩人・大岡信さんが死去 コラム「折々のうた」や評論も

詩人で評論家の大岡信さんが4月5日、肺炎のため静岡県三島市の病院で死去しました。86歳。葬儀は近親者で行い、後日、お別れの会を開く予定です。

 
大岡信さんは、歌人・大岡博さんの長男として生まれ、東京大学文学部卒業後、読売新聞社に入社。新聞記者の仕事のかたわら、谷川俊太郎さんらの詩誌「櫂(かい)」に参加し、1956年に処女詩集『記憶と現在』を発表。1963年に読売新聞社を退社。

 
文学者から市井の人までの詩歌を取り上げた朝日新聞の連載コラム「折々のうた」では、菊池寛賞を受賞。「折々のうた」は1979年から2007年まで、朝日新聞の1面で全6762回にわたって連載されました。

1969年には、評論『蕩児の家系』で藤村記念歴程賞を受賞。

 
1970年代からは複数の詩人が連続して言葉をつむぐ「連詩」を提唱し、国内外の詩人と共作するなど国際的にも活躍しています。

1997年に文化功労者、2003年には文化勲章を受章。海外への日本文学の紹介にも努め、2004年にはフランスのレジオン・ドヌール勲章も受章。

明治大や東京芸術大教授を歴任し、日本現代詩人会会長や日本ペンクラブ会長などを務めました。

 
詩集に、『透視図法-夏のための』、『春 少女に』や『地上楽園の午後』(詩歌文学館賞)など。評論では、『紀貫之』(読売文学賞)、『詩人・菅原道真 うつしの美学』(芸術選奨文部大臣賞受賞)などがあります。

 
長男は芥川賞作家の大岡玲(あきら)さん、長女は画家で詩人の大岡亜紀さん。

 
4月6日付けの読売新聞の1面「編集手帳」も大岡さんの話題でした。その中で、”雨に愛された人”大岡さんのことを、俳人の加藤楸邨(かとう・しゅうそん)さんが「行くところかならず雨ふるとて雨男と呼ばるるは大岡信大人なり」(岩波文庫『加藤楸邨句集』より)と詠んだことを紹介しています。

人名が出てくる・・・それも同時代の詩人の名前が。自由だなあ、と思いました。でも、大岡さんについても、歌会始で詠んだ「いとけなき日のマドンナの幸ちゃん(さっちゃん)も孫三(み)たりとぞeメイル来る」が載っていました。自由でおおらかな人柄が伝わってきます。

 

折々のうた (岩波新書 黄版 113)
過ぎてゆく四季の折々に自然の輝きをとらえ,愛する人を想いながら,人びとはその心を凝縮された表現にこめてうたい続けてきた.「日本詩歌の常識づくり」を目ざす著者は,俳句・短歌から漢詩・現代詩に至るまで,日本人の心のふるさとともいうべき言葉の宝庫から秀作を選び,その豊かな光沢と香りを鑑賞する.朝日新聞連載一年分に加筆.

 


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