“バルト3国”ラトヴィアにはなぜ日本の15倍もの数の図書館があるのか? 吉田右子さん『ラトヴィアの図書館』が刊行
筑波大学図書館情報メディア系教授・吉田右子さん著『ラトヴィアの図書館 ―光を放つ文化拠点―』が秀和システムより刊行されました。
ラトヴィアの公共図書館数を人口当たりで換算すると、日本の15倍以上!
バルト3国の一つ、ラトヴィアにある図書館が本書の主人公です。この国で図書館は「光の島」「光の点」などと呼ばれてきました。
ラトヴィア人にとって、光は「知識、文化、自己成長」を意味しており、図書館を想起させる言葉となっています。人口が200万人に満たないこの国にある公共図書館数を人口当たりで換算してみると、日本の15倍以上となります。
驚異的なこの数字は、「公共図書館大国」と言われるスカンジナビア諸国をも圧倒しています。なぜ、こんなにもたくさんの公共図書館が小さい国の隅々にまであるのでしょうか?
ラトヴィアが旧ソ連から独立したのは1991年。それから30年余り、占領期に弱体化させられた自国語と失われた文化遺産を取り戻すために、図書館界は館種を超えて連帯し、図書館の再構築にひたむきに邁進してきました。その象徴が2014年に完成した「新国立図書館」、通称「光の城」です。
開館に先立ち、同年1月18日に最初の資料の運び入れが始まりました。マイナス15度という極寒の中、15,000人もの市民が2キロもの長さにわたる列をつくり、旧館から新館まで手渡しで資料を移動させました。そう、世界中の関係者が新国立図書館を知ることになった、「光の道――本の愛好者の鎖」です。
本書は、ラトヴィアの図書館の歩んできた道のりとじっくり向き合い、小さな国の図書館のパワーを解明するためのものです。
ラトヴィアの図書館は、読書をこよなく愛する人びとによって支えられています。本を循環させる社会装置の一つとして図書館は、そうした人びとの読書欲を満たすために、あらゆる手段で読書へのニーズに応えようとしてきました。
熱心な読者と図書館の相互対話的な営みが、少数話者言語であるラトヴィア語の記録とラトヴィア文化の記憶を継承する回路の中軸となっています。
本書の構成
第1章 図書をめぐるストーリー――言語・出版・図書館
第2章 ラトヴィアの公共図書館――二度の占領を乗り越える
第3章 ラトヴィア公共図書館のサービス
第4章 光の城・ラトヴィア新国立図書館
第5章 光の島・リーガ中央図書館
第6章 ラトヴィアと日本の図書館について語り合う
著者プロフィール
吉田右子(よしだ・ゆうこ)さんは、筑波大学図書館情報メディア系教授。博士(教育学)専門は公共図書館論。
主な著作として、『メディアとしての図書館』(日本図書館協会、2004年)、『デンマークのにぎやかな公共図書館』(新評論、2010年)、『読書を支えるスウェーデンの公共図書館』(新評論、2012年)、『文化を育むノルウェーの図書館』(新評論、2013年)、『オランダ公共図書館の挑戦』(新評論、2018年)、『フィンランド公共図書館』(新評論、2019年)などがある。
ラトヴィアの図書館 吉田右子 (著) |
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