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〈30分あたり300円〉国内外の性産業に売られるネパールの少女たちのドキュメント『わたしは13歳 今日、売られる』が刊行

国内外の性産業に売られるネパールの少女たち――その現実、救出・保護を描いたドキュメント、長谷川まり子さん著『わたしは13歳 今日、売られる――ネパール・性産業の闇から助けを求める少女たち』が合同出版より刊行されました。

 

少女たちにつけられた値段は〔30分あたり300円〕

――祖父母と妹と貧しいくらしをしていた少女スニタは14歳のときに、仕事を紹介してくれるという男にだまされ、売春宿に送られました。

――お母さんにお使いを頼まれておじさんに会いに行こうとした15歳のアンジュは、バスターミナルで記憶を失い、インドの売春宿に売られてしまいました。そしてブローカーの女から「おじさんがお前を売ったんだ!」と聞かされたのです。

――10歳だったカビータは、継母からインドでメイドとして働くよう命じられ、迎えにきた女性に連れて行かれたのが売春宿でした。1年後、保護されたカビータは勉強とスポーツで自信をつけ、その後看護師して新たな人生を歩みはじめています。

 
アジア最貧国に挙げられるネパールでは、少女たちが性産業に売られるケースが絶えません。
家族や親族、あるいは恋人、道行く行商人などによりインドや国内の売春宿に売られ、狭い部屋に閉じ込められています。

 
人身売買――

その被害者の多くは14~18歳の未成年で、大半は16歳以下。10歳未満の幼い女の子が売買されることもあります。コロナ禍を経て、今、国内への人身売買も増えています。

 
圧倒的な暴力のシステムと、それに抵抗し、被害女性たちの救出・保護・自立支援をおこなう人びと、救出された少女たちの再起の姿に迫ります。

15歳のときに、親戚からブローカーに売られた少女アンジュ。貧しい生活のなか、学校にも通えていなかったため、だまされたことに気づいたのは売春宿に着いてからだった(写真当時17歳)。

14歳のときに、仕事の斡旋をしてくれるという男にだまされた売春宿に売られた少女スニタ。救出、保護された先の施設で製法技術を学び、仕立て屋として独立した(写真当時18歳)。

10歳のときに、継母に売春宿に送られたカビータ。救出後も家族のもとには戻らずインドに残り、人一倍の努力で学び看護師となり、家庭を築き暮らしている。

ネパールで起きている売春宿への人身売買には、ブローカー側だけでなく、政治家や警察官も関わっている。

 

本書の目次

■この本を読まれるみなさまへ

第1章 人身売買された少女たちの身に起こったこと
人身売買問題が認知されるのはあまりにも遅かった / 市民の力で事態が動いた / 年間7000人……国外に売られる少女たち
 [ケース1]アンジュ(15歳) 親戚のおじさんに売られた
    おつかいへ向かう途中で / 目が覚めて / インドの売春宿へ
 [ケース2]ジーナ(7歳) お義母さんとおじさんに売られた
    幾重にも覆われた暴力のケージの中で / 救出された日
 [ケース3]スニタ(14歳)仕事を紹介するとそそのかされた
    田舎の貧しい家庭の女の子 / 初めて見る景色 / 国境で……
 [ケース4]カビータ(10歳)お義母さんに売られた
    帰国しないという選択 / 夢にむかって / 自立の道で
 [ケース5]カルパナ(16歳)ボーイフレンドに売り飛ばされた
    出会いはSNS / 1年後に救出されて
 [ケース6]ラクシュミ(17歳)一目惚れした相手に売られた
    「お金持ちそうで、かっこいい人だなぁと思いました」 / 駆け落ちする理由 / 国境を越えたら絶望が待っていた

第2章 私と人身売買問題の出会い
小さな新聞記事から / 少女たちを保護する女性を探して / 紅茶1杯の値段で売られる少女たち /差別と偏見 / 突然、娘が姿を消す村 / 〈ラリグラス・ジャパン〉の立ち上げ / 現地調査とスタディーツアー / 〈マイティ・ネパール〉が行う人身売買被害者の保護活動 / プリベンション・キャンプの活動 / ヘタウダが供給地になったわけ / 家に帰れないさまざまな事情 / ホスピスで暮らすHIV感染者

第3章 ネパールという国・人身売買の歴史
ヒマラヤの山々に抱かれし国 / 王家に献上された少女たち / インドに女の子が売られる理由 / SNSと犯罪の親和性 / 無防備なネパールの少女たち

第4章 売春宿での過酷な生活
巨額の利益を生むインドの性産業 / 売春宿での生活 / 望まない妊娠 / 警察官、政治家が参加するオークション / 売春宿の女経営者によるマインドコンロール / 絶望感による呪縛 / 新しい形態の性風俗店

第5章 〈レスキュー・ファンデーション〉の救済活動
内偵スタッフの隠密活動 / 客を装ってカウンセリング / デリーでの救出作戦 /「助けてほしい」に応えたい / 再トライ / 救出作戦に立ちはだかる警察 /「ナイカ」と呼ばれる謎の女性の役割 / 自らの意思で売春宿に身を置く女性たち / 伝説の売春宿のオーナー / 哀しい連鎖 / 〈レスキュー・ファンデーション〉の救出後の支援プログラム

第6章 女の子たちを支援するプロジェクト
まずはトランジットホームへ / もう人身売買に巻き込まれないために◎仕立て屋開業プロジェクト / 修了生が村に縫製学校を作った / プロジェクトの影響は社会のすみにも / ハイリスクの女の子たちが学ぶテレサ・アカデミー

第7章 コロナ禍という試練
ネパール経済の悪化 / 緊急支援「コミュティ・キッチン・プロジェクト」 / 性犯罪の増加 / 災害後に増加する人身売買 / 国内に売られるケースの増加 / 自助グループが存在した / 活動をとめない〈マイティ・ネパール〉 / アウエアネス・キャンペーン / 国際デーでのさまざまな取り組み

第8章 私たちにできること
①知ることからはじめてみよう / ②周りの人に知らせよう / ③寄付してみよう / ④ボランティアをしてみよう / ⑤専門知識や技術を身につけよう / ⑥自分事として考えてみよう

■あとがきにかえて

■参考になる本・映画
■参考にした文献

 

著者プロフィール

長谷川まり子(はせがわ・まりこ)さんは、認定NPO法人ラリグラス・ジャパン代表。

ノンフィクションライターとして世界の社会問題を取材する過程で、インド・ネパールの越境人身売買問題を知りライフワークに。新聞、雑誌、書籍、テレビドキュメンタリーを通じてリポートするとともに、1997年に「ラリグラス・ジャパン」を立ち上げ、その代表として活動を続ける。

『少女売買~インドに売られたネパールの少女たち』(2007年、光文社)で第7回新潮ドキュメント賞を受賞。

 

わたしは13歳 今日、売られる。: ネパール・性産業の闇から助けを求める少女たち
長谷川まり子 (著)

被害女性たちの救出・保護・自立支援をおこなうラリグラス・ジャパンや現地のNGOの活動を通し、その実態、背景、人身売買や性犯罪をなくすための活動や、各国または国際社会のとりくみを知り、私たちにできることを考えます。

 


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