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ありがとうよりごめんなさいを多く使った――奈良少年刑務所の受刑者たちによる奇跡の詩集『名前で呼ばれたこともなかったから』が刊行

累計76,000部と、詩集として異例の売り上げを果たした、奈良少年刑務所の受刑者たちによる詩集『空が青いから白をえらんだのです』に続く第2弾、寮美千子さん編『名前で呼ばれたこともなかったから』が新潮文庫より刊行されました。

 

奈良少年刑務所と「社会性涵養プログラム」

少年院とは異なり、強盗・殺人・レイプ・薬物違反などの重い罪を犯した17歳から26歳未満までの男性が服役している奈良少年刑務所。この刑務所では特にコミュニケーションに難がある少年ら10人を対象に、半年かけて行われる授業、通称「社会性涵養プログラム」が2007年から2016年まで開講されていました。

 
このプログラムの目的は、受刑者たちの心の扉を開き、自己表現を出来るようになってもらうこと。そうすることで他者とのコミュニケーションが取りやすくなり、結果的に再犯を防ぐことを大きな目的としています。

 
<「物語の教室」>

いくつかの科目に分かれたプログラムの一つに、本作の編者である寮美千子さんとその夫、松永洋介さんが講師を務める「物語の教室」がありました。

「物語の教室」は絵本と詩を使った月に一コマ(一時間半)のプログラムで、少年たちと教官2人が参加します。前半二回は絵本を使った朗読劇、後半四回は「詩の教室」を行うのですが、この教室を通して少年たちは大きく変わっていきます。彼らはモンスターなどではなく、傷ついた心を抱え、様々な鎧をまとった子どもたちでした。そして鎧が外れた少年たちから出てくる、まるで宝石のような言葉たち。

奈良少年刑務所の廃庁まで9年間講師を続けた作家が出会った少年たちの多くの感情。それを編んだ奇跡のような98編を収録しています。刑務所の教育専門官に聞く「子どもを追い詰めない育て方」を付録。

 
【少年たちが紡いだ詩】

◆「時流」(本書p. 44-45)

◆「言葉」(本書p. 56-57)

◆「地図」(本書p. 20-21)

 

著者プロフィール

寮美千子(りょう・みちこ)さんは、1995(昭和30)年生まれ、東京都出身。千葉に育つ。1986年、毎日童話新人賞を受賞し、作家活動に入る。

2005(平成17)年『楽園の鳥』で泉鏡花文学賞を受賞。2006年、奈良に移主し、2007年より2016年まで、奈良少年刑務所で「社会涵養プログラム」の講師を担当。児童文学からノンフィクションまで幅広い著作がある。

著書に絵本『エルトゥールル号の遭難』(絵:磯良一さん)ほか、『空が青いから白をえらんだのです』(編者)、『あふれでたのはやさしさだった』、『なっちゃんの花園』など。

 

名前で呼ばれたこともなかったから:―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)
寮 美千子 (編集)

各メディアで話題を呼んだ少年刑務所の受刑者による詩集第二弾。
彼らの心の扉が詩を通して開かれ、宝石のような言葉が溢れ出す。

彼らはみな、加害者である前に被害者であった――。貧困、育児放棄や虐待、発達障害によるいじめ、厳しすぎるしつけ。過酷な子ども時代を過ごし、犯罪に走った、走らざるを得なかった少年たち。そんな彼らの葛藤や後悔、そして心の内に秘めた思いが、作家による「物語の教室」を通して、?き出しの言葉となりそして詩となっていく。受刑者に寄り添い、向き合ってきた作家が編んだ奇跡の詩集、待望の第二弾!

<既刊>

空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)
寮 美千子 (編集)

受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ……。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった──「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。

 
【関連】
試し読み | 寮美千子/編 『名前で呼ばれたこともなかったから―奈良少年刑務所詩集―』 | 新潮社

 


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