まるでスパイ小説!おばあちゃんが「絶対に秘密にしなければいけなかった」戦時下の体験とは?『アンナの戦争』が刊行
第二次大戦前夜、キンダートランスポートで英国に渡ったユダヤ人少女を主人公にした、史実をふまえたフィクション『アンナの戦争 キンダートランスポートの少女の物語』(著:ヘレン・ピーターズさん、訳:尾﨑愛子さん)が偕成社より刊行されました。
おばあちゃんと秘密情報部の間になにが!?
物語は、小学6年生のダニエルが、戦争時代の話をきくためにアンナおばあちゃんを訪ねるところからはじまります。
学校の授業で、おばあちゃんが戦争の直前にドイツからイギリスに渡ってきたことを話したところ、いろいろな質問をされたものの、ダニエルはそれ以上のことは何も知らなかったからです。
戦時下の体験について聞かれたおばあちゃんは「ふしぎな偶然だわ」と、ちょうどその日、スパイを監視する機関MI5(秘密情報部)から手紙が届いたことを明かします。
おばあちゃんと秘密情報部? いったいこの2つの間にどんな関係があるというのか……目を見開いたダニエルに、おばあちゃんが話し始めました。
「わたしはこれまで、子ども時代のことをちゃんと話したことがなかったわ。つらすぎて思いだしたくないことも、ぜったい秘密にしなければならないこともあったから。だけどいま、あなたにきいてほしいの。」
そうして、ダニエルがきいた、アンナおばあちゃんの驚くべき戦時下の体験とは?
キンダートランスポートで英国へ渡った、勇敢な少女・アンナの物語
1938年、第二次大戦前夜。ドイツに住む12歳のアンナは、日に日に深刻になるユダヤ人迫害をのがれるため、両親と別れ「キンダートランスポート」でイギリスへ避難することになりました。
※キンダートランスポート:第二次大戦前夜に欧州のユダヤ人の子どもたちをイギリスをはじめとした各国に移送し保護した活動で、実際に1万人の子どもたちがこの活動で救出されました。
列車の発車寸前、どさくさにまぎれて若い母親からかごを渡されたアンナ。かごをあけると、中には赤ちゃんが入っていたのです。驚いたアンナでしたが、託されたその子の面倒を見ることを決意し、キンダートランスポートの名簿に載っていない赤ん坊を、最後まで守り抜きます。
そして、無事に田舎の農場についたアンナ。ドイツにいる両親を心配しながら、英語を学び、里親のもとで新しい生活になじもうと努力するのですが……ある日、農場の納屋でけがをした兵士をみつけます。イギリス兵だと名乗ったその男でしたが、アンナは帰り際、彼がドイツ語で悪態をついたのに気づきました。男はドイツのスパイだったのです!
イギリス兵だと信じるふりをして水や食べ物を運んでいると、男から手紙の投函をたのまれ……。アンナのいる農場は、重要な軍が配置されている場所。アンナはイギリスをスパイ活動から守るため、驚くべき行動にでます。
機転の利く少女アンナ・シュレディンガーの勇気ある行動の行方にページをめくる手がとまらない、史実をふまえた、スパイ小説のように楽しめる物語です。
著者プロフィール
■ヘレン・ピーターズさん
イギリスのサセックス州の農場に生まれ、動物にかこまれて育つ。ケンブリッジ大学卒業後、教師として英語と演劇を教えながら、児童書作家として活動。2022年より作家業に専念。
代表作に、『子ぶたのトリュフ』『子ガモのボタン』などがある。ブライトン在住。
■訳:尾﨑愛子(おざき・あいこ)さん
東京大学教養学部卒業後、出版社勤務を経て、東京大学大学院にて学術修士号取得。大学院在学中より児童文学の翻訳をはじめる。
訳書に『クレイジー・レディー』『シリアからきたバレリーナ』『オンボロやしきの人形たち』など。
アンナの戦争 ヘレン・ピーターズ (著), 尾﨑愛子 (翻訳) 小学6年生のダニエルは、戦争時代の話をきくためにアンナおばあちゃんを訪ねた。 ????第二次世界大戦中、12歳のアンナはドイツでのユダヤ人迫害をのがれ、「キンダートランスポート」(イギリスをはじめ各国の家庭がユダヤ人の子どもを受け入れた活動)でイギリスへ避難することになった。列車の発車寸前、どさくさにまぎれて若い母親からかごを渡される。中には赤ちゃんが! アンナはイギリスに着くまで、その子の面倒をみる。 話をきいたダニエルは、アンナおばあちゃんの誕生日に贈るサプライズプレゼントを思いつく。 ナチによるユダヤ人迫害や、1万人もの子どもたちを救ったキンダートランスポートの活動などの史実をふまえ、緊張感いっぱいに描かれたフィクション。 |