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【第32回紫式部文学賞】奈倉有里さん『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』が受賞

第32回紫式部文学賞が決定!

第32回紫式部文学賞が決定!

宇治市(京都府)は、女性作家の文学作品を対象とする「第32回紫式部文学賞」の受賞作を発表しました。

 

第32回紫式部文学賞が決定!

第32回紫式部文学賞は、次の通り受賞作が決定しました。

 
<第32回紫式部文学賞 受賞作品>

奈倉有里(なぐら・ゆり)さん
『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』(イースト・プレス)

 
受賞者の奈倉有里さんは、1982年12月6日生まれ、東京都出身。2002年からペテルブルグの語学学校でロシア語を学び、その後モスクワに移住、モスクワ大学予備科を経て、ロシア国立ゴーリキー文学大学に入学、2008年に日本人として初めて卒業し、「文学従事者」という学士資格を取得。東京大学大学院修士課程を経て博士課程満期退学。博士(文学)。研究分野はロシア詩、現代ロシア文学。2021年、博士論文『アレクサンドル・ブローク 批評と詩学 ――焼身から世界の火災へ――』で第2回東京大学而立賞を受賞。訳書に、ミハイル・シーシキン『手紙』、リュドミラ・ウリツカヤ『陽気なお葬式』、フョードル・ドストエフスキー『白夜』『未成年(縮約版)』、ウラジーミル・ナボコフ『マーシェンカ』、サーシャ・フィリペンコ『理不尽ゲーム』など。

奈倉さんには、賞金100万円が贈られます。

 
選考委員は、川上弘美さん(作家)、鈴木貞美さん(文芸評論家/国際日本文化研究センター名誉教授)、竹田青嗣さん(文芸評論家/哲学者/大学院大学至善館教授/早稲田大学名誉教授)、村田喜代子さん(作家)。

作品紹介、講評、受賞の言葉など詳細は、https://www.city.uji.kyoto.jp/site/bunkakatsudou/7120.html をご覧ください。

 

紫式部文学賞とは

「紫式部文学賞」は、宇治市と宇治市教育委員会が主催。伝統ある日本女性文学の継承・発展と、市民文化の向上に資することを目的とした文学賞です。

前年に刊行された文学作品を対象とし、女性を作者とするものに限定しています。

一般公募は行わず、全国の作家、文芸評論家、出版社、新聞社、市民推薦人から各々1点に限り推薦を受けることとしています。推薦された作品は、紫式部文学賞推薦委員会で数編に絞り込まれ、その後紫式部文学賞選考委員会で受賞候補作品が選定され、市長が決定します。

受賞者は原則として1名で、正賞(「紫式部」をイメージしたクリスタル像)と副賞(賞金100万円)が贈呈されます。

 

夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く
奈倉有里 (著)

「分断する」言葉ではなく、「つなぐ」言葉を求めて。

今、ロシアはどうなっているのか。高校卒業後、単身ロシアに渡り、日本人として初めてロシア国立ゴーリキー文学大学を卒業した筆者が、テロ・貧富・宗教により分断が進み、状況が激変していくロシアのリアルを活写する。

私は無力だった。(中略)目の前で起きていく犯罪や民族間の争いに対して、(中略)いま思い返してもなにもかもすべてに対して「なにもできなかった」という無念な思いに押しつぶされそうになる。(中略)けれども私が無力でなかった唯一の時間がある。彼らとともに歌をうたい詩を読み、小説の引用や文体模倣をして、笑ったり泣いたりしていたその瞬間──それは文学を学ぶことなしには得られなかった心の交流であり、魂の出会いだった。教科書に書かれるような大きな話題に対していかに無力でも、それぞれの瞬間に私たちをつなぐちいさな言葉はいつも文学のなかに溢れていた。(本文より)

 
【関連】
紫式部文学賞 – 受賞作品 – 宇治市公式ホームページ

 


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