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『交通誘導員ヨレヨレ日記』に続く最新刊、柏耕一さん『75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません』が刊行

柏耕一さん著『75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません』

柏耕一さん著『75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません』

7万部超のヒットとなった前作『交通誘導員ヨレヨレ日記』(三五館シンシャ)に続く、柏耕一さん著『75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません』が河出書房新社より刊行されました。

 

誘導員が「誰でもなれる」「最底辺の仕事」と自嘲する業界の実態

警備業界のデータによると、60歳以上の警備員が全体の45%を占めます。しかし、著者の柏耕一さんによると「私が所属する警備会社は70代以上が80%」といいます。

 
インフラ整備を支える現場は、多くの高齢者でもっているのです。著者の同僚には85歳の人もいますが、彼らは働く理由を、口をそろえて「おカネのため」といいます。

カンヌ国際映画祭で高い評価を受けた話題作『PLAN 75』(2022年6月公開)でも描かれたように、高齢になっても働かなくては生きていけない日本の現実に暗澹たる気持ちになりますが、逆から見れば、交通誘導員は常に不足しており、手に職のない高齢者が採用されやすいといえます。

 

交通誘導員がもっとも恐れるものとは?

交通誘導員は「ただ立っているだけ」ではありません。厳しい暑さ・寒さに耐えながら、一歩間違えば人身事故と隣り合わせの仕事です。

 
片側交互通行中にヒヤッとしたり、未熟なドライバーに慌てたりすることもしばしばですが、なんといっても歩行者やドライバー、近隣住民からの「クレーム」は絶対に避けなければいけません。

ささいなクレームに交通誘導員が適切に対応できなかったがために事が大きくなり、工事が何日間も中断することさえあるからです。そうなれば、以降、当人はその現場では働けなくなるし、所属する警備会社も信頼を失います。

 

あまりにも赤裸々な、人間くさい世界

著者の柏さんは、編集者・ライターとしてミリオンセラーも出しましたが、いろいろあって66歳のときに交通誘導員になりました(なるしかなかった)。そして、いざ入った世界があまりにも人間くさいことに驚きます。

 
はなから相手を見下す者、やる気のない者、不正を働いて責任を部下になすりつける者……。有名企業を辞めて警備員を始めるなどワケありの人もいます。

いい人もいれば悪い人もいるのが世の常ですが、さまざまな前歴・前職を持つ人間が集うこの世界では、それがはっきりと顕在化するのです。ひとたび「合わない」となると、人間関係のストレスは案外大きいものです。本書の真骨頂はまさに、前作を上回る濃度の「人間ドキュメント」として読めるところです。

 

本書の構成

1章 後期高齢者でも働きます

2章 今日の現場も気が抜けない

3章 この驚くべき人間見本市

4章 コロナ禍の交通誘導員

 

著者プロフィール

著者の柏 耕一(かしわ・こういち)さんは、1946年生まれ。出版社勤務後、編集プロダクションを設立。出版編集・ライター業に従事していたが、ワケあって10年前から複数の警備会社を渡り歩く。

前作『交通誘導員ヨレヨレ日記』は7万部超のヒットとなるも、諸事情あって75歳をすぎた今も交通誘導員を卒業できず。

 

75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません
柏耕一 (著)

『交通誘導員ヨレヨレ日記』の第二弾!
誘導員の知られざる苦労に加え、高齢労働者の覚悟と悲哀、前作の読者反響やコロナ渦を踏まえた著者の思い……を収録。人間臭いドラマに、再びしみじみ! !

 


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