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沢木耕太郎さん9年ぶりの長編ノンフィクション『天路の旅人』930枚が『新潮』8月号・9月号に二ヶ月連続掲載! 8月号には芥川賞作家・上田岳弘さん初の戯曲「2020」も

沢木耕太郎さん9年ぶりの長編ノンフィクション『天路の旅人』930枚が『新潮』8月号・9月号に二ヶ月連続掲載!

沢木耕太郎さん9年ぶりの長編ノンフィクション『天路の旅人』930枚が『新潮』8月号・9月号に二ヶ月連続掲載!

新潮社が発行する月刊文芸誌『新潮』8月号(7月7日発売)と、8月5日(金)発売の『新潮』9月号に、『深夜特急』の沢木耕太郎さんがどうしても描きたかった、稀有な旅人・西川一三さんの旅と人生を描く、9年ぶりの長編ノンフィクション『天路の旅人』930枚が二ヶ月連続で掲載されます。

また、『新潮』8月号には、芥川賞・三島賞・川端賞トリプル受賞の作家・上田岳弘さんの初の戯曲「2020」も収録されています。

 

沢木耕太郎さん、9年ぶりの長編ノンフィクション『天路の旅人』930枚を第一部・第二部と異例の二ヶ月連続掲載!

日本紀行文学の金字塔『深夜特急』で知られるノンフィクション作家・沢木耕太郎さんには、ここ四半世紀ずっと足跡を追い続けてきた旅人がいました。

その人の名前は西川一三(かずみ)。西川さんは、第二次世界大戦末期、日本の密偵(スパイ)として、中国大陸の最深部まで潜入しました。蒙古人のラマ僧のふりをして、内蒙古からチベットまでほとんど徒歩でたどりついた頃に、日本は終戦。その後も、インド、ブータン、ネパールなどに旅を続けた彼は、逮捕され、日本に送還されました。旅はあしかけ8年に及びました。

 
西川一三さんには、自身が執筆した著書『秘境西域八年の潜行』がありますが、沢木さんは、実に七回もヒマラヤの峠を越えた超人的な旅人でありながら、帰国後は別の仕事について淡々と生きた西川さんの人柄やたたずまいに感銘を受け、西川一三という旅人の旅と人生を新たに描きなおそうと決意します。

 
帰国後、GHQによる一年間の聞き取りがあったあと、出版のあてもなく記憶だけで『秘境西域八年の潜行』3200枚を書き、その後、生きるために縁もゆかりもない盛岡で小さい会社を経営、元日以外の364日はひたすら働いていたという西川さん。

沢木氏は、生前に一年間徹底的なインタビューを行い、さらに、奇跡的に見つかった『秘境西域八年の潜行』の編集前生原稿と出会い、この作品を書き上げました。本作冒頭、四半世紀前の盛岡の居酒屋で、沢木さんが年老いた西川さんと出会う場面から、読者は読みだしたらやめられません。

 
沢木さんにとって、『キャパの十字架』以来、9年ぶりの長篇ノンフィクションとなります。また、930枚は沢木さんのノンフィクションとしても最長の作品です。そして、文芸誌『新潮』掲載の沢木さんの作品としては、1995年7月号の『檀』、2005年8月号の「百の谷、雪の嶺」(単行本時に『凍』に改題)以来の大きな作品になりました。

 
【沢木耕太郎さん コメント】

海図のような

ここ何年と、新型のウイルスの流行によって、外国を自由に旅することができなくなってしまった。私も、初めて取得した二十代のときから、これほどパスポートを使わない期間が長かったことはない。
しかし、実を言えば、私はほとんど退屈していなかった。
ひとりの人物の旅を辿るため、書物上で、地図上で、あるいはグーグルアース上で、その足跡を追いつづけていたからだ。

第二次大戦末期、ひとりの日本の若者が、敵国である中国の、その大陸の奥深くまで潜入した。彼はラマ教の巡礼僧に扮した「密偵」だった。しかし、彼は日本が敗れたあともなおラマ僧に扮しつづけ、実に足掛け八年に及ぶ旅を続けることになった。
彼、西川一三の旅も長かったが、その彼を描こうとする私の旅も長かった。彼と最初に会ったときを発端とし、この『天路の旅人』が書き上がったときを終結とすれば、発端から終結まで実に二十五年もかかったことになる。

西川一三を書く。
だが、その西川が自らの旅について記した『秘境西域八年の潜行』という書物がありながら、あえて彼の旅を描こうとするのはなぜなのか。
私は、何度も、そう自問した。
そして、やがて、こう思うようになった。私が描きたいのは、西川一三の旅そのものではなく、その旅をした西川一三という旅人なのだ、と。

たぶん、ここにこのような人がいた、あるいはそのときこのような事があったという、その「人」や「事」に対する驚きが、ノンフィクションの書き手をひとつの作品の執筆に向かわせる最初の一蹴りになる。
この『天路の旅人』は、ここにこんな人がいたのかという驚きから出発して、その人はこのような人だったのかというもうひとつの驚きを生むことになった。

確かに『秘境西域八年の潜行』という書物は存在する。しかし、それはあまりにも長大すぎるため、最初から最後まで読み通すことのできた人がどれくらいいるかわからないほどだ。さらに、それを精読した人ということになると、かなり数は限られてくるだろう。
この『天路の旅人』が、『秘境西域八年の潜行』という深い森を歩くための磁石のような、あるいは広大な海を航海するための海図のようなものになってくれればとも思う。

 
<沢木耕太郎さん プロフィール>

1947年生まれ。東京都出身。横浜国立大学経済学部卒業。ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。

1979年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞。その後も『深夜特急』や『檀』など今も読み継がれる名作を次々に発表し、2006年『凍』で講談社ノンフィクション賞を、2014年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞している。

近年は長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』を刊行。その他にも『旅する力』『あなたがいる場所』『流星ひとつ』、「沢木耕太郎ノンフィクション」シリーズ(全9巻)などがある。2018年『銀河を渡る 全エッセイ』『作家との遭遇 全作家論』、2020年初めての国内旅エッセイ集『旅のつばくろ』、全四巻となる「沢木耕太郎セッションズ〈訊いて、聴く〉」を刊行。最新刊は2022年6月、『飛び立つ季節 旅のつばくろ』。

 

芥川賞・三島賞・川端賞トリプル受賞の作家・上田岳弘さん初の戯曲「2020」が『新潮』8月号に掲載! 俳優・高橋一生さんによる一人芝居で上演開始

2013年のデビュー以降、画期的な作品で日本文学を更新し続けてきた、上田岳弘さん初の戯曲「2020」が、『新潮』8月号に掲載されます。

 
――まどろみの中、君たちはガラスの小窓越しに、いつか見た風景をぼんやりと眺めている。
愚かにも真夜中に目覚めてしまった、僕一人を残して。――

 
戯曲「2020」は、コロナの蔓延によって変異した人類史を、「最後の人間」が語る預言的作品です。

「最後の人間」「Geniusu lul-lul」「赤ちゃん工場を経営する男」など、様々な時代に転生を繰り返す魂を、一人芝居で演じるのは、俳優・高橋一生さん。

「この作品は、俳優・高橋一生と作家・上田岳弘、私との密談から生まれた」と演出の白井晃さんが語る注目の公演は、7月7日に東京・PARCO劇場で開演し、全国を巡回予定です。

 

新潮2022年08月号

超大型ノンフィクション
沢木耕太郎「天路の旅人」第一部・460枚
第二次大戦末期、敵国・中国への密偵として内蒙古からチベットまで歩き、
終戦後インドまであしかけ八年旅した男・西川一三。
ヒマラヤを七回越えた稀代の旅人の生と魂を描く。

上田岳弘「2020」 戯曲
あれ(“)の蔓延で変異した人類の運命。
710年後、≪最後の人間≫が我々の未来を語り始める。

新連載 坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」
第2回「母へのレクイエム」
北極圏への旅。演奏が変わった夜。
『音楽は自由にする』以降の活動を、哲学を交え振り返る。

第10回河合隼雄物語賞・学芸賞発表

天路の旅人 「新潮」2022年8月号掲載無料お試し版
沢木耕太郎 (著)

月刊文芸誌「新潮」2022年8月号、9月号掲載で話題沸騰。沢木耕太郎氏がどうしても描きたかった、稀有な旅人・西川一三の旅と人生を描く、9年ぶりの長編ノンフィクション『天路の旅人』930枚、序章・第1章を期間限定で無料公開!

その男はスパイ。修行僧。そして旅人。
第二次世界大戦末期、日本の密偵(スパイ)として、中国大陸の最深部まで潜入。蒙古人のラマ僧のふりをして、内蒙古からチベットまでほとんど徒歩でたどりついた頃に、日本は終戦。その後も、インド、ブータン、ネパールなどにあしかけ8年旅を続け、ヒマラヤの峠を七回越えた超人的な旅人・西川一三。その旅と、帰国後の人生を追う、沢木耕太郎氏の9年ぶりの長篇ノンフィクションです。

この電子書籍は、「新潮」2022年8月号に掲載された、沢木耕太郎「天路の旅人 第一部」(序章より第7章)より、序章と第1章を再構成し、期間限定の「無料試し読み」として公開するものです。
この続きは、「新潮」2022年8月号(7月7日より発売中)、また9月号(8月5日発売)掲載予定の「天路の旅人 第二部」(第8章より終章)、さらに近刊の単行本でお楽しみください。

 


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