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宮崎駿監督オリジナル絵物語『シュナの旅』が90万部を突破! 英語版の発売発表を受けて重版決定

宮崎駿さん著『シュナの旅』(アニメージュ文庫)

宮崎駿さん著『シュナの旅』(アニメージュ文庫)

徳間書店は、宮崎駿さん著『シュナの旅』(アニメージュ文庫)が日本国外で初めて英語版が発売されるとの発表を受け、原著の重版94刷を決定、1983年刊行以来の累計発行部数は90万部を突破しました。

【英語版「SHUNA’S JOURNEY」2022年11月1日 発売、発行/First Second, an imprint of Macmillan Publishers】

 

1983年以来のロングセラー!アニメージュ文庫『シュナの旅』が90万部突破

本作は、宮崎駿監督がチベットの民話をもとにオールカラーの水彩画で描き下ろした絵物語です。もとになった「犬になった王子」という物語をはじめて読んで以来、「この民話のアニメーション化がひとつの夢だった」(あとがきより)と語る宮崎監督が、絵物語という形式で夢を形にした一冊。

 
【スタジオジブリ公式Twitterより  2021年8月14日】

宮崎さんはこの絵物語を描くのにものすごく時間をかけ、発売告知をアニメージュ誌上で2回延ばしました。
原画を見ると分かりますが、とても丁寧に水彩で描かれています。
特に、表紙に使った少女・テアの顔は何回も描き直し、顔色、表情、納得できるものが出来るまで、切り貼りまでしていたそうです。

 

 
【STORY】

これは、王子シュナの冒険の物語。そして少女テアとの出会いの物語。

谷あいの貧しい小国の後継者シュナは、実りの種をたずさえて、はるか西方にあるという豊穣の地をめざす。その地には、人々の飢えを除く黄金の穀物が美しく輝いているというのだ。

 
【目次】

旅立ち
西へ
都城(とじょう)にて
襲撃
神人の土地へ
テア

 

本書より(一部抜粋)

見知らぬ老人が語った。
「さらに西へ進むがよい
やがて大地は絶壁となって終わりを告げる
その先は 月が生まれ出で
死ににもどる神人(しんじん)の土地となる」

「神人……?」

「人はかつて金色の種を持っていた
みずから収穫し みずから種を播き
みずからを生かしたものだったが
いまは種は神人しか持っていない
人は人間を神人に売り
死んだ実をもらうようになった」

「神人は人が近づくのを喜ばぬ
その地におもむき
もどった者はいない」

――夜明け近く、神人の土地に向けシュナは出発した

シュナの旅の目的を知って
少女はうつむいた
やがて顔をあげていった
「神人の土地からもどれたら かならず
北へ北へと進んで下さい
わたしたちはそこで
あなたが来るのを
いつまでも待ちつづけています」
少女の名はテアといった

 

本書「あとがき」より

この物語はチベットの民話「犬になった王子」が元になっています。穀物を持たない貧しい国民の生活を愁えたある国の王子が、苦難の旅の末、竜王から麦の粒を盗み出し、そのために魔法で犬の姿に変えられてしまいますが、ひとりの娘の愛によって救われ、ついに祖国に麦をもたらすという民話です。

―中略―

十数年前、はじめて読んで以来、この民話のアニメーション化がひとつの夢だったのですが、現在の日本の状況では、このような地味な企画は通るはずもありません。
むしろ中国でこそアニメーション化すべきだなどとあきらめていたのですが、今回徳間書店の人々のすすめもあって、何らかの形での自分なりの映像化を思いたったしだいです。

(1983年5月10日 宮崎駿)

 

著者プロフィール

著者の宮崎駿(みやざき・はやお)さんは、1941年1月5日生まれ。東京都出身。アニメーション映画監督。

1963年、学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968)の場面設計・原画等を手掛け、その後Aプロダクションに移籍、「パンダコパンダ」(1972)の原案・脚本・画面設定・原画を担当。1973年に高畑勲さんらとズイヨー映像へ。日本アニメーション、テレコムを経て、1985年にスタジオジブリの設立に参加。その間「アルプスの少女ハイジ」(1974)の場面設定・画面構成、「未来少年コナン」(1978)の演出などを手掛け、「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)では劇場作品を初監督。雑誌『アニメージュ』に連載した自作漫画をもとに、1984年には「風の谷のナウシカ」を発表、自ら原作・脚本・監督を担当した。

スタジオジブリで監督として「天空の城ラピュタ」(1986)「となりのトトロ」(1988)「魔女の宅急便」(1989)「紅の豚」(1992)「もののけ姫」(1997)「千と千尋の神隠し」(2001)「ハウルの動く城」(2004)「崖の上のポニョ」(2008)「風立ちぬ」(2013)といった多くの劇場用映画を発表している。現在「君たちはどう生きるか」を制作中。

「千と千尋の神隠し」は第52回ベルリン国際映画祭 金熊賞、第75回アカデミー賞 長編アニメーション映画部門賞などを受賞、「ハウルの動く城」は第61回ベネチア国際映画祭でオゼッラ賞を、続く第62回同映画祭では、優れた作品を生み出し続けている監督として栄誉金獅子賞を受賞。

著書に『シュナの旅』、黒澤明さんとの対談集『何が映画か』、『出発点』、養老孟司さんとの対談集『虫眼とアニ眼』(以上、徳間書店)、『折り返し点』『トトロの住む家 増補改訂版』『本へのとびら』(以上、岩波書店)、『半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義』(文春ジブリ文庫)などがある。

 

シュナの旅 (アニメージュ文庫)
宮崎 駿 (著)

超ロングセラー90万部突破! (2022年現在)

「この民話のアニメーション化が夢だった」
スタジオジブリ宮崎駿監督が描きおろしたオールカラー水彩の絵物語!

チベットの民話「犬になった王子」をもとにした谷あいの貧しい小国の後継者シュナの物語。
絵物語という形式で自らの夢を形にした、宮崎駿監督のもう一つの世界。
1983年以来のロングセラー。
映画「もののけ姫」に出てくるヤックルも活躍!

 
【出版社より】
宮崎駿が描き下ろしたオールカラーの絵物語。1982年「アニメージュ」にて『風の谷のナウシカ』の連載を開始したのとほぼ同時期に描かれた作品である。水彩の淡い色をいくつも重ねて着色した絵が美しい。

作物の育たない貧しい国の王子シュナは、大地に豊饒をもたらすという「金色の種」を求め、西へと旅に出る。つらい旅の途中、人間を売り買いする町で商品として売られている姉妹と出会う。彼女らを助けた後、ひとりでたどり着いた「神人の土地」で、金色の種を見つけるが…。どんな状況にあっても、生きようとする人間のたくましさ。強い心だけが生みだすことのできる、やさしさ。そして、弱さと無力さ。宮崎は、短い物語のなかに、そんなものを、ただそのまま描き出してみせる。

世界観の作りこみとそれを表現する絵の力は圧巻。特に「神人の土地」にあふれる虫、植物、巨人、月の造形には、一切の迷いが見らない。彼の頭のなかに広がる原風景を見せられているようで、生々しいほどの迫力に満ちている。死と生、喜びと恐怖の一体となったこの世界観は、以降の宮崎作品にも幾度となく登場する。

チベットの民話に感銘を受けた宮崎が「地味な企画」ということでアニメ化を断念し「自分なりの映像化」を行ったものが、本作である。だがアニメという万人に向けた形をとっていれば、また違うものになっていたはずだ。淡々と、厳かに物語が進行する本書の独特の雰囲気は、絵物語という形態であればこその魅力といえるだろう。(門倉紫麻)

 


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