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『危機の時代に読み解く「風の谷のナウシカ」』が刊行

『危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』』

『危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』』

徳間書店は、宮﨑駿監督の長編漫画『風の谷のナウシカ』をテーマに各界の識者にインタビュー、深い考察が大きな注目を集めた朝日新聞デジタルの連載をまとめた書籍『危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』』を刊行しました。

 

『風の谷のナウシカ』を通して各界の識者が導く、これからを生き抜く18の羅針盤

「人類が方向転換せず、破滅を経験した」仮想の未来を舞台にした宮﨑駿監督の漫画『風の谷のナウシカ』。新型コロナウイルス、ウクライナ侵攻、AI問題など、混迷する困難な時代に私たちはどう生きていけばいいのか、各界の最前線で活躍する18名の識者が読み解いた、『風の谷のナウシカ』を通して改めて考える一冊です。

 
朝日新聞デジタルで2021年3月に第1シーズン、5月に第2シーズンを配信し、読者から大きな反響を呼んだ「コロナ下で読み解く 風の谷のナウシカ」。2022年12月に掲載された最新第3シーズンを加え、すべてのインタビュー記事を収録、加筆修正しまとめたものです。

 
今なぜナウシカなのか。
取材記者は「はじめに」でこう述べます。

 
漫画『ナウシカ』の最も驚くべき要素が、現実世界との度重なるシンクロニシティー(共時性)だ。『ナウシカ』の連載が完結した1994年以降、私たちは何度も何度も「想像を超えた途方もないできごと」に遭遇してきた。1995年の阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件、2001年の9・11テロ、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故。そのたびに、ことの成り行きに呆然としつつも、僕は心の片隅で密かにこう思い続けてきた。
「これは『ナウシカ』の世界を旅する中で、すでに体験したことだ」と─。

 
本書に登場する語り手たち18名。今の日本を生きる識者、それぞれの視点から読み解かれる対話が、これからを生きる私たちに示す道とは。

 
【収録著者】 ※敬称略

民俗学者・赤坂憲雄/俳優・杏/社会哲学者・稲葉振一郎/現代史家・大木毅/社会学者・大澤真幸/漫画家・大童澄瞳/映像研究家・叶精二/作家・川上弘美/軍事アナリスト・小泉悠/英文学者・河野真太郎/ロシア文学者・佐藤雄亮/漫画研究者・杉本バウエンス・ジェシカ/文筆家・鈴木涼美/スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫/漫画家・竹宮惠子/生物学者・長沼毅/生物学者・福岡伸一/評論家・宮崎哲弥 (五十音順、敬称略)

(※宮﨑駿監督の「﨑」はたつさき)

 
【編者 取材担当】 ※敬称略

朝日新聞社
『危機の時代に読み解く「風の谷のナウシカ」』取材班

朝日新聞文化部
太田啓之(赤坂憲雄、杏、大木毅、大澤真幸、大童澄瞳、叶精二、川上弘美、小泉悠、佐藤雄亮、杉本バウエンス・ジェシカ、鈴木敏夫、竹宮惠子、長沼毅、福岡伸一、宮崎哲弥/全てインタビュー)
大内悟史(稲葉振一郎/寄稿編集、鈴木涼美/インタビュー)
増田愛子(河野真太郎/インタビュー)

 
★本書冒頭の試し読みができます:https://www.tokuma.jp/files/actibook/620554/?pNo=1

 

編者・朝日新聞文化部記者 太田啓之さんコメント(「はじめに」より)

アニメージュコミックス ワイド判『風の谷のナウシカ』全7巻(宮﨑駿さん/徳間書店)

アニメージュコミックス ワイド判『風の谷のナウシカ』全7巻(宮﨑駿さん/徳間書店)

僕は『風の谷のナウシカ』という漫画が大好きだ。読むたびに「物語は、こんなに遠くにまで、こんなに深い場所にまで、たどり着けるものなのか」という思いに打たれ、心が震える。全7巻を通して読了した時には「長い長い旅を終えて、ようやく日常世界に戻ってきた」という眩暈(めまい)に似た感覚さえ味わう。連載が始まった17歳の時から今日に至るまで、数え切れないほど読み返してきたが、「古今東西のあらゆる物語の最高峰のひとつ」との思いは揺るがない。

 
とはいえ、漫画『ナウシカ』は決して、「美しく整っていて、心地よい涙と感動を約束してくれる」という類いの作品ではない。むしろ、ごつごつしていてとっつきにくく、私たち自身とこの世界が抱える矛盾をそのまま取り込んでしまったかのような、渾沌に充ちた途方もない作品だ。読後感も「カタルシス」というよりは「予想もしなかった場所に投げ出されて呆然とする」という感じに近い。映画の『ナウシカ』と根っこを共有していても、辿り着いた地平はまったく異なる。

 
インタビューの一つひとつが、たとえ重いテーマを扱っている時でも、対話の悦びと知的刺激に充ちた体験だった。語り手の方々の『ナウシカ』と「私たちが生きるこの世界」への深い愛着、そして困難な時代を生き抜こうとする強い意志が、輝きにあふれたひとときをもたらしてくれたと確信している。この本を通じて、そうした至高の体験を読者の方々と分かち合えることを、心から願っている。

 

本書の構成

はじめに
主な登場者などの相関図
作品世界を理解するためのキーワード

I 序章
スタジオジブリプロデューサー 鈴木敏夫
「漫画版は映画への裏切りでは」という僕の言葉に、宮さんは激怒した

俳優 杏
「母に愛されなかった娘、巨神兵の母」としてのナウシカの思いを受け止めたい

映像研究家 叶精二
アニメーション化を想定していなかった漫画版『ナウシカ』

軍事アナリスト 小泉悠
現実のウクライナとナウシカの世界 戦争の「ネイチャー」は変わらない

II キャラクターの魅力
作家 川上弘美
ナウシカは現実にはいなくてもいい─ノイズとしての物語がもたらす救い

生物学者 福岡伸一
老いるからこそ、死ぬからこそ人は美しい─ナウシカと鬼滅の刃・煉獄杏寿郎が辿り着いた場所

漫画家 竹宮惠子
〈素晴らしきディストピア〉の拒絶 ナウシカとキースの叫び

文筆家 鈴木涼美
「夜の街」=腐海に生きた私が憧れたクシャナ

英文学者 河野真太郎
ナウシカとクシャナを結ぶ「シスターフッド」の裏にあるもの

III 作品のディテールと時代背景
漫画家 大童澄瞳
驚嘆させられるナウシカ世界の作り込み 飛行機を「船」と呼ぶ理由

漫画研究者 杉本バウエンス・ジェシカ
ナウシカはなぜ「青き衣」を着ているのか─西欧からの洞察

現代史家 大木毅
『なんという戦争!! いかがわしい正義すらカケラもないなんて』 絶滅戦争・独ソ戦とナウシカ

評論家 宮崎哲弥
高畑勲『かぐや姫の物語』は『ナウシカ』へのアンチテーゼだった

社会哲学者 稲葉振一郎
お先まっ暗のだれも歩いたことのない未来を肯定する─ナウシカの嫡子としての『エヴァ』

IV 物語から現実へ
民俗学者 赤坂憲雄
母性が壊れてしまった時代に降臨した「血塗られた母」ナウシカ

生物学者 長沼毅
ナウシカが「シュワの墓所」を破壊したのは、あまりにも短慮だった

ロシア文学者 佐藤雄亮
トルストイ『戦争と平和』と『ナウシカ』─「人類は滅びるしかないのか」 究極の問いを巡る壮大な実験

社会学者 大澤真幸
『ナウシカ』を思想化する試み─現実を変える力とするために

ブックガイド:漫画『風の谷のナウシカ』の攻略法
おわりに

 

〈参考〉漫画『風の谷のナウシカ』について

■漫画連載は月刊『アニメージュ』(徳間書店)にて
・連載開始『アニメージュ』1982年2月号(1/9発売)
・連載完結『アニメージュ』1994年3月号(2/10発売)
※途中、映画制作などにより休載あり

 
1982年1月の連載開始以来、40年以上にわたり読み継がれている宮﨑駿監督の不朽の名作漫画。当初、『アニメージュ増刊「風の谷のナウシカ」総集編(1)』として発売されたが(1982年8月発売)、翌1983年より、装丁も新たにカバーを巻いたアニメージュコミックス ワイド判として刊行開始。コミックス全7巻の発行部数は2023年1月現在、累計1762万部を超える。

 
なお、長編アニメーション映画 「風の谷のナウシカ」(宮﨑駿監督)は、1984年3月11日公開。映画はコミックス第2巻の途中までを再構成したもの。映画では語られなかった、さらに壮大で深遠な物語が漫画では描かれる。

 

危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』
朝日新聞社 (編集), 赤坂憲雄 (著), 杏 (著), 稲葉振一郎 (著), 大木毅 (著), 大澤真幸 (著), 大童澄瞳 (著), 叶精二 (著), 川上弘美 (著), 小泉悠 (著), 河野真太郎 (著), 佐藤雄亮 (著), 杉本バウエンス・ジェシカ (著), 鈴木涼美 (著), 鈴木敏夫 (著), 竹宮惠子 (著), 長沼毅 (著), 福岡伸一 (著), 宮崎哲弥 (著)

最大10%還元 本のまとめ買いキャンペーン
「これは『ナウシカ』の世界を旅する中で、すでに体験したことだ」
コロナウイルス、ウクライナ侵攻、AI問題、気候変動……混迷する現代社会を私たちはどう生きるのか。

朝日新聞デジタルにて、2021年3月に第1シーズン、5月に第2シーズンを配信し、読者から大きな反響を呼んだ「コロナ下で読み解く風の谷のナウシカ」。2022年12月に掲載された最新の第3シーズンを加え、すべてのインタビューをまとめて刊行!
コロナウイルスをはじめ、ロシアのウクライナ侵攻、AI問題、ますます激化する気候変動など、混迷化が加速する現代社会を「人類が方向を転換せず、破滅を経験してしまった」仮想の未来を舞台にした宮﨑駿監督の長編漫画『風の谷のナウシカ』を通して連関的に考える。

 
【関連】
危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』(試し読み)

 


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