恩田陸さんが14年の連載を経て紡ぐ、美しくもおぞましい吸血鬼SF『愚かな薔薇』刊行
徳間書店は、直木賞・本屋大賞受賞作家・恩田陸さんが14年の連載を経て紡いだ最新刊『愚かな薔薇』を12月24日に刊行します。
『愚かな薔薇』はSF誌『SF Japan』(徳間書店/2011年休刊)で2006年秋号から連載開始し、その後、徳間書店の文芸誌『読楽』で2020年まで14年に亘り連載され、この度、大幅な加筆修正を加え、ついに待望の単行本化となります。
初回限定全面帯(2022年3月末出荷分まで)には、著者が多大な影響を受けて大ファンだと公言している、漫画家の萩尾望都さんによる描き下ろしイラストを使用。恩田さんが描く、美しくもおぞましい吸血鬼SFの世界観をさらに盛り上げる一助となっています。
『愚かな薔薇』について
<あらすじ>
14歳の少女高田奈智は、4年ぶりに磐座(いわくら)の地を訪れた。これから2カ月の間、親戚が経営する旅館で世話になりながら、昼間は磐座城周辺で行われる、あるキャンプに参加することになっている。事情をよく知らぬままこの地を訪れた奈智であったが、到着の翌朝、体の変調を感じ、激しく多量に吐血してしまう。
やがて奈智は、親戚の美影深志や同じキャンプに参加する天知雅樹らから、磐座でのキャンプの目的を聞くことになる。それは、星々の世界――外海に旅立つ「虚(うつ)ろ舟乗り」を育てることであった。虚ろ舟の聖地である磐座に集められた少年少女たちは、徐々に体が変質し、吐血――実は血ではなく、急速に?がれて押し出された古い組織――を繰り返し、やがて、歳をとらない体となる。食べ物もほとんどいらなくなり、心臓に銀の杭を打たない限り、死ぬことはない。そのかわり変質体となると、一定期間、他人の血を飲まないと、死んでしまうという。
変質の過程で初めて他人の血を飲むことを、「血切(ちぎ)り」と呼ぶ。深志は奈智の血切りの相手は自分だと昔から決めていたと言うが、奈智は、他人の血を飲むなどという化け物じみた行為は嫌だと、思い悩む。そんなことなら、虚ろ舟乗りなんかに、なりたくない……と。
【登場人物】
・高田奈智 14歳の少女。
・美影久緒 奈智の母・奈津のいとこ。旅館のおかみ。
・美影深志 久緒の息子。高校生。
・天知雅樹 キャンプ参加者。元からの変質体。
・三上結衣 キャンプ参加者。
・城田英子 深志に思いを寄せる少女。
・城田浩司 英子の弟。奈智の血切り相手となることを画策。
・古城忠之 奈智の父親。行方不明。妻の奈津を殺害したとの噂。
・美影奈津 奈智の母親。奈智が幼い頃に死去。
・トワ 虚ろ舟乗り。
〔用語説明〕
◎「虚ろ舟乗り」少年少女がキャンプで目指す、外海(宇宙)に旅立つ虚ろ舟(宇宙船)の舟乗りのこと
◎「変質体」吐血を繰り返し、やがて歳をとらない体となること
◎「血切り」変質体として生きていくため他人の血を飲むこと
◎「さとばら」初夏が近づくと咲き始める野生のバラ。はまなすに似た小ぶりの花。磐座城の紋章にもなっている
漫画家・萩尾望都さん推薦コメント
「これは21世紀の『地球幼年期の終わり』だ。山間の夏祭りの中で少年や少女が変化していく。
進化なのか? 人類はどこへ向かうのか? 巡る星々。過去と未来。愛、愛はどこへ行くのか?」
――萩尾望都
著者 恩田陸さんコメント
「吸血鬼ってなんなんだろう、と子供の頃からずっと考えていた。
人類の進化の記憶の発露なんじゃないか、とどこかで感じていた。
一方で、うんと狭いところでうんと大きい話を書いてみたいと思っていた。
昨今言われる「グローカル」というのが念頭にあったのかもしれない。
またしても、ものすごく時間が掛かってしまったが、この二つの課題をやり遂げられたのかどうかは、今はまだ自分でもよく分からない。」
――恩田陸
担当編集者コメント
「恩田陸さんが14年の歳月をかけ、『SF Japan』『読楽』と2誌に亘り丹精込めて書かれた物語が形になりました。2代目担当としては、初代担当が恩田さんとともに作ってきた歴史やその重みを感じておりますがーー主人公・奈智の苦悩や成長、そして恩田さんが描かれたミステリアスで魅力的な世界を、萩尾望都さんの美麗な特別カバーイラストとともにお楽しみいただけたら嬉しいです。」
著者プロフィール
著者の恩田陸(おんだ・りく)さんは、1964年生まれ。1992年『六番目の小夜子』でデビュー。
『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、『ユージニア』で日本推理作家協会賞、『中庭の出来事』で山本周五郎賞、『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞を受賞。その他『木漏れ日に泳ぐ魚』『消滅』『ドミノin上海』など著書多数。
愚かな薔薇 恩田陸 (著) ※萩尾望都版カバーは期間限定です |
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