本のページ

SINCE 1991

BTSのRMさんが投稿するやたちまち完売となった『それぞれのうしろ姿』邦訳版が刊行 身近な事物の「うしろ姿」を見つめ思考した、現代美術家による韓国エッセイ

『それぞれのうしろ姿』(著:アン・ギュチョルさん/訳:桑畑優香さん)

『それぞれのうしろ姿』(著:アン・ギュチョルさん/訳:桑畑優香さん)

辰巳出版は翻訳書レーベル「&books」より、BTSのRMさんも読んで話題となった韓国エッセイ『それぞれのうしろ姿』(著:アン・ギュチョルさん/訳:桑畑優香さん)を11月22日に刊行しました。

本書は、うつわや涙、花木など身近な事物の「うしろ姿」を見つめ思考した現代美術家による67のエッセイ&イラストを収録したものです。

 

BTS(防弾少年団)のRMさんが中身を投稿するや大きな話題に!

2021年5月28日午前0時27分、ファンのためのオフィシャルコミュニティWeverseに、アート好きとも知られるBTS(防弾少年団)のRMさんが本の一部を撮影した2枚の写真をコメントなしでシェアすると、瞬く間にARMY(ファン)たちが注目。

写真が『それぞれのうしろ姿』のなかの「植物の時間」だと判明するや、韓国の大手書店・教保文庫での週刊販売量が250倍に激増し、たちまち完売しました。

日本でも本書の予約を開始すると、Amazonのアジア文学カテゴリではベストセラー1位を獲得し注目を集めています。

 
本書は、インスタレーションを多く手掛ける現代美術家、アン・ギュチョルさんが韓国の月刊誌『現代文学』に連載したなかから厳選した67のエッセイとイラストをまとめたもの。

静かな時間のなかで、花木やボール、涙、ねじ釘やホコリなど、普段の生活の中では見過ごされがちなあらゆる事物の「うしろ姿」への思考を綴っています。

 

芸術家の思考を覗きこみ「あらたな視点」に出会う

静かに事物と向き合い心を寄せ綴られた言葉とイラストは、事物たちが息づき、隠れていた姿が浮かびあがります。わたしたちの思考をときほぐし、あらたな視点をもたらすとともに、前向きな気づきも与えてくれます。

 

『それぞれのうしろ姿』より一部抜粋

 
植物の時間

花木だけでなく、冬はあらゆる虫や雑草までもが変わらぬ姿で厳しい時間を耐えている。

だが、わたしたちには、それらを憐れむ資格があるのだろうか。その小さなものたちが無慈悲な自然にあらがわず、岩のように黙々と時を待っているのに、わたしたちはなぜ時を待てずに苦悶し、葛藤するのか。虚しさを何かで埋めるために、じっとしていられないわたしたちの焦りは、植物たちからしたら滑稽に映ることだろう。

言葉の廃墟から

ある言葉を掲げるときには、その意味に対して責任を負うべきだ。おざなりに使うと、結局、言葉を殺してしまうからだ。「新しい」という言葉が指すものが、もはや新しさを失ったとき、わたしたちはその死んだ言葉を捨てて、それに代わる新たな単語を探さなければならない。実現しない空虚なスローガンを掲げ、消耗し捨てられる無数の廃墟のなかで、芸術はむしろ言葉を慎む方法を、いっそ沈黙する方法を学ぶべきかもしれない。

ボール

ボール遊びは、いわばボールのように転がる世界を生き抜くためのレッスンだ。ボールは子供に、世の中の出来事の多くは想定外で意思とは関係なく勝手に進み、予告なしに向きを変えることを気づかせる。不規則のなかの規則性を察知してボールよりも速く動かなければ、勝利を手にできないと。負けを減らすためには、ボールのようになるべきだと。

重力

地球と太陽と月が互いに影響を与え合っていなければ、いまのような世の中は存在しなかっただろう。引き合うことなく遠ざけ合うだけだったり、または引き寄せ合ったりするだけだったりすれば、あるいは互いに無関心で自分の殻に閉じこもってばかりいたら、私たちの日常は存在しなかっただろう。時が来れば一斉に咲く花もなく、たえず押し寄せる波もなかったはずだ。地球と太陽が互いに引き寄せ合いながらも、それぞれ自分の道を進むおかげで、昨日と同じ今日がある。

わたしにとって、昨日と同じ今日を作る存在とは何か。どんな力に導かれて、何の周りを回りながら生きてきたのだろうか。軌道を維持する力はどこから来たのか。そして、わたしは遠くに在る誰かと社会のために、わずかなりとも何かを与えたことが果たしてあっただろうか。

 

本書の目次

はじめに

Ⅰ 植物の時間

II 20個の単語

III 芸術家たちに恩恵を

IV 庭のある家

訳者あとがき

 

著者プロフィール

 
■著者:アン・ギュチョルさん

1955年生まれ。ソウル出身。ソウル大学美術学部で彫刻を学ぶ。その後、美術雑誌の記者を経て、ドイツのシュトゥットガルト美術大学に留学。帰国後は韓国芸術総合学校で教鞭をとり、美術家としても本格的に活動を始める。

本書は月刊誌『現代文学』に11年間連載したなかから、67の文章と絵をまとめたものである。

 
■訳者:桑畑優香(くわはた・ゆか)さん

翻訳家、ライター。早稲田大学第一文学部卒業。延世大学語学堂、ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」のディレクターを経てフリーに。多くの媒体に韓国エンタテインメント関連記事を寄稿。

主な訳書に『韓国映画100選』(クオン)、『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY』(イースト・プレス)、『BTS オン・ザ・ロード』(玄光社)、『家にいるのに家に帰りたい』(&books)ほか多数。

 

それぞれのうしろ姿 (&books)
アン・ギュチョル (著), 桑畑 優香 (翻訳)

2021年5月28日午前0時27分、ファンのためのオフィシャルコミュニティWeverseに、RMが本の一部を撮影した2枚の写真をコメントなしでシェアして話題となった、韓国エッセイの日本語版。

現代美術家のアン・ギュチョルがスケッチブックに記した67のエッセイとイラストは、わたしたちの思考をときほぐすと同時に、前向きな気づきを与えてくれる。

すこしだけ立ち止まってしまっていたあなたへ届けられた、「あらたな視点」をもたらす言葉たち。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です