【第12回辻静雄食文化賞】山根京子さん『わさびの日本史』が受賞
辻静雄食文化財団は5月24日、よりよい「食」を目指し、新しい世界を築き上げた作品や個人を顕彰する「第12回辻静雄食文化賞」の受賞作品・受賞者を発表しました。
辻静雄食文化賞について
辻静雄食文化賞は、食分野の教育と研究に生涯を捧げた辻調グループ創設者・辻静雄さん(1933~1993)の志を受け継ぎ、2010年に創設されました。
同賞は、我が国の食文化の幅広い領域に注目し、よりよい「食」を目指して目覚しい活躍をし、新しい世界を築き上げた作品、もしくは個人・団体の活動を対象に選考し、これに賞を贈るものです。
また特別部門として専門技術者賞を設け、調理や製菓等の現場で活躍する技術者を顕彰しています。
「第12回辻静雄食文化賞」受賞作・受賞者
第12回辻静雄食文化賞の受賞作品・受賞者は次の通りです。
<第12回辻静雄食文化賞 受賞作品>
山根京子(やまね・きょうこ)さん
『わさびの日本史』(文一総合出版)
<受賞理由>
文献を網羅的に調べ上げ、わさびの歴史を広範に紐解いた食文化の本として優れており、日本固有種のわさびを初めて総合的に論じた点が高く評価できる。また、年表や資料も充実し、読んで楽しめる。
<著者と作品について>
わさびは日本の野生植物を栽培化した、数少ない食材の一つ。歴史資料を渉猟し、フィールドワークも組み合わせ、わさびの植物としての由来から、栽培、利用の歴史を綴る。わさびに対する思いと好奇心に満ちた読み物。著者は岐阜大学応用生物科学部准教授、農学博士。
<第12回辻静雄食文化賞 専門技術者賞>
川田 智也(かわだ・ともや)さん
「茶禅華」 エグゼクティブシェフ
第12回辻静雄食文化賞の選考委員は、石毛直道さん(委員長/国立民族学博物館名誉教授、文化人類学者)、鹿島茂さん(フランス文学者)、湯山玲子さん(著述家、プロデューサー)、福岡伸一さん(青山学院大学教授、分子生物学者)、辻芳樹さん(辻調グループ代表、学校法人辻料理学館理事長、辻調理師専門学校校長)、八木尚子さん(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所副所長)。
なお、第12回辻静雄食文化賞の贈賞式は、6月に開催予定。
わさびの日本史 山根 京子 (著) 粒粒辛苦な栽培植物起源学の研究でわかった!歴史ミステリー 一見何でもない野生植物が、いつか栽培植物となる。 和食で使われる野菜といっても,日本発祥の植物はごくわずか。日本の野生植物からうまれた数少ない食材の一つが,ワサビです。DNA解析を駆使する理系女子が『群書類従』など歴史資料に手を伸ばし,栽培ワサビの起源に迫ります。 ・世界唯一?のワサビ研究者,山根京子先生による初めての本。 ・ワサビはほんとに日本固有種か? 中国に乗り込んで調査を始めたら,そっくりな植物があって呆然。でも,ツンとくる辛さをもつのは日本のワサビだけ。やっぱり固有種だった。ほっとした~。 ・日本にしかないこの野生植物が,栽培植物へと変わった現場をつきとめるべく,ピペットを古文書に持ち替えて,歴史的な記録の中にワサビの影を探索開始! ・そんなワサビの影を網羅した「ワサビ年表」つき。堂々30ページ! ・伊藤若冲のかわいい作品「野菜涅槃図」にワサビが描かれてるって知ってましたか? そう言われて絵を見ても,どこにあるのか見つからない! ところが,それが栽培の歴史を示す資料になる。芋づる式に出てくる情報が織り上げるストーリーは,まるで歴史ミステリー。 ・ワサビ栽培の発祥地はおそらく静岡市有東木。しかし,DNAは原産地が山梨,群馬,長野エリアであることを示している。これは何を意味するのだろう? ・「ワサビ応援団長」を自認する山根先生ならではの蘊蓄もちょこちょこ披露。 ・知りたかったのは,ちいさな野生植物を栽培しようと思った先祖の想い。記録のない昔のこと,それはおそらくかなわないけど,少しでも迫りたい。それが栽培植物起源学の心意気。植物の好きな人も,和食に関心のある人も,歴史の好きな人も楽しめる本です。 |
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