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坪田譲治文学賞作家・濱野京子さんが描く、格差社会のラブストーリー『野原できみとピクニック』刊行

濱野京子さん著『野原できみとピクニック』

濱野京子さん著『野原できみとピクニック』

坪田譲治文学賞作家・濱野京子さんのYA小説『野原できみとピクニック』が、偕成社より刊行されました。

 

育った環境が全く違う2人が恋に落ちたら? 2人の恋が現代日本を映しだす!

社会派の児童文学作家として知られる濱野京子さんは、これまで、原発、東日本大震災、難民問題、ヤングケアラーなどさまざまな社会の問題を作品に取り上げて、書き続けてきました。

そんな濱野さんが今回描いたのは「格差社会」のラブストーリー。

 
それまでの公立の小学校、中学校での多様な背景を持つ友人との関わりから、高校進学を機に「自分と考え方や生活環境が似た人」とともに時間をすごす時間が増え、その中である一定の価値観が形成されていく人たちは多いでしょう。

今回の濱野さんの作品は、ふたりの主人公が、互いに「自分とは別世界の人」と思っていた相手と、ふとしたことから出会い、惹かれ合うことからはじまります。

 
「アルバイトでお金を稼ぐ」ことについて「学生だから勉強に専念すべき。なぜ働くの?」と聞いてしまう優弥と、「家計を助けるために働かざるを得ない」稀星(きらら)。

異なる「普通」のうえに立つふたりですが、惹かれ合うからこそ、相手のことを知りたいと思い話すうち、違いを超え一歩近づいて理解しようという想像力が芽生えてきます。

 
ふたりのお互いを思う気持ちは、まわりの友人たちの固定観念にも影響をあたえ、稀星が手伝う「子ども食堂」を中心にして、これまで関わりのなかった、ふたつの高校の生徒もつないでいきます。

越えられないと思う格差であっても、それぞれの人が「一歩」心を寄せて考えてみることで、変えていけるかもしれない ───読後に背中を押してくれる、希望に満ちたYA小説です。

 
<あらすじ>

優弥はある日、繁華街で男子高生に絡まれていたところを、通りかかった稀星に助けられる。裕福な家に生まれ、進学校に通う優弥と、底辺校に通いながら、家計を助けるためアルバイトにいそしむ稀星はお互いの違いにとまどいながらも、しだいに惹かれあっていく。

育ってきた環境が、まったくちがう2人が恋に落ちたら、見える世界はどう変わるのだろう。2人の恋が現代日本を映しだす、格差社会のラブストーリー。

 

著者プロフィール

著者の濱野京子(はまの・きょうこ)さんは、熊本県に生まれ、東京で育つ。『フュージョン』で第2回JBBY賞、『トーキョー・クロスロード』で第25回坪田譲治文学賞を受賞。

作品に『バンドガール!』『石を抱くエイリアン』『アギーの祈り』『with you』『この川のむこうに君がいる』などがある

 

野原できみとピクニック
濱野京子 (著)

スマホをとりだして、ラインを立ちあげ、短いメッセージを打つ。
大好きだよ
向かいのホームに降りると、稀星が手を振っているのが見えた。
優弥はあわててスマホを指さす。
そのとき、くだりの電車が滑りこんできて、稀星の姿が見えなくなる。
電車が動きだすとすぐに、上り電車が入線してきた。
先ほど打ちこんだ文字が、既読に変わった。(本文より)

 


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