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【第40回寺田寅彦記念賞】全卓樹さん『銀河の片隅で科学夜話』が受賞 特別賞に邑田仁さん&水上元さん『牧野植物図鑑原図集』

公益財団法人「高知県文教協会」は、高知県にゆかりのある方による寺田寅彦に関する作品、自然科学を対象とした研究または随筆を対象とした「第40回 寺田寅彦記念賞」の受賞作品を発表しました。

 

第40回寺田寅彦記念賞が決定!

第40回寺田寅彦記念賞の受賞作品は、次の通りです。

 
<第40回寺田寅彦記念賞 受賞作品>

全卓樹(ぜん・たくじゅ)さん
『銀河の片隅で科学夜話』(朝日出版社)

全卓樹さん著『銀河の片隅で科学夜話』

全卓樹さん著『銀河の片隅で科学夜話』

 
【特別賞】
邑田仁(むらた・じん)さん・水上元(みずかみ・はじめ)さん
『牧野植物図鑑原図集』(北隆館)

 
選考委員は、大村誠さん(選考委員長)、榎本恵一さん、岡村眞さん、高野弘さん、津江保彦さん。

 

受賞作『銀河の片隅で科学夜話』について

 
【受賞理由】
「ブラックホールから蟻、蝶、数理物理、倫理学まで多岐にわたる内容が全部で22話。それぞれ1話独立、15分ないし20分で読める長さになっていて、それぞれの話はウィットに富み、驚きがともなっています。家庭ですごす時間が多くなっている昨今、短時間の気分転換としても気軽に読むことができ、さらに読後もしばらく思索の世界に誘われるものと思われます。
自然科学だけでなく、最近の私たちが悩む、多様な構成員をもつ社会全体としての意思決定や、自動運転における責任の所在など、これからの社会のしくみにかかわる、いわゆる理系と文系が重なり合うような話にも引き込まれます。
話題の幅広さと、科学を背景とした語りの巧みさ、これは寺田寅彦の作品に通じると言ってよいでしょう。装丁も美しく、挿絵とあいまって、洗練された雰囲気を醸し出しています。自然科学を対象とした研究・随筆としてきわめて高く評価でき、若者たちにも勧めたい一冊です。」(大村誠選考委員長)

 
<受賞者・全卓樹さん プロフィール>

京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。量子グラフ理論本舗/新奇量子ホロノミ理論本家。ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現在高知工科大学理論物理学教授。著書に『エキゾティックな量子――不可思議だけど意外に近しい量子のお話』(東京大学出版会)などがある。

※ちなみに昨年、同書が第3回八重洲本大賞を受賞した際に行われた全卓樹さんとドミニク・チェンさんの記念対談では、物理学者の書くエッセイについての話題で寺田寅彦について語る場面も。
★前編:https://kangaeruhito.jp/interview/37260
★後編:https://kangaeruhito.jp/interview/37266

 

寺田寅彦記念賞とは

寺田寅彦記念賞は、高知県在住の個人・団体、出版社又は高知県出身者が発表した作品(印刷物)の中から、「(1)寺田寅彦に関係した作品」もしくは「(2)自然科学を対象とした研究・ 随筆」を対象とします。

文学的研究、地学・天文学、海洋学や環境生態学に関係した科学的研究および随筆、寅彦の遺品資料による研究や随想、肉親による追想といった作品がこれまでに受賞しています。

 
<寺田寅彦について>
1878年‐1935年。東京生まれ(高知県出身)。熊本の五校で夏目漱石に英語を習う。東大物理学科を卒業し、ヨーロッパ留学後、東大教授。理化学研究所、東大地震研究所の研究員としても活躍。物理学者であり、俳人、随筆家。物理学者としては、初期にX線に関する研究を行い、学士院恩賜賞受賞。文学者としては主に随筆を執筆。

 

銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異
全卓樹 (著)

大森望さん推薦!
「明晰でわかりやすく、面白くて叙情的。
科学と詩情。
ここにはSF100冊分のネタが詰まっている。」

一日の長さは一年に0.000 017秒ずつ伸びている。
500億年のちは、一日の長さは今の一月ほどになるだろう――

空想よりも現実の世界のほうがずっと不思議だ、と感じるような、物理学者のとっておきのお話を22、集めました。

・流れ星はどこから来る?
・宇宙の中心にすまうブラックホール
・真空の発見
・じゃんけん必勝法と民主主義の数理
・世論を決めるのは17%の少数者?
・忘れられた夢を見る技術
・反乱を起こす奴隷アリ
・銀河を渡る蝶
・飛び方を忘れた鳥にそれを教える…

真夜中の科学講座のはじまり、はじまり。

ほんのひととき、日常を忘れて、科学世界の詩情に触れてみませんか?
科学や文学が好きな人へのプレゼントにもぜひ。

「夜話と名乗ってはいるが、朝の通勤電車で、昼休みのひとときに、ゆうべの徒然の時間に、順序にこだわらず一編ずつ楽しんでいただければと思う。」――著者

牧野植物図鑑原図集
牧野図鑑刊行80年記念出版編集委員会 (著)

1940年に出版された『牧野日本植物図鑑』は、それまでの日本の近代植物学50年を牽引してきた“大牧野”による総まとめであった。同時に、決して牧野富太郎一人の手による著作ではなく、当時の植物学会の英知を結集した出版物でもあった。果たして現在まで後継版が愛され続ける牧野図鑑の魅力はいかにして生み出されたのか? 世界的植物学者・牧野富太郎と、牧野が最も信頼を寄せた植物画家・山田壽雄による図鑑の原図から見えてくる、わが国の金字塔的出版物・牧野図鑑の成り立ちを、門外不出の図版の数々によって解き明かしていく。 「今回本書では、このような多くの関係者を魅了した牧野図鑑の魅力を、その成立期にさかのぼって紐解きたいと考えた。後述する主に時間的な事情から、本書は大きく二つの柱で構成することとした。一つは北隆館に現存する牧野富太郎本人が描画した『牧野日本植物図鑑』の原図を全点紹介することで、その際に図が描画された背景が読み取れるものについてはできる限り言及した。二つめは東京大学総合研究博物館で発見された植物画家・山田壽雄の彩色画と、同じく山田が描いた牧野図鑑の原図を比較する試みである。牧野図鑑の原図の元となる植物画がそのような事情で描かれたのか、それらの試みがどのように後の牧野図鑑として形を成したのか解説した(邑田 仁「はじめに」より)」

 
【関連】
寺田寅彦記念賞 – 高知県文教協会

 


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