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『最高のコーチは、教えない。』才能を120%引出し、圧倒的成果を出す方法

吉井理人さん著『最高のコーチは、教えない。』

吉井理人さん著『最高のコーチは、教えない。』

吉井理人さん著『最高のコーチは、教えない。』が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより刊行されました。

 

上司が教えないほうが、部下が活躍する理由

元メジャーリーガーの吉井理人さんの現役時代というと、負けん気の強さで打者を抑え込むイメージがあります。しかも、その姿勢はベンチでも変わらず、首脳陣との衝突が何度かあったことは本人も認めています。

意外なことに、そんな吉井さんがコーチとしての存在感を示しています。先日、日本ハムのコーチを辞任しましたが、その直後、投手力強化が急務のロッテからコーチ就任を要請されたことをみても、いまの日本球界でトップクラスのコーチと言っても良いでしょう。

 
実は、吉井さんが現役時代は、選手のマイナス面だけをあれこれ言ってくるタイプや、自慢話をするだけのコーチが大嫌いで、コーチとはレベルの低い人間がやるものだとさえ思っていたと言います。

しかし、2007年に引退後、当時の代理人に強くすすめられ、コーチになることを決断。その後、筑波大学大学院でコーチング理論を学びながら、コーチのキャリアを積み重ね、独自のコーチング理論を確立しています。

 
本書では、吉井さんのコーチング理論を明らかにしつつ、それらをビジネスシーンでも応用できるように解説しています。野球界とビジネス界は、従来のやり方が通用しなくなっているという点では、まったく同じ状況と言えるからです。

吉井さんが目指す究極のコーチ像は、コーチングの結果、相手が何でも一人でできるようになり、はた目からみるとサボっているようにしか見えないコーチであると言いいます。

以下に、本書の内容の一部を再編集して紹介します。ぜひ、コーチと選手を、上司と部下の関係に置き換えて読んでみてください。

 

日本のコーチは教えることが仕事だと誤解している

「日本のコーチと選手は、師弟関係に近い間柄だと思います。ですから、コーチが「俺のようになれ」と教えるのは必然と言えるかもしれません。しかしこれでは、コーチのミニチュアを再生産するだけで、選手の持つ個性が消され、本来持っていたはずの本当の力は出てこないと思っています。

そもそも、コーチと選手の感覚や常識は違うのがあたりまえで、その差異について話し合う機会もなく、強制される指導法には限界があります。しかも、納得できないまま強制されることで、選手自身が目的を見失ってしまう事態になりかねません。」

 

メジャーのコーチに言われた驚きのひとこと

「「おまえ以上におまえのことを知っているのは、このチームにはいない。だから、おまえのピッチングについて、俺に教えてくれ。そのうえで、どうしていくのがベストの選択かは、話し合いながら決めていこう」これは、メッツへ移籍した時にコーチにかけられた言葉です。いままでコーチからそんなことを言われたことはなかったので、たいへん驚きました。

日本のコーチは自分の尺度で選手を指導しますが、メジャーのコーチは選手のやりたいピッチングを理解した上で、その方向性に沿ったアドバイスをしようと考えているのがわかりました。このひとことだけで、この国でやっていけそうな気がしました。」

 

相手の能力を最大限引き出すコーチングのコツは

「コーチングが目指すのは、選手がコーチの言いなりになる状況ではなく、自分で考え、課題を見つけ、実行する習慣を身につけることにあります。そのために『観察』『質問』『代行』という3つの行動が、コーチングの基本となります。

まず『観察』とは、よく見たり、話し合いを通じて、選手がどのようなタイプなのかを見極めることです。さらに、選手のタイプによって接し方を変える必要があります。

次は『質問』です。コーチングでは「選手に主体がある」という大前提があります。ですから「やれ」ではなく、「どうしたい?」と選手に質問することがポイントになります。質問という手法は回りくどいようですが、自分自身で気づいてもらうことがとても重要なのです。これによって、選手に自己客観視する習慣が身につき、信頼関係が構築できるからです。

最後の『代行』とは「自分ならこうする」ではなく、「その選手だったらどうするか」という視点を持つことです。自分ができることは、他人もできると思い込んでしまいがちなコーチが多いのですが、相手がどう受け止めるかを第一に考えなければいけません。一番高いパフォーマンスが出せるやり方は人によって違うわけです。」

 

ID野球だけではなかった野村監督の真骨頂

「現役時代、野村克也さんが監督をしていたヤクルトに移籍しましたが、信頼関係を作るのがとてもうまい人でしたね。私が打ち込まれても、また同じ場面でよく使ってくれました。監督はけして何も言いませんでしたが、そういうことが続くと、自分を信頼してくれていると自然と思えるようになるものです。

また、野村監督というとID野球が有名ですが、僕の印象は少し違います。実際、監督は「いつもデータ通りに投げろとは言わない。データはピンチでパニックになったときに、まだ対処法があるから大丈夫と思う材料に使ってもらえばいい」とよく言っていました。

プロであってもデータ通りに投げることは難しいことです。それよりは、まずは、自分の得意な球を投げて抑えた方が調子も上がっていきます。ですから、野村監督が選手にデータ通りに投げてほしいときは「俺がすべて責任をとる」と明言していました。

その意味では、普段の野村監督は「最後はわしがいるから、好きにせえ」というタイプでしたね。野村監督に心酔する選手が多い理由がわかります。」

 

本書の目次

第1章 なぜ、コーチが「教えて」はいけないのか
相手と自分の経験・常識・感覚がまったく違う
「上から力ずく」のコミュニケーションがモチベーションを奪う
「余計なひと言」が集中力を奪う
「悪いアドバイス」がパフォーマンスを低下させる
一方的な指導方針が、現場を混乱させる
コラム:影響を受けた指導者1 自分で考えさせる~箕島高校・尾藤公監督

第2章 コーチングの基本理論
主体は選手。個が伸びれば組織は強くなる
専門的な技術・知識を教える「指導行動」
心理的・社会的な成長を促す「育成行動」
成長を促す「課題の見つけ方」を指導する
「振り返り」で課題設定の正しさを常に検証する
パフォーマンスを最優先する「プロ意識」を植えつける
相手の性格に応じてコーチングを変える
四つのステージで指導方法を変える「PMモデル」
「初心者(新人)」は、まず指導行動で技術を鍛える
「中級者(若手)」は、モチベーションをケアしつつ、技術的な課題もサポートする
「中上級者(中堅)」は、プライドを損ねないように心構えをつくる
「上級者(一流・エース)」は、寄り添いつつ信頼関係を維持する
常に相手を観察し、四つのステージを見極める
コラム:影響を受けた指導者2 心をうまくつかむ~仰木彬監督

第3章 コーチングを実践する
コーチング三つの基礎「観察」・「質問」・「代行」
「観察」は相手の特徴を徹底的にリサーチしたうえで行う
「質問」は余計なことを話さないように注意する
「質問」の狙いは「自己客観視」と「信頼関係の構築」
「代行」によって、相手の立場に憑依する
一対一で振り返りミーティングを行う
相手の強みを知り、強みを伸ばす
成長のために、自ら課題を設定させる
自分で問題を解決する思考回路を持たせる
仮定の議題について議論し、思考力を鍛える
コラム:影響を受けた指導者3 一貫して重要な機会を任せる~野村克也監督

第4章 最高の結果を出すコーチの9つのルール
ルール1 最高の能力を発揮できるコンディションをつくる
ルール2 感情をコントロールし、態度に表さない
ルール3 周りが見ていることを自覚させる
ルール4 落ち込んだときは、すぐに切り替えさせる
ルール5 上からの意見をどう現場に伝えるか考える
ルール6 現場メンバーの的確な情報を上層部に伝える
ルール7 目先の結果だけでなく、大きな目的を設定させる
ルール8 メンバーとは適切な距離感を持って接する
ルール9「仕事ができて、人間としても尊敬される」人を育てる
コラム:影響を受けた指導者4プレッシャーがないと成長できない~ボビー・バレンタイン監督

 

吉井 理人さん プロフィール

著者の吉井理人(よしい・まさと)さんは、1965年生まれ。和歌山県立箕島高等学校を卒業。千葉ロッテマリーンズ投手コーチ。筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学博士前期課程修了。

1984年に大阪近鉄バッファローズに入団。翌1985年に一軍投手デビュー。1988年には最優秀救援投手のタイトルを獲得。1995年、東京ヤクルトスワローズに移籍、先発陣の一角として活躍し日本一に貢献。1997年オフにFA権を行使して、メジャーリーグのニューヨーク・メッツに移籍。1998年、日本人メジャーリーガーとして史上二人目の完投勝利を達成。1999年には、日本人初のポストシーズン開幕投手を担った。2000年はコロラド・ロッキーズ、2001年からはモントリオール・エキスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)に在籍。2003年、オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バッファローズ)に移籍し、日本球界に復帰。2007年に現役引退。

2008~2012年、北海道日本ハムファイターズの投手コーチに就任し、2009年と2012年にリーグ優勝を果たす。2015年、福岡ソフトバンクホークスの投手コーチに就任して日本一に、2016年には北海道日本ハムファイターズの投手コーチとしてチームを日本一に導く。2018年シーズン終了後、千葉ロッテマリーンズ投手コーチ就任。

 

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ビジネスに役立つ 超一流コーチング

どうすれば相手のモチベーションを高め、能力を引き出し、高い成果を挙げることができるのか。メンバーを成長させることができるのか。
この本では、個人の能力を最大限に引き出し、高い成果を挙げる方法を紹介する。
その方法は、「教える」のではなく、自分の頭で考えさせるように質問し、コミュニケーションをとる「コーチング」という技術だ。

 
【出版社からのコメント】
「おまえ以上におまえのことを知っているのは、このチームにはいない。
だから、おまえのピッチングについて、俺に教えてくれ。
そのうえで、どうしていくのがベストの選択かは、話し合いながら決めていこう」
驚いた。コーチからそんなことを言われたことがなかったからだ。

日本では、コーチが自分の尺度で選手を見て、自分の尺度に合わなければ自分がやってきたように修正するのが一般的だ。
アポダカコーチは、僕がどんなピッチングをする投手で、どんなピッチングをやりたいかをはじめに聞いてくれ、その方向性に沿ったアドバイスをしようと考えてくれた。

コーチの仕事は、選手が自分で考え、課題を設定し、自分自身で能力を高められるように導くことだ。
本書のタイトル『最高のコーチは教えない』には、「指導者=教える人」という常識を覆さないと、メンバーの能力を最大限に発揮させることはできない、という思いが込められている。

本書では、「教える」のではなく、「考えさせる」僕のコーチング理論と、実践方法を紹介する。
僕が取り組んできたのはプロ野球選手のコーチングだが、これはどのような世界でも通用する手法だと考えている。

部下の指導方法に悩む上司の方や、チームの育成を任されたリーダーのお役に立てば幸いだ。
ぜひお読みいただき、ご自分の世界に変換し、試してみてほしい。
(「はじめに」より一部抜粋)

 


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