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【訃報】イタリア文学者・河島英昭さんが死去 『薔薇の名前』の翻訳など

イタリア文学者で東京外国語大名誉教授の河島英昭(かわしま・ひであき)さんが5月25日、脳梗塞のため群馬県高崎市の病院で死去しました。84歳。東京都出身。告別式は5月29日午後0時半から高崎市下之城町650の「下之城プリエッセ」で。喪主は妻の栄子さん。

 
河島英昭さんは、1933年生まれ。東京外国語大学イタリア語科卒業。同大学で助手、講師、助教授などを経て、1979年に教授に就任。1996年より名誉教授。

ウンベルト・エーコのベストセラー『薔薇の名前』や『パヴェーゼ文学集成』(全6巻)、『君主論』『デカメロン』など、多くのイタリア文学作品を翻訳。『薔薇の名前』の翻訳で日本翻訳文化賞を受賞しています。

2006年には著書『イタリア・ユダヤ人の風景』で読売文学賞を受賞。ほかの著書に『氷河と蝶 イタリア旅想』『イタリアをめぐる旅想』『叙事詩の精神 パヴェーゼとダンテ』『ローマ散策』『めぐりくる夏の日に』など。

 

薔薇の名前〈上〉
中世イタリアの修道院で起きた連続殺人事件。事件の秘密は知の宝庫ともいうべき迷宮の図書館にあるらしい。記号論学者エーコがその博学で肉づけした長編歴史ミステリ。全世界で異例の大ベストセラーとなった話題作。

 
イタリア・ユダヤ人の風景
ファシズムとナチズムの交錯する第二次大戦下のイタリア。戦場から離れた都市の片隅で、戦火とは異なるもう一つの暴力が多くの無辜の命を奪おうとしていた。どのような運命がイタリアのユダヤ人たちに襲いかかり、何が彼らの命運を分けたのか…。著者はローマ、ヴェネツィア、トリエステ、フェッラーラをめぐり、その沈黙する街路に立って、苦難に生き、闘い、斃れた彼らの声に耳を澄ます。イタリア社会の深部を、ひそやかに、しかし滔々と流れ続けてきたユダヤ人とその文化の水脈をたどる旅。

 
めぐりくる夏の日に
東京・大森で生まれた著者は、一家で疎開した北上川のほとりで敗戦を迎え、帰るべき家を失ったまま盛岡中学に進学する。無垢な目に映った戦前の東京、次第に濃さを増してゆく戦争の影と国民学校同級生との別れ、そして見知らぬ土地での体験とさらなる別れ…。のちにイタリア文学研究の道に進んだ著者は、見えない糸に導かれるように、そこに新たな同級生たちを見出してゆく。皇国少年のあの日々を、そして混沌のなかでの成長の日々を、静かな筆致で回想する。

 


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