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【第46回サントリー学芸賞】牧野百恵さん、萬代悠さん、片岡真伊さん、呉孟晋さん、柴田康太郎さん、渡辺将人さん、小林亮介さん、中村達さんが受賞

公益財団法人サントリー文化財団は、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をした人物に贈る「第46回サントリー学芸賞」の受賞者・対象作品を発表しました。

 

第46回サントリー学芸賞が決定! 4部門計8名が受賞

第46回サントリー学芸賞では、2023年1月以降に出版された日本語の著作を対象に「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門において各選考委員より優れた作品が推薦され、2回にわたる選考委員会での審議を経て、受賞者および作品が次の通り決定しました。

なお、贈呈式は12月9日(月)に東京で開催される予定です。

 
<第46回サントリー学芸賞 受賞者・対象作品>

〔政治・経済部門〕
◎牧野百恵(まきの・ももえ)さん〔日本貿易振興機構アジア経済研究所開発研究センター主任研究員〕
『ジェンダー格差 ―― 実証経済学は何を語るか』(中央公論新社)

◎萬代悠(まんだい・ゆう)さん〔法政大学経済学部准教授〕
『三井大坂両替店(みついおおさかりょうがえだな) ―― 銀行業の先駆け、その技術と挑戦』(中央公論新社)

〔芸術・文学部門〕
◎片岡真伊(かたおか・まい)さん〔国際日本文化研究センター准教授、総合研究大学院大学准教授(併任)〕
『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題 ―― 文化の架橋者たちがみた「あいだ」』(中央公論新社)

◎呉孟晋(くれ・もとゆき)さん〔京都大学人文科学研究所准教授〕
『移ろう前衛 ―― 中国から台湾への絵画のモダニズムと日本』(中央公論美術出版)

〔社会・風俗部門〕
◎柴田康太郎(しばた・こうたろう)さん〔早稲田大学総合人文科学研究センター次席研究員〕
『映画館に鳴り響いた音 ―― 戦前東京の映画館と音文化の近代』(春秋社)

◎渡辺将人(わたなべ・まさひと)さん〔慶應義塾大学総合政策学部、大学院政策・メディア研究科准教授〕
『台湾のデモクラシー ―― メディア、選挙、アメリカ』(中央公論新社)

〔思想・歴史部門〕
◎小林亮介(こばやし・りょうすけ)さん〔九州大学大学院比較社会文化研究院准教授〕
『近代チベット政治外交史 ―― 清朝崩壊にともなう政治的地位と境界』(名古屋大学出版会)

◎中村達(なかむら・とおる)さん〔千葉工業大学未来変革科学部助教〕
『私が諸島である ―― カリブ海思想入門』(書肆侃侃房)

 
【選考委員】

◎政治・経済部門:大竹文雄さん(大阪大学特任教授)、田所昌幸さん(国際大学特任教授)、土居丈朗さん(慶應義塾大学教授)、細谷雄一さん(慶應義塾大学教授)、牧原出さん(東京大学教授)、待鳥聡史さん(京都大学教授)

◎芸術・文学部門:池上裕子さん(大阪大学教授)、岡田暁生さん(京都大学教授)、ロバート キャンベルさん(早稲田大学特命教授)、沼野充義さん(名古屋外国語大学教授)、野崎歓さん(放送大学教授)、三浦篤さん(大原美術館館長)

◎社会・風俗部門:伊藤亜紗さん(東京科学大学教授)、井上章一さん(国際日本文化研究センター所長)、片山杜秀さん(慶應義塾大学教授)、玄田有史さん(東京大学教授)、佐藤卓己さん(常置大学教授)、武田徹さん(ジャーナリスト、評論家)

◎思想・歴史部門:宇野重規さん(東京大学教授)、岡本隆司さん(早稲田大学教授)、苅部直さん(東京大学教授)、熊野純彦さん(放送大学特任教授)、堂目卓生さん(大阪大学教授)、藤原辰史さん(京都大学准教授)

 
受賞者略歴は、https://www.suntory.co.jp/news/article/14700-2.html を、
選評は、https://www.suntory.co.jp/news/article/14700-3.html をご覧ください。

 

サントリー学芸賞について

サントリー学芸賞は、1979年に創設。サントリーの創業80周年を記念して同年に設立されたサントリー文化財団(https://www.suntory.co.jp/sfnd/)が主催する学術賞です。

「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門に分かれ、毎年、前年1月以降に出版された著作物を対象に選考し、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をされた方を顕彰します。

選考に際しては、個性豊かで将来が期待される新進の評論家、研究者であること、本人の思想、主張が明確な作品であることに主眼が置かれています。また、代表候補作品だけでなく、これまでの一連の著作活動の業績を総合して選考の対象としています。

なお、2018年2月のサントリー文化財団設立40周年を機に、人文学・社会科学分野における既存の枠組にとらわれない自由な評論・研究活動のさらなる発展を願い、副賞を従来の200万円から300万円に増額しています。

 
<公益財団法人サントリー文化財団について>

サントリーの創業80周年を記念して1979年2月に大阪で設立。以来、わが国の国際化、情報化の時代に応えて、社会と文化に関する学術研究の助成、これらの分野における優秀な人材の育成をめざし、わが国および世界の学術文化の発展に寄与することを目的に事業を進めています。

★ホームページ:https://www.suntory.co.jp/sfnd/

 

ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか (中公新書)
牧野 百恵 (著)

歴史・文化・社会的に形成される男女の差異=ジェンダー。その差別は近年強い批判の対象だ。本書は、実証経済学の研究から就業、教育、政治、解消後の可能性について、国際的視点から描く。議員の女性枠導入=クオータ制が、質の低下より無能な男性議員排除に繋がる、女性への規範が弱い国ほど高学歴女性が出産するエビデンスなどを提示。旧来の慣習や制度について考える。

三井大坂両替店-銀行業の先駆け、その技術と挑戦 (中公新書)
萬代 悠 (著)

元禄四年(一六九一)に三井高利が開設した三井大坂両替店。元の業務は江戸幕府に委託された送金だったが、その役得を活かし民間相手の金貸しとして栄えた。本書は、三井に残された膨大な史料から信用調査の技術と、当時の法制度を利用した工夫を読み解く。そこで明らかになるのは三井の経営手法のみならず、当時の社会風俗や人々の倫理観だ。三井はいかにして日本初の民間銀行創業へとつながる繁栄を築いたのか。

日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題-文化の架橋者たちがみた「あいだ」 (中公選書)
片岡 真伊 (著)

日本文学は「どうしても翻訳できない言葉」で書かれてきた、と大江健三郎は言う。事実、谷崎も川端も三島も、英訳時に改変され、省略され、時に誤読もされてきた。なぜそのまま翻訳することができないのか。どのような経緯で改変され、その結果、刊行された作品はどう受け止められたのか。一九五〇~七〇年代の作家、翻訳者、編集者の異文化間の葛藤の根源を、米クノップフ社のアーカイヴ資料等をつぶさに検証し、初めて明らかにする。

目次より
序章  日本文学翻訳プログラムの始まり――ハロルド・シュトラウスとクノップフ社
第一章 日本文学の異質性とは何か――大佛次郎『帰郷』
第二章 それは「誰が」話したのか――谷崎潤一郎『蓼喰う虫』
第三章 結末はなぜ書き換えられたのか――大岡昇平『野火』
第四章 入り乱れる時間軸――谷崎潤一郎『細雪』
第五章 比喩という落とし穴――三島由紀夫『金閣寺』
第六章 三つのメタモルフォーゼ――『細雪』、「千羽鶴」、川端康成
第七章 囲碁という神秘――川端康成『名人』
終章  日本文学は世界文学に何をもたらしたのか――『細雪』の最後の二行

移ろう前衛
呉 孟晋 (著)

中国、台湾、そして日本をめぐるモダニズム美術の近現代
政治動向と不可分に展開してきた20 世紀の中国と台湾の現代美術において、日本とのかかわりも交えて俯瞰的に通覧することで、東アジアの近現代美術史に新たな視点をもたらす気鋭の論集。ともすれば一国主義中心に傾きがちな美術史観ではとらえきれない美術作品と美術運動について精緻に検証する。

映画館に鳴り響いた音: 戦前東京の映画館と音文化の近代
柴田 康太郎 (著)

かつてスクリーンを取り巻いていた、多彩な音のありようを拾い集めるかつてない試み!

映画館ではスクリーンの沈黙を覆い隠すように、サイレント時代から現代にいたるまでさまざまな音響が響き続けてきた。「サイレント映画」の時代にはサイレント映像に弁士や楽隊が実演で音響実践を行なっていたが、その後のサウンド映画の時代にはサイレント映像に録音で音響を流すようになった。しかしスクリーンの前に聞こえてくる音響の種類が変わったということだけではない。映像そのものも変化するなかで、映像がともなう音響も、映像と音響の関係性も変化してきたのである。
サイレント映画の時代、日本の映画館では弁士(あるいは説明者、解説者)と呼ばれた語り手が台詞や解説を語り、音楽家たちが映画の伴奏音楽を生演奏していた。この音楽家たちは映画の上映中だけでなく、上映の合間に余興演奏を行なう場合もあった。当時の映画館は洋楽受容の拠点として、西洋音楽が鳴り響いたことはよく知られているが、それだけではなく、囃子鳴物、長唄、琵琶唄、浪花節、義太夫節、新内節、さらには西洋音楽と日本音楽が折衷された和洋合奏という合奏形式も人気を博していた。しかし、現代の日本の映画やドラマで日本音楽が出てくることはきわめて稀である。むしろオーケストラが流れている方が耳馴染みがあるような気さえする。それほど西洋音楽的な音楽語法が現代の映画体験にとって標準になっている。
本書では、サイレント時代からトーキー初期の日本の映画館でスクリーンを前にどのような音が鳴り響いたのかを問い、それが歴史のなかでどのような音文化を織りなしていたかを明らかにしようとする試みである。具体的には戦前の東京の事例を手がかりに、日本の映画館における音文化の歴史を多角的に明らかにする。
残された言説や限られた資料をつぶさに掘り起こし、日本映画と外国映画、弁士と楽士、邦楽と洋楽、実演とレコードなど、様々な事象が入り交じって豊穣な文化を作り出していた実態を描き出した力作。

台湾のデモクラシー-メディア、選挙、アメリカ (中公新書)
渡辺 将人 (著)

権威主義体制が長く続いた台湾。1996年に総統の直接選挙が始まり、2000年には国民党から民進党への政権交代が実現した。今や「民主主義指数」でアジア首位に立つ。中国の圧力に晒されながら、なぜ台湾の民主主義は強靭なのか。また弱点はどこにあるか。白熱する選挙キャンペーン、特異なメディア環境、多様な言語と文化の複雑さ、そしてあらゆる点で大きな影響を及ぼすアメリカとの関係に注目し、実態を解き明かす。

近代チベット政治外交史―清朝崩壊にともなう政治的地位と境界
小林 亮介 (著)

仏教を介して中国と特別な関係を結び、広大な領域を治めたダライ・ラマ政権。東アジア国際秩序の構造転換を前に、彼らは勢力を維持すべくいかに行動したのか。そこで主張された「独立」「自治」の意味とは何か。現代に至るチベット問題の起源を、チベット語を中心とする貴重な一次史料にもとづき究明した画期的成果。

私が諸島である カリブ海思想入門
中村達 (著)

この海の下で我々は手を取り合う――。

カリブ海思想について新たな見取り図をえがく初の本格的な入門書。

西洋列強による植民地支配の結果、カリブ海の島々は英語圏、フランス語圏、スペイン語圏、オランダ語圏と複数の言語圏に分かれてしまった。それらの国々をそれぞれ孤立したものとしてではなく、諸島として見るということ。カリブ海をひとつの世界として認識し、その独自の思想を体系化する画期的著作。これからのカリブ海思想研究のためのリーディングリストを付す。

「web侃づめ」の大好評連載が大幅増補され、ついに書籍化! カリブ海思想研究の俊英による待望のデビュー作。

「私が目指すのは、「カリブ海思想には独自の歴史がある」ということをお見せすることだ」(中村達)

 
【関連】
第46回 サントリー学芸賞 受賞者略歴
第46回 サントリー学芸賞 選評

 


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