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漫画家・今日マチ子さん初めてのエッセイ集『きみのまち 歩く、旅する、書く、えがく』が刊行

漫画家・今日マチ子さん初のエッセイ集『きみのまち 歩く、旅する、書く、えがく』がrn pressより刊行されました。

 

2023年の5月、「GWはどこへ行きましたか?」と聞かれた。挨拶のことばが「コロナ」から「旅」になった。

《2023年の5月、「GWはどこへ行きましたか?」と聞かれた。挨拶のことばが「コロナ」から「旅」になった。自分の人生に現れた、一瞬の晴れ間のようなこの機会を忘れないようにしようと思う。また困難のなかにあるとき、支えてくれるかもしれないから。》
(本文より)

 
2024年、社会を見渡すと、コロナ禍で「旅」がタブーのようになっていた時期が遠い昔のように思えます。

今日マチ子さんはコロナ禍を描き続け、人気シリーズとなった「#stayhome日記」3部作が2023年に完結。そんな今日マチ子さんが次に描くのは「旅ができる日々」。

ようやく自由に旅ができるようになった喜びを噛み締めるように、台北―台中―台南―高雄という台湾旅、伊勢、京都、仙台、つくば、金沢……という街を巡りました。

異国の地で感じる想い、普段の生活とは違う高揚感。旅を通して感じた記録を、初めてのエッセイ集として上梓しました。街や人を描いたイラストも66点収録。

 

本書「台北」より

コロナ禍で、絵日記を始めたのは二〇二年春のことだ。あらゆる移動が制限された。海外旅行はもちろんできなくなった。国内旅行でさえ困難になり、隣県に行くだけでも神経をとがらせなければいけなかった。公園に行っても遊具の使用は禁止されていたし、ベンチに座って飲食することも許されなかった。ただ、近所を徘徊するくらいしかできなかったのだ。そんな日々を絵に描いた。世の中は常にイライラしていて、何をしても怒られる。いつか終わりが来ることだけが希望だった。パンデミックはきっと一年で収まるだろう。

 
絵日記を出版することになったとき、「最終ページは二○二一年の春で、旅行先の台湾で楽しそうにしている絵にしよう」と考えた。バンデミックの移動制限が解かれたら、台湾へ行く。なぜ台湾だったのか、正直なところわからないけど、たぶん、親戚の家のような海外に行きたかったのだと思う。一時期、近しい人間が台湾で仕事をしていたこともあり、私にとってはとても身近な国だった。出張のたびにカラスミやパイナップルケーキなお土産にもらって、夢中で食べた。気負うことなく、いままでの苦労を吹き飛ばせる場所。何より、ご飯が最高においしい。

 
つらい一年になるだろうけど、台湾の絵を描くまでがんばろうと思った。不安から解き放たれるそのときまで。

 
ところが、ハンデミックは二〇二一年、二〇二二年になっても終わらなかった。日々を描いた絵日記は、『Distance わたしの#stayhome日記」、『Essential わたしの#stayhome日記 2021-2022』と続き、二〇三年春にようやく『From Tokyo わたしの#stayhome日記2022-2023』で幕を閉じ た。合計三年、三冊だ。でも『From Tokyo』の最期に台湾の絵を入れることができなかった。海外渡航が本当に自由になったのはその後だったからだ。だから、コロナ絵日記の締めくくりと、新しい時代のスタートとして、旅の本を作ろうと思った。
コロナ前は当たり前だったが、ようやく日常に戻ってきた。旅ができる喜びを、まず台湾で感じたかった。三年も待ったのだ!

 

著者プロフィール

今日マチ子(きょう・まちこ)さんは、漫画家。東京都出身。東京藝術大学、セツ・モードセミナー卒業。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。

2006年と2007年に『センネン画報』が文化庁メディア芸術祭「審査委員会推薦作品」に2年連続で選出。2010年に『cocoon』、2013年に『アノネ、』がそれぞれ、文化庁メディア芸術祭「審査委員会推薦作品」に選出。2014年に『みつあみの神様』で手塚治虫文化賞新生賞、2015年に『いちご戦争』で 日本漫画家協会賞大賞(カーツーン部門)を受賞。。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞を受賞。

その他の作品に『みかこさん』『かことみらい』『U』『5つ数えれば君の夢』『かみまち』『すずめの学校』など多数。

 

 


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