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生誕150周年!泉鏡花の精髄8篇を東雅夫さんが選出『外科室・天守物語』が刊行 代表作『歌行燈・高野聖』はKindle Unlimitedで期間限定読み放題に

新潮社は生誕150周年を迎える泉鏡花の、知られざる名作から代表作を収めたオリジナル・アンソロジー『外科室・天守物語』を刊行しました。

 

生誕150周年! アンソロジスト東雅夫さんが選び抜いた泉鏡花の精髄8篇

1873年、現在の石川県金沢市生まれ。1895年発表の「夜光巡査」「外科室」で作家としての地歩を確立した泉鏡花は、その後、浪漫的・神秘的作風に転じました。

その多岐にわたる作品群から鏡花を敬愛する名アンソロジスト、東雅夫さんが傑作を精選したのが本書になります。

 
三島由紀夫をして「さるにても鏡花は天才だった。時代を超越し、個我を神化し、日本語としてもっとも危きに遊ぶ文体を創始して、貧血した日本近代文学の砂漠の只中に、咲きつづける牡丹園をひらいた」(『日本の文学4 尾崎紅葉・泉鏡花』解説より)と言わしめた文豪・泉鏡花が紡いだ、怪奇、幻想、耽美の世界をぜひ味わってください。

 
<『外科室・天守物語』概要>

私はね、心に一つ秘密がある――。伯爵夫人手術時に起きたある事件、坂東玉三郎監督の映画でも知られる「外科室」。眷族を伴として姫路城天守閣に棲む妖姫が若き武士と邂逅する戯曲「天守物語」は現在まで幾度も舞台化されています。

不朽の名作二作に加えて、故郷金沢を情感ゆたかに描く怪異譚『霰ふる』。三島由紀夫が絶賛した絶筆「縷紅新草」。そして「化鳥」「高桟敷」「二三羽――十二三羽」「絵本の春」を収めました。

東雅夫さんが作品を厳選の上、難解な用語にそれぞれ丁寧な注解を加えています。さらに本書のカバーを飾るのは、2023年、京都国立近代美術館と東京ステーションギャラリーで開催された「甲斐荘楠音の全貌」で大いに注目を集めた画家、甲斐荘楠音1917年の作品「秋心」。鏡花と楠音という新たな組み合わせは間違いなく話題を呼ぶことでしょう。泉鏡花の入門書としても最適の一冊がここに誕生しました。

 

読み放題キャンペーン開催

新潮社は、『外科室・天守物語』の発売を記念し、Amazonの提供する電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」で泉鏡花著『歌行燈・高野聖』を期間限定読み放題の対象とします。

 
『歌行燈・高野聖』は、幽谷に非現実境を展開する「高野聖」ほか、豊かな語彙、独特の旋律で綴る浪漫の名作『「歌行燈」「女客」「国貞えがく」「売色鴨南蛮」を収録。日本語の表現力の極致を体感できる作品集です。

 
■対象作品:『歌行燈・高野聖』(新潮文庫)

■実施書店:Kindle

■実施期間:2023年11月30日まで

★作品URL:https://amzn.to/3SmVCNg

 

著者プロフィール

泉鏡花(いずみ。きょうか)は、1873(明治6)年生まれ、金沢出身。本名・鏡太郎。北陸英和学校中退。1890(明治23)年上京、翌年より尾崎紅葉に師事。1995年発表の「夜行巡査」「外科室」が”観念小説”の呼称を得て新進作家としての地歩を確立。

以後、「照葉狂言」(1896年)、「高野聖」(1900年)、「婦系図」(1907年)、「歌行燈」(1910年)等、浪漫的・神秘的作風に転じ、明治・大正・昭和を通じて独自の境地を開いた。生誕百年の1973(昭和48)年には金沢市により泉鏡花文学賞が創設された。

 

外科室・天守物語 (新潮文庫)
泉 鏡花 (著)

「さるにても鏡花は天才だった」三島由紀夫

~泉鏡花生誕150年~
怪異をとらえる繊細な魂。美しさを極める流麗な筆。
名アンソロジストが選び抜いた不滅の8篇。

私はね、心に一つ秘密がある──。伯爵夫人手術時に起きた〝事件〟を描く『外科室』。眷族を伴に姫路城天守閣に棲む妖姫が、若き武士と出逢う『天守物語』。二つの代表作に加えて、故郷金沢を情感ゆたかに描く怪異譚『霰ふる』。三島由紀夫が絶賛した絶筆『縷紅新草』。そして『化鳥』『高桟敷』『二三羽──十二三羽』『絵本の春』を収める。アンソロジスト東雅夫が選び抜いた、鏡花文学の精髄8篇。【注解+編者解説・東雅夫】

歌行燈・高野聖(新潮文庫) Kindle版
泉鏡花 (著)

幽玄神怪、超理念の領域へ。
浪漫、神秘、「鏡花」の世界。

飛騨天生(あもう)峠、高野の旅僧は道に迷った薬売りを救おうとあとを追う。蛇や山蛭の棲む山路をやっと切りぬけて辿りついた峠の孤家(ひとつや)で、僧は匂うばかりの妖艶な美女にもてなされるが……彼女は淫心を抱いて近づく男を畜生に変えてしまう妖怪であった。
幽谷に非現実境を展開する『高野聖』ほか、豊かな語彙、独特の旋律で綴る浪漫の名作『歌行燈』『女客』『国貞えがく』『売色鴨南蛮』を収める。詳細な注解を付す。

本書収録「高野聖」より
(おお、御坊様)と立顕(たちあらわ)れたのは小造(こづくり)の美しい、声も清(すず)しい、ものやさしい。
私(わし)は大息を吐(つ)いて、何にもいわず、
(はい)と頭(つむり)を下げましたよ。
婦人(おんな)は膝をついて坐ったが、前へ伸上がるようにして黄昏にしょんぼり立った私が姿を透かして見て、
(何か用でござんすかい)
休めともいわずはじめから宿の常世(つねよ)は留守らしい、人を泊めないと極(き)めたもののように見える。

本書「解説」より
月光に輝やく山頂の谷川、陰森の気漲る破れた孤家、肌の色匂うばかりの裸体の美女、いずれもさながらドイツの浪漫派の情景である。この神秘幽怪な書き割りの中に、作者はデモーニッシュな感情の奔騰(ほんとう)に身を任せ、狂熱的に苦しみ、叫び、泣き、狂う。蛭の林や、滝の水沫(しぶき)や、「動」を写して神技に近い作者の筆致には、妖魔を実感し、神秘に生き切った作者の体験の裏打ちがある。日本文学史上、上田秋成の『雨月物語』をのぞいては、絶えて無くして稀にある名作というべきである。
――吉田精一(国文学者)

 
【関連】
試し読み | 泉鏡花 『外科室・天守物語』 | 新潮社

 


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