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【第九回日本翻訳大賞】『チェヴェングール』と『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』が受賞

日本翻訳大賞実行委員会は4月24日、第九回日本翻訳大賞の受賞作を発表しました。

 

第九回日本翻訳大賞が決定!

第九回日本翻訳大賞の選考会が4月23日に開催され、次の通り受賞作品が決定しました。

 
<第九回日本翻訳大賞 受賞作品

◎訳:工藤順さん・石井優貴さん/著:アンドレイ・プラトーノフさん
 『チェヴェングール』(作品社)

◎訳:舩山むつみさん/著:莫理斯作(トレヴァー・モリス)さん
 『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』(文藝春秋)

 
選考委員は、岸本佐知子さん、斎藤真理子さん、柴田元幸さん、西崎憲さん、松永美穂さん。授賞式およびトークイベントは5月7日(日)に篠崎文化プラザ第1・第2講義室にて開催されます。

 
なお、今回の最終候補作は以下の5作品でした。

【第九回日本翻訳大賞 最終候補作】
◎『黄金虫変奏曲』(訳:森慎一郎さん・若島正さん、著:リチャード・パワーズさん/みすず書房)
◎『スモモの木の啓示』(訳:堤幸さん/著:ショクーフェ・アーザルさん/白水社)
◎『チェヴェングール』(訳:工藤順さん・石井優貴さん、著:アンドレイ・プラトーノフさん/作品社)
◎『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』(訳:舩山むつみさん、著:莫理斯作(トレヴァー・モリス)さん/文藝春秋)
◎『路上の陽光』(訳:星泉さん、著:ラシャムジャさん/書肆侃侃房)

 

「第九回日本翻訳大賞」授賞式 開催概要

授賞式では、選考委員が選考会を振り返る座談会や、受賞作に関するトーク、受賞者との対談などの企画が予定されています。

 
■日時:2023年5月7日(日)12時半開会(15時20分閉会)

■会場:篠崎文化プラザ第1・第2講義室(https://www.shinozaki-bunkaplaza.com/

■料金:1,000円 (税込・全席自由)
※チケットは直営のホンヤクショップ(https://honyaku.base.shop/items/73188527)にて販売

 

日本翻訳大賞について

日本翻訳大賞は、「翻訳家がつくる翻訳賞」です。2014年、「読者と翻訳者のために、もっと開かれた翻訳の賞をつくりたい」という翻訳家・西崎憲さんのつぶやきに、ゲームクリエイターの米光一成さんが賛同したことがきっかけとなり、設立されました。

12月1日~翌年の12月末までの13ヶ月間に発表された翻訳作品中、最も賞讃したいものに贈られます。ただし、再刊、復刊は対象外。また、選考委員が翻訳した物、翻訳に協力した物、解説・帯の推薦文等を書いた物も対象外となります。

1次選考では、ウェブ上で一般読者の推薦を仰ぎます。一人1冊の推薦が可能で、推薦書籍の中から上位10冊を選出。選考委員もそれぞれが無記名で1冊ずつ推薦本をあげます。それらを2次選考で選考委員が吟味のうえ投票し、5冊に絞り込みます。そして、最終選考では5作品を全員で討議のうえ、大賞を決定します。大賞は1作品(または2作品)。受賞作なしもあり得ます。

 

チェヴェングール
アンドレイ・プラトーノフ (著), 工藤順 (翻訳), 石井優貴 (翻訳), 古川哲 (解説)

愛と憂鬱の〈ユートピア〉
ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。

革命後に生の意味を問いつづける孤高の魂。「翻訳不可能」といわれた20世紀小説の最高峰のひとつが、〈ロシア的憂愁(タスカー)〉の霧の中からついに全貌を現した!――沼野恭子

わたしもプラトーノフのようになれたら――ピエル・パオロ・パゾリーニ(映画監督・詩人)

20世紀には、重要な作家が3人いた――ベケット、カフカ、そしてプラトーノフだ――スラヴォイ・ジジェク(哲学者)

死への興味が嵩じて湖に自ら身を投げだした父親の息子アレクサンドル(サーシャ)は、ドヴァーノフ夫妻に引き取られて生活するようになり、やがて、ボリシェヴィキとして、彼の同伴者であり親友のコピョンキンとともに共産主義を探して県域を放浪し、共産主義が完成した理想郷チェヴェングールを見出す――。
「もっとも謎めいて、もっとも正統的でないロシア作家」とも称されるプラトーノフの代表作にして生前に完成した唯一の長篇小説。ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。
「『チェヴェングール』は、[……]世界史的な規模のインパクトをもった第一次世界大戦やロシア革命を念頭におきながら、現実を逆転させたような事柄を描いた挿話に溢れている。それらを通して〈あるいはそうであったかもしれないロシア革命〉が描き出されている。」(本書「解説」より)
◎解説=古川哲「あるいはそうであったかもしれないロシア革命」
◎付録=P・P・パゾリーニ「アンドレイ・プラトーノフの『チェヴェングール』」+関連地図+主な登場人物

辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿
莫理斯 (トレヴァー モリス) (著), 舩山 むつみ (翻訳)

19世紀の偉大なる名探偵シャーロック・ホームズがもし、ビクトリア朝時代の英国人ではなく、清末の時代に生きた中国人だったとしたら……。
そして、彼が奇妙な事件を次々に解決したのが大英帝国の首都ロンドンではなく、東の果ての植民地香港だったら……。

ホームズとワトソンを彼らとまったく同じ時代に生きた中国人、福邇(フー・アル)と華笙(ホア・ション)とし、物語の舞台を香港にした極上のパスティーシュ作品。
正典ホームズ・シリーズからの換骨奪胎ぶりが絶妙だ。

1880年代の香港の様子が生き生きと描かれ、ミステリーであると同時に、歴史小説としても読み応え十分。

 
【関連】
第九回日本翻訳大賞 受賞作決定 | 日本翻訳大賞 公式HP

 


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