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【令和4年度俳人協会四賞】俳人協会賞を森賀まりさん『しみづあたたかをふくむ』が受賞

俳人協会は、優れた句集や評論などに贈られる俳人協会四賞(第62回俳人協会賞および第46回俳人協会新人賞、第37回俳人協会評論賞、第37回俳人協会評論新人賞)の受賞作を発表しました。

 

俳人協会四賞が決定!

俳人協会四賞が次の通り決定しました。

 
■第62回俳人協会賞

森賀まり(もりが・まり)さん
句集『しみづあたたかをふくむ』(ふらんす堂)

 
■第46回俳人協会新人賞

◎相子智恵(あいこ・ちえ)さん
句集『呼応』(左右社)  

◎髙柳克弘(たかやなぎ・かつひろ)さん
句集『涼しき無』(ふらんす堂)

 
■第37回俳人協会評論賞

◎荒川英之(あらかわ・ひでゆき)さん
『沢木欣一 十七文字の燃焼』(翰林書房)

◎渡辺香根夫(わたなべ・かねお)さん
『草田男深耕くさたおしんこう)』(角川書店)

 
■第37回俳人協会評論新人賞

該当作なし

 

俳人協会四賞について

俳人協会賞は、俳人協会が1961年に創設した俳句の賞です。過去1年間に刊行された協会会員の句集を対象とします。1977年に、50歳以下の協会会員の第一句集を対象とした俳人協会新人賞が創設されました。

俳人協会評論賞は、1979年に創設された俳句評論賞です。協会会員による評論的著作を対象とします。1993年より新人賞も設けられています。

 

しみづあたたかをふくむ (百鳥叢書)
森賀まり (著), 木村茂 (イラスト)

◆最新句集
「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。暦の中にこのことばを見つけたときなつかしくなった。新年が明けて大寒の少し前、寒さが最も厳しくなる頃の時候である。
私の生家は瀬戸内の石鎚山の登り口に近く、湧水を水源とする地にある。凍るような朝は蛇口を開け放って出し流した。水が温んでくるのを待って顔を洗うのだ。
七十二候を眺めるに多くがふとした気づきを誰かがつぶやいたようだ。なかでも玄冬の底に置かれたこの語の寧らかさにひかれる。いっそうの寒さがはじめて水の温みを気づかせる。(あとがきより)

◆作品紹介
雨太く楝の花に吹き込める
この夜を落葉の走る音ならむ
春風に背中ふくらみつつ行けり
烏瓜の花が黙つてついてくる
日の窓の一つかがやき初氷
末枯れて足あたたかに人の家
虎杖やひとり仕事の歌もなく
凍雲や生簀は声の散りやすく
靴下のちひさく乾く寒さかな
秋の水映画に長き掉尾あり

句集 呼応 (澤俳句叢書)
相子智恵 (著)

群青世界セーターを頭の抜くるまで
第55回角川俳句賞受賞の著者、待望の第一句集。
卓越した観察力と技巧で、世界をすみずみまで描き出す326句。

どうしても俳句でなければ、ということでもなかったのが、おもしろい。この時、俳句を選んでいなければ、俳人相子智恵は生まれていなかったかもしれないのだ――序・小澤實

〈収録句より〉
火星にも水や蚕の糸吐く夜
畦焼きぬ焼けざる草の突つ立ちぬ
ゴールポスト遠く向きあふ桜かな
桜餅指に蹼ありしころ
一滴の我一瀑を落ちにけり
日盛や梯子貼りつくガスタンク
砂払ふ浮輪の中の鈴の音
北斎漫画ぽろぽろ人のこぼるる秋
とことはに後ろに進む踊かな
遠火事や玻璃にひとすぢ鳥の糞
雪雲の日裏ずんずん進みくる
にはとりのまぶた下よりとぢて冬

涼しき無
髙柳克弘 (著)

◆第三句集
この句集に主題の明確な作が多いのは、私なりの挑戦だ。とはいえ、作者の意図は脇に置いて、読者の方には自由に鑑賞していただければ嬉しい。たとえば子供を詠んだ句が多いが、この句集に出てくる子供は、私の息子でもあり、戦場のみなしごでもあり、安寿厨子王でもあり、あるいは私自身でもあるだろう。
(あとがきより)

◆自選十五句
通帳と桜貝あり抽斗に
ぶらんこを押してぼんやり父である
忘るるなこの五月この肩車
星光は闇払へざる氷かな
スカイツリー見ずや冷たき缶集め
子にほほゑむ母にすべては涼しき無
駅前に人は濁流秋の暮
列聖を拒みて鳥に花ミモザ
抱きとめし子に寒木の硬さあり
疫病が来るよ猫の子雀の子
ぬぐふものなくて拳や米こぼす
パンのみに生くると決めて卒業す
ふるさとに舟虫走る仏間あり
あれはみなしごの水筒月の川
部屋にゐて世界見通す寒さかな

沢木欣一 十七文字の燃焼
荒川 英之 (著)

社会主義的イデオロギーを根底に持つ生き方、態度、意識、感覚から生まれる俳句
欣一の目指した社会性俳句の独自性とは

角川俳句コレクション 草田男深耕
渡辺 香根夫 (著), 横澤 放川 (編集)

中村草田男、その魂の二十年を深耕する。難解句の本質に迫る決定版!

<葡萄食ふ一語一語の如くにて> 草田男
草田男の俳句を読んでいて思うのは、「眼の人」として物を見つめることが、言葉に光をというディヒターの悲劇とつねに一体であるということです。
眼が対象を受動的に映すのではなく、対象から働きかけられて働きかえる力であるとき、それは、<まなざし>です。
(講演「草田男のまなざし」より)
編は「森の座」代表の俳人・横澤放川。

 
【関連】
公益社団法人 俳人協会・俳句文学館

 


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