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新潮ドキュメント賞&小林秀雄賞が決定 新潮ドキュメント賞はブレイディみかこさん 小林秀雄賞は國分功一郎さん

新潮社は8月18日、第16回新潮ドキュメント賞および第16回小林秀雄賞の選考結果を発表しました。新潮ドキュメント賞はブレイディみかこさんの『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)に、小林秀雄賞は國分功一郎さんの『中動態の世界 意志と責任の考古学』(医学書院)に決定しました。

 

新潮ドキュメント賞および小林秀雄賞について

新潮ドキュメント賞と小林秀雄賞は、ともに財団法人「新潮文芸振興会」が主催。以前は、新潮学芸賞の名称で2001年まで開催されていましたが、2002年からノンフィクションを対象とする新潮ドキュメント賞と、評論・エッセイを対象とする小林秀雄賞とに分離しています。

新潮ドキュメント賞はノンフィクションを対象とし、「ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品」に授与される文学賞です。

小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外で「自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品」に授与されます。

両賞とも第16回は、平成28年7月1日から平成29年6月30日までを対象期間としています。受賞作には、記念品および副賞として100万円が贈られます。贈呈式は10月6日、都内にて開催。

 

第16回新潮ドキュメント賞について

第16回新潮ドキュメント賞は、下記候補作品の中から、ブレイディみかこさん『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』が選ばれました。

ブレイディみかこさんは、1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年からイギリス・ブライトン在住。保育士で、ライター、コラムニスト。著書に、『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』(ちくま文庫)などがあります。

選考委員は、池上彰さん、梯久美子さん、櫻井よしこさん、藤原正彦さん、保阪正康さん。

【新潮ドキュメント賞 候補作】
中村計さん『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』(集英社)
永野健二さん『バブル 日本迷走の原点』(新潮社)
今野勉さん『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』(新潮社)
ブレイディみかこさん『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)
前野ウルド浩太郎さん『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社)

 

子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から
「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。」

英国の「地べた」を肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼をもつライターとして注目を集めた著者が、保育の現場から、格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。
2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国の「平均収入、失業率、疾病率が全国最悪の水準1パーセントに該当する地区」にある無料の託児所。「底辺託児所」とあだ名されたそこは、貧しいが混沌としたエネルギーに溢れ、社会のアナキーな底辺層を体現していた。この託児所に集まる子どもたちや大人たちの生が輝く瞬間、そして彼らの生活が陰鬱に軋む瞬間を、著者の目は鋭敏に捉える。それをときにカラリとしたユーモアで包み、ときに深く問いかける筆に心を揺さぶられる。

著者が二度目に同じ託児所に勤めた2015-2016年のスケッチは、経済主義一色の政策が子どもの暮らしを侵食している光景であり、グローバルに進む「上と下」「自己と他者」の分断の様相の顕微描写である。移民問題をはじめ、英国とEU圏が抱える重層的な課題も背景に浮かぶ。

「政治は議論するものでも、思考するものでもない。それは生きることであり、暮らすことだ。」
英国移民で一児の母でもある保育士ライターが放つ、渾身の一冊。

 

第16回小林秀雄賞について

第16回小林秀雄賞は、國分功一郎さんの『中動態の世界 意志と責任の考古学』が選ばれました。

國分功一郎(こくぶん・こういちろう)さんは、1974年、千葉県柏市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。高崎経済大学准教授。専攻は哲学。
主な著書に『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)など。訳書にドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)などがあります。

選考委員は、加藤典洋さん、関川夏央さん、橋本治さん、堀江敏幸さん、養老孟司さん。

 

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
自傷患者は言った「切ったのか、切らされたのかわからない。気づいたら切れていた」。依存症当事者はため息をついた「世間の人とは喋っている言葉が違うのよね」
――当事者の切実な思いはなぜうまく語れないのか? 語る言葉がないのか? それ以前に、私たちの思考を条件付けている「文法」の問題なのか?
若き哲学者による《する》と《される》の外側の世界への旅はこうして始まった。ケア論に新たな地平を切り開く画期的論考。

 
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