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【第42回サントリー学芸賞】酒井正さん、詫摩佳代さん、李賢晙さん、中嶋泉さん、伊藤亜紗さん、志村真幸さん、梅澤礼さん、小山俊樹さんが受賞

第42回サントリー学芸賞が決定!

第42回サントリー学芸賞が決定!

公益財団法人サントリー文化財団は、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をした人物に贈る「第42回サントリー学芸賞」の受賞者・対象作品を発表しました。

 

第42回サントリー学芸賞が決定! 4部門計8名が受賞

第42回サントリー学芸賞では、2019年1月以降に出版された日本語の著作を対象に「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門において各選考委員より優れた作品が推薦され、2回にわたる選考委員会での審議を経て、受賞者および作品が次の通り決定しました。

なお、贈呈式は12月15日(火)に東京で開催される予定です。

 
<第42回サントリー学芸賞 受賞者・対象作品>

〔政治・経済部門〕
◎酒井正(さかい・ただし)さん(法政大学経済学部教授)
『日本のセーフティーネット格差 ―― 労働市場の変容と社会保険』(慶應義塾大学出版会)

◎詫摩佳代(たくま・かよ)さん(東京都立大学法学部教授)
『人類と病 ―― 国際政治から見る感染症と健康格差』(中央公論新社)

〔芸術・文学部門〕
◎李賢晙(い・ひょんじゅん)さん(小樽商科大学言語センター准教授)
『「東洋」を踊る崔承喜』(勉誠出版)

◎中嶋泉(なかじま・いずみ)さん(大阪大学大学院文学研究科准教授)
『アンチ・アクション ―― 日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ)

〔社会・風俗部門〕
◎伊藤亜紗(いとう・あさ)さん(東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター准教授)
『記憶する体』(春秋社)を中心として

◎志村真幸(しむら・まさき)さん(南方熊楠顕彰会理事、慶應義塾大学非常勤講師)
『南方熊楠のロンドン ―― 国際学術雑誌と近代科学の進歩』(慶應義塾大学出版会)

〔思想・歴史部門〕
◎梅澤礼(うめざわ・あや)さん(富山大学人文学部准教授)
『囚人と狂気 ―― 一九世紀フランスの監獄・文学・社会』(法政大学出版局)

◎小山俊樹(こやま・としき)さん(帝京大学文学部教授)
『五・一五事件 ―― 海軍青年将校たちの「昭和維新」』(中央公論新社)

 
【選考委員】

◎政治・経済部門:大竹文雄さん(大阪大学教授)、北岡伸一さん(国際協力機構理事長)、土居丈朗さん(慶應義塾大学教授)、船橋洋一さん(アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)、牧原出さん(東京大学教授)、待鳥聡史さん(京都大学教授)

◎芸術・文学部門:池上裕子さん(神戸大学教授)、大笹吉雄さん(演劇評論家)、沼野充義さん(名古屋外国語大学副学長)、三浦篤さん(東京大学教授)、三浦雅士さん(文芸評論家)、渡辺裕さん(東京音楽大学教授)

◎社会・風俗部門:奥本大三郎さん(埼玉大学名誉教授)、川本三郎さん(評論家)、玄田有史さん(東京大学教授)、佐伯順子さん(同志社大学教授)、佐藤卓己さん(京都大学教授)、袴田茂樹さん(青山学院大学名誉教授、新潟県立大学名誉教授)

◎思想・歴史部門:宇野重規さん(東京大学教授)、鹿島茂さん(作家、フランス文学者)、苅部直さん(東京大学教授)、田中明彦さん(政策研究大学院大学学長)、堂目卓生さん(大阪大学教授)、細谷雄一さん(慶應義塾大学教授)

 
受賞者略歴は、 https://www.suntory.co.jp/news/article/13792-2.html を、
選評は、 https://www.suntory.co.jp/news/article/13792-3.html をご覧ください。

 

サントリー学芸賞について

サントリー学芸賞は、1979年に創設。サントリーの創業80周年を記念して同年に設立されたサントリー文化財団(https://www.suntory.co.jp/sfnd/)が主催する学術賞です。

「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門に分かれ、毎年、前年1月以降に出版された著作物を対象に選考し、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をされた方を顕彰します。

選考に際しては、個性豊かで将来が期待される新進の評論家、研究者であること、本人の思想、主張が明確な作品であることに主眼が置かれています。また、代表候補作品だけでなく、これまでの一連の著作活動の業績を総合して選考の対象としています。

なお、2018年2月のサントリー文化財団設立40周年を機に、人文学・社会科学分野における既存の枠組にとらわれない自由な評論・研究活動のさらなる発展を願い、副賞を従来の200万円から300万円に増額しています。

 

日本のセーフティーネット格差:労働市場の変容と社会保険
酒井 正 (著)

誰が「皆保険」から漏れ落ちているのか。働き方が多様化する中で、正規雇用を前提としていた社会保険に綻びが生じている。「雇用が不安定な者ほどセーフティーネットも脆弱」というパラドキシカルな現状にどう対応すべきか。救済策は社会保険の適用拡大しかないのか。今後の改革のための指針を、しっかりした「エビデンス」をもとに模索する力作!

人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書 2590)
詫摩 佳代 (著)

古くはペストやコレラ、現代でもエボラ出血熱や新型肺炎など、人類の歴史は病との闘いである。天然痘やポリオを根絶に導いた背景には、医療の進歩のみならず、国際協力の進展があった。しかし、マラリアはいまだ蔓延し、エイズ、SARS、エボラ出血熱、そして新型コロナウイルスなど、次々に新たな病が人類に襲いかかっている。喫煙や糖分のとりすぎによる生活習慣病も重い課題だ。人類の健康をめぐる苦闘の歴史をたどる。

「東洋」を踊る崔承喜
李 賢晙 (原著, 著)

朝鮮出身の舞踊家崔承喜は、いかなるイメージ戦略を行い、一九三〇年代の日本で舞踊芸術家としての地位を確立したのか。日本と朝鮮、さらに世界の人々はどのような存在として受け止めたのか。
新発見資料多数を含む、絵画、写真、文学、広告など多様なメディアに描き出された表象や言説を丹念に分析。「半島の舞姫」から「世界の舞姫」への軌跡を追う。
植民地体制下の日韓文化交流の実態も明らかにした画期的成果。

アンチ・アクション―日本戦後絵画と女性画家
中嶋 泉 (著)

草間彌生、田中敦子、福島秀子。三人の女性画家の画業をたどり、戦後美術史と美術運動の問題点を探りだし、「女性画家もいる」美術史を構築しようとする画期的試み。

記憶する体
伊藤 亜紗 (著)

時間の厚みを生きる

誰もが自分だけの体のルールをもっている。階段の下り方、痛みとのつきあい方……。「その人のその体らしさ」は、どのようにして育まれるのか。経験と記憶は私たちをどう変えていくのだろう。
視覚障害、吃音、麻痺や幻肢痛、認知症などをもつ人の11のエピソードを手がかりに、体にやどる重層的な時間と知恵について考察する、ユニークな身体論。

南方熊楠のロンドン:国際学術雑誌と近代科学の進歩
志村 真幸 (著)

イギリスと東洋が関係を深めつつあった19世紀末、当時、最先端の都市だったロンドンに留学し、大英博物館リーディング・ルームを主たる舞台として世界各国の辞書や事典を渉猟し、学問的研鑽を積んだ熊楠は、いかにして欧米の学術空間に受け入れられたのか。国際学術誌『ネイチャー』『ノーツ・アンド・クエリーズ』『フラヘン』に376篇もの英文論考を寄稿し、東洋からの知見の提供によって、近代科学の発展を支えた南方熊楠の営為を歴史的・国際的な視点から捉えなおす、気鋭の力作。

囚人と狂気: 一九世紀フランスの監獄・文学・社会
梅澤 礼 (著)

1843年、七月王政下の議会に提出された監獄法案は、少年と老人を除く全囚人を独房に収監するというものだった。囚人の社会復帰をめざす理想の監獄とその挫折をめぐって、新聞や学術論文、議事録、回想録や文学作品に表れた多様な論争的言説を掘り起こし、独房で精神を病んだ囚人が〈非理性〉や植民地へと追放されてゆく過程をたどる。犯罪と近代文学成立をめぐる表象文化研究の稀少な成果!

五・一五事件-海軍青年将校たちの「昭和維新」 (中公新書 2587)
小山 俊樹 (著)

ロンドン海軍軍縮条約をきっかけに、政党政治を憂えた海軍青年将校、民間右翼らが起こした五・一五事件。首相暗殺、内大臣邸・警視庁を襲撃、変電所爆破による「帝都暗黒化」も目論んだ。本書は、大川周明、北一輝、橘孝三郎、井上日召ら国家主義者と結合した青年将校らが、天皇親政の「昭和維新」を唱え、兇行に走った軌跡を描く。事件後、政党内閣は崩壊し軍部が台頭。実行犯の減刑嘆願に国民は熱狂する。昭和戦前の最大の分岐点。

 
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