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SINCE 1991

「書かれたもの」への信頼を揺るがす新しい文明論『声と文字の人類学』が刊行

構造主義をはじめとする文化人類学理論の研究などを専門とする出口顯さんが、声に出して話し、文字を読むという日常的な営みについて、人文学の領域を横断しながら論じる『声と文字の人類学』(NHKブックス)をNHK出版より刊行しました。

 

「声より先に文字がある」「文字記録が信頼されない」――古代ギリシアから中世英国、現代バリまで、文字の歴史は意外な事例に満ちている!

人類の長い歴史の中で、文字の存在はどんな意味を持ったのでしょうか?

「そこから文明が生まれた」
「音声を残せるようになった」

 
このような従来の西洋中心主義的な常識を脱し、本書では、古今東西の文字使用が意外な事例に満ちていることを示します。人類史が見落としてきた「声」と「文字」の歴史は、読み書き能力への信仰を揺るがす深い問いを投げかけてきます。

第2章『文字は認識を変える」か?』より、中世絵画に残された筆写作業の様子

第2章『文字は認識を変える」か?』より、中世絵画に残された筆写作業の様子

第7章『文字は皮膚に記憶されている』より、顔と体に模様を施したペルーの先住民ピーロの少女

第7章『文字は皮膚に記憶されている』より、顔と体に模様を施したペルーの先住民ピーロの少女

◎音声のほうが文字より信頼される古代ギリシアと中世英国
◎文字を超人的な力の源泉として利用する南米の先住民社会
◎・語り物の成り立ちをめぐる柳田國男の論

…など、多くの実例を図版資料も交えて紹介。人類史の多彩な側面を味わえる、知的冒険に満ちた読み物です。

 

本書の目次

はじめに

図表出典一覧

第Ⅰ部 文字の効用をめぐる有力な議論
第1章 「文字は認識を変える」か?
第2章 「活字は視覚を特権化する」か?
第3章 なぜ文字が「届けられない」か?  

第II部 声に権力を行使する文字
第4章 音声中心主義を見抜く 
第5章 文字が読む人の声を奪う

第III部 書承と口承の境界面
第6章 文字が新たな声を生み出す
第7章 文字は皮膚に記憶されている
第8章 「砂の本」を追いかけて
終章 打ち言葉と手書きの擁護

おわりに

 

著者プロフィール

出口顯(でぐち・あきら)さんは、島根大学名誉教授。1957年生まれ、島根県出身。筑波大学比較文化学類卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程退学、のち博士(文学)。島根大学法文学部教授を長く務めた。専門は構造主義をはじめとする文化人類学理論の研究、アメリカ大陸先住民の神話分析の理論の研究など。

著書に『臓器は「商品」か』(2001年、講談社現代新書)など。

 

声と文字の人類学 (NHKブックス)
出口 顯 (著)

「文字イコール文明」というイメージを覆す

「文字による伝達が生まれると文明が生まれる」と見る人類史が見落としてきた事例は多い。本書は、古代ギリシャから中世英国、近代日本、現代バリまで、「声より先に文字がある」「文字記録が信頼されない」例を集め、字を書くことと「口伝え」との境界面を探ることを通じて文明の常識を問いなおす。

 


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