悪夢は「妻が逮捕された日」から始まった─―小倉日向さん『いっそこの手で殺せたら』が文庫化
現役教師である著者が性暴力の罪と闇に挑んだ問題作、小倉日向さん著『いっそこの手で殺せたら』が文庫化され、双葉文庫より刊行されました。
覚悟がある人だけ読んでください――「最凶」ミステリー降臨!
《ここは学校のトイレである。放課後ともなれば生徒がほとんど訪れない棟の、階段室に入り口がある。その奥の、最も広い個室だった》
うごめく2つの影。獣じみた吐息と、静かに広がる絶望──。
冒頭から凶烈な一撃を食らわせる問題作『いっそこの手で殺せたら』は、単行本刊行時、先読みWebサービス・ネットギャリーにおいて、全国の書店員や本好きインフルエンサーら会員のリクエストが殺到し、ページビュー2位・リクエスト3位・レビュー数2位を記録。「虫酸が走るのに、気づけば一気読み」といった熱烈コメントを多数獲得しただけあり、ストーリー展開は最後の最後まで予断を許さない猛毒の波状攻撃が続きます。
主人公は元教師のライター・筒見芳晃。10歳年下の可愛い妻と年頃の娘に恵まれ平和な家庭を築いていたが、突如、妻が行方不明に。交番に駆け込んだ芳晃は、妻の逮捕を告げられ動揺すると同時に愕然とするのである。結婚して15年余、妻の勤め先はおろか、過去も、裏の顔も、何も知らなかったことに。
しかし、これは悪夢のほんの入口。ようやく釈放されると伝えられ、喜び勇んで妻を迎えに行った芳晃は、警察署で超想定外の事態に遭遇。そこから惨劇の幕が切って落とされるのです。
物語の重要な鍵となるのが、昨今、大きな問題となっている性暴力。
プロローグから踏み込んだ衝撃描写に挑んだ著者の小倉さんは、なんと現役のベテラン教師であり、教育現場の隅々まで知り尽くしたその道のプロだといいます。
だからこそ、ひとり立ち尽くすカバー装画の少女に暗示されるような、許せない現実があります。決して目を逸らしてはいけない重いものがあるのです。
「覚悟がある人だけ読んで下さい」という帯の惹句通り、主人公が選ぶ凄まじいラストは、読み手にある種の“覚悟”を突き付けてくることでしょう。
それが不思議な痛快さであれ、言葉にできない嫌悪であれ、細胞レベルで揺さぶりをかける本作。ぜひ、「読む」のではなく「体験」してください。
著者プロフィール
小倉日向 (おぐら・ひなた)さんは、1964年生まれ、新潟県出身。上越教育大学大学院修了。地元での公務員生活を経て、2020年、『極刑』(双葉社)にて作家デビュー。
毒とユーモアを好み、筒井康隆さん、北野武さん、モンティ・パイソンらに影響を受ける。愛読した作家は他に遠藤周作、太宰治、向田邦子、丸谷才一など。テレビは海外ミステリードラマを好む。映画はスタンリー・キューブリック。座右の銘は「驕れる者は久しからず」。近著に『東京ゼロ地裁 執行 2』。
![]() | いっそこの手で殺せたら (双葉文庫) 小倉 日向 (著) 元教師のライター・筒見芳晃は十歳年下の可愛い妻・絵梨、年頃の愛娘・沙梨奈と何不自由のない暮らしを営んでいた。だが、穏やかな日々は突如一変する。 |
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