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恩田陸さんが初めて贈る「事実に基づく」物語『灰の劇場』が文庫化

河出書房新社は、恩田陸さんが実際に目にした「三面記事」がきっかけとなり生まれた「事実に基づく」長編小説『灰の劇場』を文庫化し、河出文庫より刊行しました。

なお、執筆後明らかとなった事実に戦慄する「文庫版あとがき」は本作読了後にお読みください。

 

三面記事から「物語」が始まる

 
時にはインタビューで、時には打ち合わせの中で、恩田さんは「小説家になったばかりの頃、『二人の女性が一緒に飛び降りた』という三面記事を見たことがあって、しかし手元にはなく、それがずっと『棘』のように刺さっている」と話されていました。
(『灰の劇場』編集担当Oさん・談)

 
「フィクション=二人の女性」と「ノンフィクション=作家の『私』」が交互に展開され、紡がれる『灰の劇場』。恩田さんにとっても初めての形式で進む本作は、しだいにフィクションとノンフィクションが混じり合い、小説内で多重奏のように鳴り響きます。

 
タレント・小説家の高山一実さんも「すごくダイレクトに響いてくる言葉がたくさんありました。(中略)本の中に、“分かる!”がたくさん詰まっていたんです」(「ダ・ヴィンチ」2021年10月号)と絶賛する本作。新たなる「恩田陸ワールド」をぜひ、お楽しみください。

 
【あらすじ】

きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ごくごく短い記事だった。一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたというものである。

様々な「なぜ」が「私」の脳裏を駆け巡る。しかし当時、「私」は記事を切り取っておかなかった。
そして、その記事は、「私」の中でずっと「棘」として刺さったままとなっていた。

ある日「私」は、担当編集者から一枚のプリントを渡される。「見つかりました」――彼が差し出してきたのは、1994年9月25日(朝刊)の新聞記事のコピーだった。

ずっと記憶の中にだけあった記事――記号の二人。次第に「私の日常」は、二人の女性の「人生」に侵食されていく。

『灰の劇場』店頭用ポスター

『灰の劇場』店頭用ポスター

「物語の終幕に、ぼくは穏やかなる救済を感じた」
――斉藤壮馬さん(声優)

 

スピンオフ小説、執筆経緯と後日談を収録

文庫化に際して、短編スピンオフ小説「灰の劇場 0-(ゼロマイナス)」「灰の劇場0+(ゼロプラス)」(『文藝別冊 恩田陸 白の劇場』収録)と、本作執筆経緯と後日談を書いた「文庫版あとがき」を併録。

 
「考えれば考えるほど、『事実に基づく物語』どころか、事実そのものに打ちのめされる。」(「文庫版あとがき」より)と著者が述べる「文庫版あとがき」には、2021年単行本刊行後に記者などから寄せられ、判明した「二人の女性」に関する情報が書かれています。

ぜひ本書読了後にお読みいただき、著者と同じく戦慄の事実に打ちのめされてください。

 

『灰の劇場』へ寄せられた書評

単行本刊行時に公開された斉藤壮馬さん、武田砂鉄さん、小島慶子さんによる書評が下記にて再掲されています。

 
◆「救済を感じた」ラストシーン(「文藝」2021年夏季号収録)
――斉藤壮馬さん(声優)
https://web.kawade.co.jp/review/83930/

◆日常と絶望は近い(「文藝別冊 恩田陸 白の劇場」収録)
――武田砂鉄さん(ライター)
https://web.kawade.co.jp/review/83955/

◆想像の中では誰もが等しく肉体を持たない聖者である(「文藝別冊 恩田陸 白の劇場」収録)
――小島慶子さん(タレント・エッセイスト)
https://web.kawade.co.jp/review/83980/

 

著者プロフィール

恩田陸(おんだ・りく)さんは、1964年生まれ、宮城県出身。1992年『六番目の小夜子』でデビュー。

2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、2006年『ユージニア』で日本推理作家協会賞、2007年『中庭の出来事』で山本周五郎賞、2017年『蜜蜂と遠雷』で直木三十五賞と二度目の本屋大賞を受賞。

近著に『歩道橋シネマ』『ドミノ in上海』『スキマワラシ』『薔薇のなかの蛇』『愚かな薔薇』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』『夜果つるところ』がある。著書多数。

 

灰の劇場 (河出文庫)
恩田 陸 (著)

始まりは、偶然目にした「三面記事」だった――恩田陸の新境地が、「灰の劇場0-+」「文庫版あとがき」を収録の上、待望の文庫化。

恩田陸 白の劇場 (文藝別冊)
河出書房新社編集部 (編集)

ミステリー、ファンタジー、ホラー、青春小説、SF……多彩なジャンルを縦横無尽に越境し、幅広い年代から愛される恩田陸の作品世界を徹底特集。書き下ろし小説、未収録エッセイ他収録。

【目次】

[書き下ろし]
灰の劇場 0-
灰の劇場 0+

[単行本未収録作品]
ジョン・ファウルズを探して
ソウルのカササギは王宮で鳴く

[特別対談]
×桐野夏生 三面記事から物語がはじまる

[ロングインタビュー]
恩田陸が大森望と全小説を振り返る

◎恩田陸が選ぶ年間ベストブック&フィルム 2006~2020 15年分!

[エッセイ]
朝井リョウ 恩田陸と〝天才〟たち
斉藤壮馬 そして青春はつづく
皆川博子 キーワードは〝懐かしさ〟
森見登美彦 恩田陸さんのノスタルジア
山田正紀 スキマワラシと金閣寺
雪乃紗衣 少年少女だけが知る秘密

[最新作『灰の劇場』書評]
小島慶子 想像の中では誰もが等しく肉体を持たない生者である
武田砂鉄 日常と絶望は近い

[映像・舞台化される恩田作品]
石川慶 感情に純粋であること
篠原哲雄 『木曜組曲』から二十年の時を経て
成井豊 奇抜とリリカル
深作健太 ある呼吸の記憶
真柴あずき 諦めない力
松岡茉優 とるに足らない
横内謙介 猫と針と翻弄と

[論考]
朝宮運河 生者と死者のロンド─恩田陸のホラーについて
杉江松恋 私たちは恩田陸という作家の内部を旅してきた
千街晶之 世界は、グロテスクな企みに満ちている─恩田陸とミステリ
牧眞司 オマージュとイマジネーション─「場所の記憶」をめぐって

[対談]
×大塚英志 物語のふるさと―少女まんがとジュヴナイルの時代
×小川洋子 小説と世界の秘密

◎恩田陸作品を読み解く10のキーワード 三宅香帆
◎恩田陸全著作ガイド 三宅香帆
◎略年譜

 


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