『ぼくのお父さん』誕生の陰に『無能の人』あり!?『芸術新潮』9月号でマンガ家・つげ義春さんの息子・正助さんと矢部太郎さんによる、ちょっと変わったお父さんについて初対談

矢部太郎さん(右)と、つげ正助さん。調布市の多摩川にて。撮影:筒口直弘(芸術新潮)
矢部太郎さんが、絵本作家の父との思い出をテーマとする『ぼくのお父さん』を描くにあたって読み返したのが、つげ義春さんの私小説的マンガ『無能の人』でした。
『芸術新潮』9月号(8月25日発売)では、つげ義春さんの息子・正助さんと矢部太郎さんの対談を掲載。ちょっと変わった「絵描き」のお父さんを持つ二人が、ぞんぶんに語り合っています。
つげ家の父子と矢部家の父子は、実は似ている? 子供時代の素朴な疑問、「お父さんはなんでいつも家にいるの?」「うちにはなんで車がないの?」で、初対面にして意気投合!
発売2ヶ月も経たずして10万部を突破したマンガ『ぼくのお父さん』。矢部太郎さんが、絵本作家である父・やべみつのりさんとの子供時代の思い出を、独特のほっこりしたタッチで描いたものです。
この作品に取りかかるにあたって、矢部さんが参考のために読み返したのが、つげ義春さんの『無能の人』だったといいます。そこに描かれているマンガ家の家族の在り方や父と子の関係が、自分の子供の頃に近いように思われ、同作に登場する息子が成長してマンガを描いたら……という気持ちも、念頭にあったとのこと。
そんな矢部さんからのたってのリクエストで、敬愛するつげ義春さんの一人息子・つげ正助さんとの初対談が、『無能の人』の舞台である東京都調布市で実現。ちょっと変わったお父さんのいる家族の思い出を語り合いました。
ともに父が会社勤めでなかった二人は、子供時代に「ウチのお父さんはなんで家にいるんだろう」と思ったという話題から、初対面にして意気投合。両家とも裕福ではなく、「他の家は車があるのに、ウチはなんでないの」という共通の不満を持っていたこともわかりました。
他にも、なんでもスケッチする矢部さんの父のエピソード、つげ家の遅すぎるカラーテレビ導入のてんまつや家族旅行のこぼれ話、さらにはすべて実話と誤解されがちな『無能の人』の具体的な虚実にまで、話ははずみました。
対談を終えた二人は、『無能の人』に描かれた多摩川に移動して写真撮影。対談はそのツーショットとともに、『芸術新潮』9月号に掲載されています。

『芸術新潮』9月号
プロフィール
■矢部太郎(やべ・たろう)さん
1977年生まれ。東京都出身。芸人・マンガ家。
1997年にお笑いコンビ「カラテカ」を結成。『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。
■つげ正助(つげ・しょうすけ)さん
1975年生まれ。東京都出身。つげ義春さん・藤原マキさんの一人息子。
今年3月に完結した『つげ義春大全』刊行にあたっては、父のマネージャー役として奔走した。
芸術新潮 2021年9月号
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