【第5回斎藤茂太賞】若菜晃子さん『旅の断片』が受賞 旅の優れた書籍を選出した「旅の良書2020」も発表
一般社団法人「日本旅行作家協会」(会長:下重暁子さん/会員数193人)は7月13日、第5回斎藤茂太賞の受賞作を発表しました。また同時に、旅の持つさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出した「旅の良書2020」も発表されました。
第5回斎藤茂太賞が決定!
第5回斎藤茂太賞の選考会が7月10日、学士会館にて開催され、受賞作が次の通り決定しました。
<第5回斎藤茂太賞 受賞作品
若菜晃子(わかな・あきこ)さん
『旅の断片』(編集:アノニマ・スタジオ/発行:KTC中央出版)
受賞者の若菜晃さんは、1968年兵庫県神戸市生まれ。編集者。学習院大学文学部国文学科卒業後、山と溪谷社に入社。『wandel』編集長、『山と溪谷』副編集長を経て独立。山や自然、旅に関する雑誌、書籍を編集、執筆。「街と山のあいだ」をテーマにした小冊子『murren』編集・発行人。
審査員は下重暁子さん(作家・日本旅行作家協会会長)、椎名誠さん(作家・日本旅行作家協会名誉会員)、大岡玲さん(作家・東京経済大学経済学部客員教授)、芦原伸さん(ノンフィクション作家・日本旅行作家協会専務理事)、種村国夫さん(イラストレーター・エッセイスト・日本旅行作家協会会員)。
なお、第5回斎藤茂太賞の最終候補作は以下の4作品でした。
【最終候補作品】
◎若菜晃子さん『旅の断片』(アノニマ・スタジオ/KTC中央出版)
◎乙武洋匡さん『ただいま、日本』(扶桑社)
◎坂田ミギーさん『旅がなければ死んでいた』(ベストセラーズ)
◎岡本仁さん『また旅。』(京阪神エルマガジン社)
[選評](下重暁子さん)
候補作品が送られてくると、まずはパラパラとページをめくって大まかに印象をつかみ、そのあと熟読するのだが、今回最初に手に取った3冊はどうもピンとこなかった。ところが、事情があってたまたま遅れて届いた1冊に目を見張った。「いいのがあったじゃない!」。それが『旅の断片』だ。コロナ禍の中で山荘に引き籠もり、じっくり読み進めていくと、ますますこの作品に引き込まれた。外国へ行って、珍しいものを見ようというのではなく、人々の普通の暮らしに目を向け、それを落ち着きのある優しい文章で綴っている。たとえば、とある街角。おばあさんが毎日毎日花に水をやっている。ただそれだけの風景が、なんと愛おしく心にしみることか。かつて、宮城県気仙沼市から渡った島で、一日中ひたすら牡蠣の殻をむいている人々の姿に、心底感動したことを思い出した。地に足のついた暮らし、なんでもない日常がいかに尊いものであるか、旅のスケッチ風のエッセイが、そのことを改めて感じさせてくれた。(談)
斎藤茂太賞について
「斎藤茂太賞」は、長年にわたり世界と日本の旅行文化の発展に貢献した、日本旅行作家協会創立会長の故・斎藤茂太さんの功績をたたえ、その志を引き継ぐために2016年に創設。前年に出版された紀行・旅行記、旅に関するエッセイおよびノンフィクション作品の中から優れた著作を表彰する文学賞です。
<斎藤茂太さん プロフィール>
斎藤茂太さんは、1916年(大正5年)、歌人の斎藤茂吉の長男として東京に生まれます。精神医学者としても活躍。日本旅行作家協会の創立会長を長らく務めました。2006年(平成18年)11月20日逝去。作家の北杜夫さんは弟。
日本精神病院協会会長、アルコール健康医学協会会長、日本ペンクラブ理事などを歴任。
著作に『茂吉の体臭』(岩波書店)、『モタさんの“言葉”』(講談社)、『精神科の待合室』(中央公論社)、『モタさんのヒコーキ談義』(旺文社)、『モタさんの世界のりもの狂走曲』(角川学芸出版)など。
旅の持つさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出した「旅の良書2020」も発表!
「旅の良書」は、基本的に中学生以上を対象として、旅の持つさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出するもので、斎藤茂太賞の選考過程でセレクトしたすべての作品を対象として、斎藤茂太賞の選考システムを活用して斎藤茂太賞実行委員会が選考・選出し、日本旅行作家協会の理事会の承認を経て認定するものです。
今年が第2回目の発表となり、日本旅行作家協会選定の「旅の良書」マークを、選ばれた「旅の良書」の版元へ無償で提供します。
<「旅の良書2020」選出作品>
■馬田草織さん『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)
家庭のキッチンから、街角のレストランまで、人生を変えるような味を求めてポルトガル各地を巡る“美味しい”が詰まった食と旅のエッセイ。
■吉田正仁さん『リヤカー引いてアフリカ縦断 時速5キロの歩き旅』(小学館)
時速5キロの旅だからこそ出会う事ができた絶景、自然、そして優しい人達。リヤカーを引いて世界中で徒歩旅を続ける筆者の1年にわたるアフリカ大陸での珠玉のエピソード。
■梅宮創造さん『英国の街を歩く』(彩流社)
街歩きで耳目にふれる看板や人びとの声などの「街にあるメッセージ」を観察してみると、そこには英国文化ならではの驚きが。豊富な写真とともに「英語」を楽しむエッセイ。
■滝澤恭平さん『ハビタ・ランドスケープ』(木楽舎)
日本37地域を歩き、そこに棲む人々の風景からその土地の物語を読み解く。まちづくりの専門家である筆者が紡ぎ出す風土の物語。
■ナカムラクニオさん『世界の本屋さんめぐり』(産業編集センター)
その国の本屋を訪れれば、その国がわかる!旅先で本屋を訪れるという新しい楽しみ方を実践したブックカフェの店長による世界35ヵ国の本屋案内。
■芦原伸さん『ラストカムイ 砂澤ビッキの木彫』(白水社)
北海道からカナダ、そして鎌倉へ。没後30年、今また見直される異能のアイヌ彫刻家 砂澤ビッキの生涯と足跡を辿る紀行ドキュメンタリー。
■乙武洋匡さん『ただいま、日本』(扶桑社)
日本を飛び出した著者が、電動車椅子で海外移住も視野に入れた世界一周の旅へ! LGBTQ、障害者、難民……。世界のマイノリティと触れ合い、あらたに見えた日本社会の姿とは。
■坂田ミギーさん『旅がなければ死んでいた』(ベストセラーズ)
失恋と過労で、心身ともに瀕死状態で出発した、アラサー・独身・彼氏なしの世界一周ひとり旅。行き詰まり・生きづらさを感じているすべての人を勇気づける奇跡の旅行記。
■岡本仁さん『また旅。』(京阪神エルマガジン社)
旅の時間だけがもたらすもの。密やかでスリリングな発見と出会いの連鎖。6年かけて、撮った・歩いた・食べた。「あたらしい日本地図」を描く『暮しの手帖』連載の旅エッセイ。
旅の断片 若菜晃子 (著) 未知なる国へ、未知なる自分へ。小冊子「murren」編集・発行人、若菜晃子『街と山のあいだ』に続く待望の随筆集。 登山の専門出版社の編集者を経て文筆家として活躍している著者による、待望の随筆集第2弾。さまざまな国の風景や人との交流、旅を通じて広がってゆく思考を、静謐な文章でまっすぐに綴ります。個人的な旅の記憶が濃やかに表現され、読者も体感できる情緒豊かな一冊。 【出版社からのコメント】 |
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