本のページ

SINCE 1991

春陽堂書店が「文学」と「言葉」をテーマに新シリーズ「春陽堂ライブラリー」の刊行を開始 第1弾は真銅正宏さん『匂いと香りの文学誌』

「春陽堂ライブラリー」ロゴマーク

「春陽堂ライブラリー」ロゴマーク

尾崎紅葉、泉鏡花、夏目漱石などの文豪の作品を発表してきた老舗出版社の春陽堂書店は、文学や人文学の新シリーズとして、「春陽堂ライブラリー」の刊行を開始しました。

ラインナップの主なテーマは「文学」と「言葉」。明治、大正期の文豪たちの作品を数多く発表してきた出版社として、過去の名作の読み直しや作家の再評価を通し、ひろく「人間とは何か」を考える書籍の刊行を予定しています。

 

キャッチコピーは、「本によって世界が変わる。読者が世界をどう見るのかを変える」

「春陽堂ライブラリー」は、情報技術の進歩やAIの登場で改めて人間の考える力が求められている昨今、そのためのヒントになるような論考、新しい発想やものの見方を変える知識を読者へ届けるシリーズとして創刊されました。

 
シリーズ第1弾は、日本近代文学の研究者・真銅正宏さんの『匂いと香りの文学誌』です。

文学における感覚表現の研究を中心に文学論の著書を刊行してきた真銅さんが、「嗅覚」と「文学」のかかわりを論じています。

帯の推薦文は脳科学者の茂木健一郎さん。「古今東西の名作という素材を匂いや香りというスパイスを通してアレンジし、提供する著者の技量は卓越している」という言葉を寄せています。

 
本シリーズの刊行はおよそ隔月1点。すべてのタイトルで紙の書籍の刊行と同時に電子書籍版も配信。また書籍に関連付けたイベントも開催することで、著者と読者をつなぐことができるような試みも予定されています。

 
<ロゴマークについて>

シリーズのロゴマークは春陽堂の「S」をモチーフに、アドリアン・フルティガーの字体から新たな構造を生成されました。下部に点で描かれた円は知識の海を、その上に浮かぶ「S」は白鳥もイメージしています。

 

「春陽堂ライブラリー」第1弾『匂いと香りの文学誌』について

『匂いと香りの文学誌』書影

『匂いと香りの文学誌』書影

「古今東西の名作という素材を匂いや香りというスパイスを通してアレンジし、提供する著者の技量は卓越している。
官能と深淵が立ち上がる。あるいは生命そのもの。」―― 茂木健一郎さん

文学の香りを読む!
五感のうちでも、最も記憶と結びつきやすいと云われる嗅覚。『失われた時を求めて』に代表されるように、その感覚を表現した文学作品は数多くある。
小説のなかの魅力的な匂いと香りを楽しむことは、読書という行為をより豊かなものにするだろう。
「におわないこと」が重視され嗅覚を使う機会の減った現代だからこそ、香り立つ文章の楽しみ方を伝授する。
ブックガイドとしても楽しめる一冊。

 
<本書の目次>

第1章 人の身体の匂い/第2章 香水と花の文化/第3章 異国の匂い──巴里/第4章 異国の臭い──上海/第5章 匂いと嫉妬/第6章 湯と厠とこやしの臭い/第7章 発酵と美味しい匂い/第8章 記憶と幻臭/第9章 木と雨と空気の匂い/第10章 言葉と香り

 
<本書に取り上げられている主な作品>

古井由吉「杳子」/田山花袋「蒲団」/大岡昇平「武蔵野夫人」/田村俊子「憂鬱な匂ひ」/村上春樹「羊をめぐる冒険」/夏目漱石「それから」/三島由紀夫「沈める滝」/赤江曝「オイディプスの刃」/永井荷風『ふらんす物語』/薩摩治郎八『ぶどう酒物語』/柳沢健『三鞭酒の泡』/横光利一「上海」/金子光晴「どくろ杯」/堀田善衛『上海にて』/武田泰淳「上海の蛍」/若江得行『上海生活』/林京子「上海」/薄田泣菫「女房を嗅ぐ男」/織田作之助「夜の構図」/川端康成「眠れる美女」/嘉村礒多「業苦」/尾崎紅葉「金色夜叉」/谷崎潤一郎「厠のいろ??」「少将滋幹の母」/尾崎翠「第七官界彷徨」/小泉武夫『くさいはうまい』/宮本輝「にぎやかな天地」/開高健『小説家のメニュー』/村上春樹「土の中の彼女の小さな犬」/堀辰雄「麦藁帽子」/加納作次郎「乳の匂ひ」/三好十郎「肌の匂い」/小川未明「感覚の回生」/村上春樹「午後の最後の芝生」/村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」/北原白秋「新橋」/森茉莉「甘い蜜の部屋」/永井荷風「墨東綺譚」/幸田露伴「香談」

 
<真銅正宏(しんどう・まさひろ)さん プロフィール>

1962年、大阪府生まれ。神戸大学大学院単位所得退学。徳島大学総合科学部助教授、同志社大学文学部教授を経て、現在、追手門学院大学国際教養学部教授。専攻は日本近現代文学。2016年、博士(文学)(神戸大学)。

主な著書に、『永井荷風・音楽の流れる空間』(世界思想社、1997年)、『ベストセラーのゆくえ』(翰林書房、2000年)、『偶然の日本文学』(勉誠出版、2014年)、『触感の文学史』(勉誠出版、2016年)などがある。

 

春陽堂ライブラリー 今後の予定

■2020年1月刊行予定
中村隆之さん(早稲田大学・カリブ海文学)
『野蛮の言説』(仮) 

■2020年3月刊行予定
大原祐治さん(千葉大学・近代文学)
『坂口安吾の戦争と歴史』(仮)

■2020年春以降
◎大橋毅彦さん(関西学院大学・近代文学)『亡命ユダヤ人美術家 D・L・ブロッホへの旅』(仮)
◎溝井裕一さん(関西大学・ドイツ文学)・ 細川裕史さん(阪南大学・社会言語学)『ロストワールド 近代西洋の「未知生物」ハンターたちの記録』(仮)
◎広岡祐さん(ライター、日本近代史)『観光NIPPON いまふりかえる昭和の旅』(仮)
◎中垣恒太郎さん(専修大学・アメリカ文学)『マリリン・モンローの本棚』(仮)

 

匂いと香りの文学誌 (春陽堂ライブラリー)
真銅正宏 (著)

五感のうちでも、最も記憶と結びつきやすいと云われる嗅覚。『失われた時を求めて』に代表されるように、その感覚を表現した文学作品は数多い。小説のなかの魅力的な匂いと香りを楽しむことは、読書という行為をより豊かなものにする。「におわないこと」が重視され、嗅覚を使う機会の減った現代だからこそ、香り立つ文章の楽しみ方を伝授する。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です