没後80年記念『現代語訳版 泉鏡花』が刊行1ヶ月で重版 「現代語を現代語に訳した作品」としてSNSで賛否

(C)朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA イラスト/春河35
KADOKAWAは、8月30日に刊行した単行本『本当にさらさら読める!現代語訳版 泉鏡花 [怪異・幻想]傑作選』(監修&解説:秋山稔さん〔金沢学院大学学長/泉鏡花記念館館長〕/訳:白水銀雪さん)の重版を決定しました。
没後80年記念作!人気コミック『文豪ストレイドッグス』とのコラボ帯も話題
本書は、明治~昭和初期に活躍した文豪の作品ということで、少部数での発行だったにも関わらず、刊行前から「現代語を現代語に訳した作品」としてSNSで賛否をめぐる話題が拡大し(一部のツイートは4桁のリツイートを記録)、結果として、品切れになる書店も出るという異例の出足となりました。
早くも出る今回の2刷では、人気コミック『文豪ストレイドッグス』の泉鏡花(女性キャラにアレンジされたもの)のイラストを採用し、同作の原作者・朝霧カフカさんの推薦も得た新しいオビにて出荷を行い、結果として、その事実もさらにSNSで話題化(ツイッターでは半日で4桁の「いいね!」を獲得)しています。
泉鏡花没後80年を記念した本作の、「近代の文豪の作品を、21世紀を生きる我々の現代語に訳す」というチャレンジングな試みが、泉鏡花の魅力を知るための1つの選択肢となり、入門書として支持され、泉鏡花のファン層の拡大に繋がったようです。
担当編集者 コメント
発売前からSNS等で、「泉鏡花の美しい現代語を、さらに現代語訳するとは何事か!」といった声も一部に、頂いておりました。また、「このような本が出る、現代人のリテラシーの低下を嘆く」といった声もございました。
しかし、「泉鏡花を読んでみたいが、歯ごたえのある文体のせいで、有名作ゆえ情報の多い『高野聖』以外は読めていない」、「『天守物語』に関して、舞台で感動し、書籍を手にとったが、文体が難解で、途中で挫折した」といったことも、以前から、非常によく言われてきたこともまた事実です。
無論、鏡花の作品は古文ではないものの、その執筆活動時期は現代からかなり隔たっていますし、「現代語」の語義――今現在、一般に広く使われている言葉および文章・文体――に照らしても、それに合致するとは言い難いでしょう。
「鏡花の原文を神聖不可侵とし、現代人のリテラシーの低さを嘆いているばかりで、一部の限られた人だけが鏡花の読者となる状況がどんどん進むのは、良いことなのだろうか」
「鏡花作品をやや難解たらしめている二主因、「省略」と「錯綜」に対処するとともに、上の語義に即した現代語とすることで、より広く鏡花作品に親しんで欲しい」
――それが、本書発刊のそもそもの動機となります。
訳者・監修者様のご尽力により、鏡花の意図に極力即したストイックな現代語訳で本を仕上げることができたのではないか、といささか自負も致しております(帯にあります、「今、練達の現代語訳でよみがえる鏡花の妖美」というご推薦の辞は、泉鏡花研究の権威である、監修者 秋山先生のお言葉です)。
本書が「原作に取って代わりうるものになる」などとは決して考えてはおりませんが、より多くの方が泉鏡花の魅力に目覚める「入門書」、鏡花の美と怪異の世界へ入り込む「1つの選択肢」として、本書が現代で、より広く手に取られることを願ってやみません。
本書の収録作品
【収録作品】
◎龍潭譚(りゅうたんたん)
◎高野聖(こうやひじり)
◎天守物語(てんしゅものがたり)
◎眉かくしの霊(まゆかくしのれい)
◎雛がたり(ひながたり)
◎絵本の春(えほんのはる)
◎妖僧記(ようそうき)
著者・監修者・訳者プロフィール
■著者:泉鏡花
1873年(明治6年)、石川県金沢市に生まれる。浪漫と幻想の世界を描き続けた小説家・劇作家。1939年(昭和14年)、没(享年65)。9歳の頃に母・鈴を亡くし(享年28)、その母への思慕の念を死ぬ間際まで懐き続けた。
18歳のときに尾崎紅葉の門下に入り、明治時代の半ばから創作活動を開始、大正、昭和にかけて、300編あまりの作品を生み出した。
■監修:秋山稔さん
1954年、千葉県生まれ。博士(文学/慶應義塾大学)。1981年、慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。その後、都立高校教諭を経て、1988年、金沢女子大学文学部講師に。現在は、金沢学院大学学長・泉鏡花記念館館長。
■訳:白水銀雪さん
1966年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了・博士課程中退。専攻は数学。システムエンジニア・プロジェクトマネージャー・コンサルタントとして、宇宙分野を中心とする科学技術系システム開発に従事。現在は蓼科にて山暮らし。
本当にさらさら読める!現代語訳版 泉鏡花 [怪異・幻想]傑作選 泉 鏡花 (著), 秋山 稔 (監修), 白水銀雪 (翻訳) 芥川龍之介と同時代の大人気作家、泉鏡花はさらさら読めるとこんなに面白い 人気アニメ『文豪ストレイドッグス』等にも登場し、知名度抜群の文豪「泉鏡花」だが、実際は、その(大変な美文ながらも)少々歯ごたえのある文体から、多くの挫折者を生み出してきたのもまた事実。 |
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