【2024年本屋大賞】宮島未奈さん『成瀬は天下を取りにいく』が受賞
「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」を決める「2024年本屋大賞」の受賞作が決定しました。
デビュー作にして前代未聞の14冠、40万部突破を果たした話題作『成瀬は天下を取りにいく』が大賞
2024年本屋大賞では、一次投票には全国の530書店より書店員736人、二次投票では342書店、書店員443人がノミネート作品をすべて読んだ上でベスト3を推薦理由とともに投票しました。順位は次の通りです。
【ノミネート作品 順位】
大賞:宮島未奈さん『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)
2位:津村記久子さん『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
3位:塩田武士さん『存在のすべてを』(朝日新聞出版)
4位:夏川草介さん『スピノザの診察室』(水鈴社)
5位:多崎礼さん『レーエンデ国物語』(講談社)
6位:川上未映子さん『黄色い家』(中央公論新社)
7位:青山美智子さん『リカバリー・カバヒコ』(光文社)
8位:凪良ゆうさん『星を編む』(講談社)
9位:知念実希人さん『放課後ミステリクラブ 1 金魚の泳ぐプール事件』(ライツ社)
10位:小川哲さん『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社)
大賞を受賞した受賞者の宮島未奈さんは、1983年生まれ、静岡県富士市出身。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒業。2018年「二位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞を受賞(「宮島ムー」名義)。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞し、同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビューしました。
『成瀬は天下を取りにいく』は、滋賀県大津市に住む中学二年生・成瀬あかりが主人公。コロナ禍真っ只中の2020年の夏休み、地元の「西武大津百貨店」が閉店すると聞き、「この夏を西武に捧げようと思う」と宣言して毎日通い始める――そんな我が道をまっすぐにいく成瀬あかりの姿が、読者の方々から熱烈な支持を集め、デビュー作ながら「坪田譲治文学賞」や「静岡書店大賞」「キノベス!2024」など数々のブックアワードに輝きました。このたびの「2024年本屋大賞」受賞で、なんと14冠。現時点で14刷40万部突破を果たす大ヒット作となりました。なお、続編である『成瀬は信じた道をいく』も1月から発売中です。
翻訳小説部門はファン・ボルムさん×牧野美加さん『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』が受賞!
2024年本屋大賞の翻訳小説部門の結果は次の通りです。
1位:ファン・ボルムさん『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(訳:牧野美加さん/集英社)
2位:ホリー・ジャクソンさん『卒業生には向かない真実』(訳:服部京子さん/東京創元社)
3位:キム・ホヨンさん『不便なコンビニ』(訳:米津篤八さん/小学館)
翻訳小説部門で第1位となった『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者ファン・ボルムさんは、小説家、エッセイスト。大学でコンピューター工学を専攻し、LG電子にソフトウェア開発者として勤務しました。転職を繰り返しながらも、「毎日読み、書く人間」としてのアイデンティティーを保っています。著書に『毎日読みます』『生まれて初めてのキックボクシング』『このくらいの距離がちょうどいい』(いずれもエッセイ、未邦訳)。新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描いた受賞作『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』は著者の初となる長編小説。
また、訳者の牧野美加(まきの・みか)さんは、1968年生まれ、大阪府出身。釜慶大学言語教育院で韓国語を学んだ後、新聞記事や広報誌の翻訳に携わりました。第1回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」最優秀賞を受賞。訳書にチェ・ウニョン『ショウコの微笑』(共訳、クオン)、チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』(クオン)、ジェヨン『書籍修繕という仕事:刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』(原書房)など多数。
発掘部門「超発掘本!」は井上夢人さん『プラスティック』に決定!
本屋大賞「発掘部門」はジャンルを問わず、2022年11月30日以前に刊行された作品のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと思う本をエントリー書店員が一人1冊選び、さらにその中から、これは!と共感した1冊を実行委員会が選出し〈超発掘本!〉として発表」されます。
今回、『99%の誘拐』『ラバー・ソウル』などさまざまな切り口で斬新なミステリーで、ファンを魅了し続ける井上夢人さんの名作『プラスティック』(講談社文庫)が〈超発掘本!〉に選出されました。
受賞者の井上夢人(いのうえ・ゆめひと)さんは、1950年生まれ。1982年に徳山諄一さんとの共作筆名・岡嶋二人(おかじま・ふたり)として『焦茶色のパステル』で第29回江戸川乱歩賞を受賞。1986年『チョコレートゲーム』で第39回日本推理作家協会賞長編賞受賞し、1989年『99%の誘拐』で第10回吉川英治文学新人賞受賞後、同年『クラインの壺』刊行と同時にコンビを解消します。1992年『ダレカガナカニイル…』でソロとして再デビュー。他の著書に『メドゥサ、鏡をごらん』『オルファクトグラム』『the TEAM』『あわせ鏡に飛び込んで』『魔法使いの弟子たち(上・下)』『ラバー・ソウル』など。
本屋大賞について
本屋大賞は、出版不況の中、「商品である本と、顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が、売れる本を作っていく、出版業界に新しい流れをつくる、ひいては出版業界を現場から盛り上げていけないか」という趣旨で設立され、「NPO法人 本屋大賞実行委員会」が運営。書店(オンライン書店を含む)の書店員の投票によってノミネート作品および受賞作が決定されます。
![]() | 成瀬は天下を取りにいく 宮島 未奈 (著) 成瀬の天下取り! 「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。 2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。 |
![]() | ようこそ、ヒュナム洞書店へ ファン・ボルム (著), 牧野 美加 (翻訳) 完璧な人生なんてないけれど、「これでいい」と思える今日はある。 ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。 新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。 |
![]() | プラスティック (講談社文庫) 井上 夢人 (著), 田中 博 (解説) 54個の文書ファイルが収められたフロッピイがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。(講談社文庫) 人間のアイデンティティーの脆さを抉る傑作。フロッピーディスクに収められた54個の文書ファイル。そこに記された主婦・向井洵子の奇妙な日記。次第に日常を逸脱し、世界が崩壊する恐怖を描く異色ホラー! |
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