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「ドラゴン桜」三田紀房さん〈災い転じて福となす〉半生記『ボクは漫画家もどき』が刊行

『ドラゴン桜』『インベスターZ』『アルキメデスの大戦』などで知られる漫画家・三田紀房さんが赤裸々に語った「災い転じて福となす」半生記『ボクは漫画家もどき』が講談社より刊行されました。

 

20代で約1億円の借金を抱えた洋品店の店主は、いかにしてベストセラー漫画家になったのか?

『ドラゴン桜』『アルキメデスの大戦』『クロカン』等のヒット作で知られるベストセラー漫画家・三田紀房さんは、30歳を過ぎて漫画家になるまで、自分が漫画家になることなどまったく想定していなかったそうです。

それどころか、子供の頃から、「とりたてて優れたところもなく、ごく普通の子供で、何者かになりたいなどと考えたこともなかった。だから『将来の夢は?』と聞かれることがとても嫌だった」といいます。

 
そんな三田さんが、30歳を前にして、人生の大ピンチがきっかけとなって漫画家を目指し、デビューしてからも10年、ヒット作がなくてもなんとか漫画誌でポジションを確保して描き続け、ついには大ヒットドラマの原作となるベストセラーを生みました。

 
その半生は、あまりにもユニークで、人生の指標となる多くの示唆を含んでいます。スポーツ選手、芸能人、起業家として成功者になれるのは才能に恵まれたごく一部の人間に過ぎない。ほとんどの凡人は、子供の頃に抱いた夢に破れ、生き続けていくことになる。それが現実であっても、目の前にある「今、自分にできることに専心すること」がいかに大切かを、教えてくれる一冊です。

代表作の『ドラゴン桜』

代表作の『ドラゴン桜』

漫画家として飛躍のきっかけとなった『クロカン』

漫画家として飛躍のきっかけとなった『クロカン』

 

本書「まえがき」より

僕は漫画家です。漫画を制作し、発表し、販売し、利益を得て生活をしています。職業を尋ねられれば漫画家と答えるし、世間的にも僕は漫画家だと認識されていると思います。

 
しかし、僕には、漫画家として生計を立て始めた頃から、ずっと心の奥底に貼り付いている意識があります。それは自分が「漫画家のようなもの」という自覚です。言うなれば僕は「漫画家もどき」なのです。

 
三十歳でデビューし、六十歳半ばまで描き続けているのだから漫画家であることは紛れもない事実ですが、はたして中身は本当に漫画家と言えるだろうかという疑問が時折湧いてくるのです。

(中略)

僕は自分というものを信用していません。僕は「自分らしく」ありたいとは思わない。「本当の自分」など知りたくもない。知ったら最後、自己嫌悪の谷底に落ちて二度と這い上がれないでしょう。

 
むしろ、「のようなもの」「もどき」の方が本当の自分であって、そういう仮の姿のほうが「自分らしい生き方」ができる。

 
恐らく「真の漫画家」を目指していたなら、途中で挫折していた、いやデビューすら叶わなかったでしょう。

 
この本の内容は、夢や目標を持って努力を重ね、ありのままの自分を表現して、さらなる成長を目指して啓発に勤しむ方々には、ひとつも参考にならないと断言します。

 
逆に自分の存在感を示すことに息苦しさを感じ、世の中に漠然と流されている不安に駆られ、自分のアイデンティティを見失いがちな人たちには、ささやかな心の支えになり、前置きや練習なしにとにかくやってみようという気持ちになっていただけるかもしれません。
もしそうなれば、僕から漫画界への罪滅ぼしになり、ささやかな恩返しになるでしょう。
振り返ると、少年時代から自分の実体を掴めず、社会の中でずっと浮遊している感覚でした。六十余年の半生、何者にもなれない自分に仮の姿を纏うことで、なんとか社会での自分という存在を実感してきたのかもしれません。

 
漫画家デビューしてからも、そのときどき側にいる人におんぶに抱っこで、運を持ってる人に便乗してチャンスを待ち、生涯アマチュア精神のままで完璧を求めず、発信することに特化したことが功を奏したのではないかと思います。

 
この本の出版を機に僕も開き直ることにします。
「もどきで結構!」
やっと僕の心に決着をつける時がきました。

三田紀房

 

本書の目次

第一章 僕の漫画創作論 非漫画少年が掴んだ創作の秘密
漫画世代でありながら、漫画好きではなかった
十代の頃に浴びるように観たテレビドラマ
最も影響を受けたのは向田邦子のホームドラマ
「コメディで始まり、センチメンタルで終わる」
夢中になること─ それが創作活動の基礎

第二章 僕の生い立ち 商家に生まれ育った夢のない少年
田舎の商店街にある仕立屋さんの末っ子
「将来の夢は何?」と聞かれるのがイヤだった
絵を描いて賞をもらう─ コツを掴むのが得意だった
三田家の大変革 商売替えという父の決断
神風が吹いた VAN、来たる!
商売人としての父の才覚
剣道との偶然の出会い

第三章 剣道一色の青春時代
進学校の落ちこぼれ
伝統の黒北剣道部「今日こそやめてやる」
体調不良でふらふらのピンチに、コツを掴む
大学受験はあっさり玉砕

第四章 ひたすら地味な東京生活の中に埋もれていた〈幸運の種〉
新宿、渋谷も知らず、アハ゜ートと予備校の往復
明治大学入学 花のキャンパスライフ、スタート?
六大学の強豪・明治大学体育会剣道部入部!
漫画家・村上もとかさんとの出会い
学ラン効果は絶大。なんとなく百貨店に就職

第五章 三十歳の遅咲き漫画家デビュー ピンチはチャンスだった!
父倒る。家業を手伝うため、退職して帰郷
な、なんと借金一億円近くも!
「カネが欲しい!」だから僕は漫画を描いた
「誤解と偶然」によって、上々の漫画家スタート
漫画家は狭き門ではない
漫画作りに生かした、商売で得た「教訓」

第六章 デビューはしたものの…… 停滞の日々
専業の漫画家となり結婚! そして仕事の依頼は途絶えた
新婚早々ヒモ生活。窮地を救った一本の電話
東京に移住するも、苦しい自転車操業時代

第七章 ターニングポイント! 『クロカン』連載スタート
六年越しのリターンマッチ
「アンケート一位を獲りましょう!」
人気漫画を研究して見つけたヒットの法則
漫画は、お客さんを楽しませてナンボ
なぜ僕は高校野球にこだわったのか
六年前にボツになったことは結果オーライ

第八章 運命の選択からフル回転操業時代へ
「週刊ヤングマガジン」からのムチャぶり原稿依頼
週刊連載二本。毎週四十四ページを休みなしで
同時週刊連載「甲子園へ行こう!」と「クロカン」のストーリー

第九章 『ドラゴン桜』誕生秘話
「モーニング」編集部からやってきた生意気な新人編集者
「バスの行き先理論」でアンケート急上昇!
『ドラゴン桜』の原型は『クロカン』にあった
一番優秀な伴走者

第十章 漫画家人生第二ステージ
漫画の価値を最大化する取り組みと新たな漫画の可能性への挑戦
旧尾崎邸プロジェクトで日本の漫画を世界に発信する夢の事業

 

著者プロフィール

三田紀房(みた・のりふさ)さんは、1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。

代表作に『ドラゴン桜』『インベスターZ』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』『甲子園に行こう!』『アルキメデスの大戦』など。『ドラゴン桜』で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。

 

ボクは漫画家もどき イケてない男の人生大逆転劇
三田 紀房 (著)

『ドラゴン桜』『クロカン』『アルキメデスの大戦』などのヒット作で知られるベストセラー漫画家・三田紀房さんは、30歳になるまで漫画家になることなど夢想もしていなかった。
それどころか、子どもの頃は「とりたてて人並み優れたところもなく、何かに憧れるということもなかった。だから、人から『将来の夢は?』と聞かれることがとても嫌だった」という。
そんな子供時代から始まった人生は、時折とんでもない不運に見舞われるのだが、のちのち振り返ってみれば、その不運そのものが幸運へのきっかけになっており、まるで「人間万事塞翁が馬」の故事を地で行くような半生を送ってきたのだ。
夢のない少年時代、図らずも巨大な借金を背負うことになった20代、漫画を描いても描いても売れなかった30代。そんな彼が億の金を稼ぐようになった。その大逆転の根底には、三田さん独特のユニークな考え方があった。
この三田さんの思考方法は、今現在、窮地に陥っている中高年、将来に夢を抱けない若者たちにとって、大いなる参考になるはずだ。

 


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