ふかわりょうさんの不器用すぎる日常を綴った人気エッセイ『世の中と足並みがそろわない』が文庫化 文庫解説は綿矢りささん
ふかわりょうさんの不器用すぎる日常を綴った人気エッセイ集『世の中と足並みがそろわない』が文庫化され、新潮文庫より刊行されました。文庫解説は綿矢りささんが担当。
・「三軒茶屋」を「三茶」と略せない。
・AIにおすすめされる曲なんて聴きたくない。
・トイレに飾られた「筆文字の詩」に心が淀む。
あなたは、いくつ共感できますか? ふかわりょうさんの、独特なこだわりに満ちた日常をご堪能ください。
この面倒くささがクセになる……!
本作は2020年に発売され2万部以上を売り上げた同名作品の文庫化なのですが、意外にも著者初の文庫本という記念すべき作品でもあります。
ふかわりょうさんと言えば、「シュールなあるあるネタの元祖」「テレビ番組のMC」「ミュージシャン」「クラブDJ」など様々な顔を持つことは既に知られていますが、ぜひそこにもうひとつ「エッセイスト」という肩書も追加してください。ご本人は「マルチタレント」と呼ばれることに嫌悪感を示されているようですが、「マルチ(複数の)タレント(才能)」があることは、本書を読めば疑いようがありません。
本作にはふかわさんの独特なこだわりについて描かれたエッセイが多数登場しますが、この文庫本の装幀や帯にも、それが目いっぱい詰め込まれています。特に、一頭だけいるヘッドホンをした羊は、ふかわさんのこだわりなしでは生まれなかったことでしょう。帯がかかった状態だと、ちょろっと頭だけが見えるのもポイントです。
そんな、エッセイスト・ふかわりょうの魅力が詰まった一冊。「ふかわさん、不器用すぎます……!」と思いながら読み進めるうちに、「あれ、なんかちょっと分かるかも」と共感してしまう不思議なふかわワールドを、ぜひお楽しみください。
【内容紹介】
女性を下の名前で呼べない。「二子玉(にこたま)」と言いたくない。可愛げある「隙」が作れない。そもそも、この本のタイトルがやっぱり気に入らない――。
世の中と折り合えない「不器用すぎる芸人」ふかわりょうが、日頃から抱く些細な違和感をタネに縦横無尽に持論を展開。ここで出会ったのも何かの縁。その独特なこだわりに呆れつつも、くすりと共感してしまう、歪で愉快なふかわワールドをご堪能あれ。
綿矢りささんの解説より
本書には、ふかわさんの小さな気づきが豊富に描かれている。地名や名称を略す人にデリカシーの無さを感じたり、食べ物は適量だと美味しいしもっと食べたいとさえ思うのに、食べ放題になった途端、地獄の入り口が見えてくることだったり。気づく度にふかわさんは戸惑い、自分がどうしてそう思うのかを精査し、じゃあ自分ならどうしていけばいいかを熟考する。なぜ気になるのか? どうして気にならない人がいるのか? 生活に馴染ませるために、自分なりにしっくりくるためにはどんな風に馴らせばいいのか? 私が日常生活で見ている世界とは全然違う。自分も細かいことは気になる質だけど、向かってるベクトルがなんか違う。ん? とは思いつつも深掘りも自己反省もしないまま普通なら通り過ぎるところを、ふかわさんは立ち止まって観察している。その過程を読んでいると、すごく解像度の高い、でも酔ったりしない不思議なメガネを手に入れた気分になる。
著者プロフィール
ふかわりょうさんは、1974(昭和49)年生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学在学中の20歳でお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘア・ターバンを装着し、「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。以降、テレビ・ラジオ出演、執筆、DJ等、活動は多岐に渡るが、「マルチタレント」と呼ばれることに強い嫌悪感を示している。
著書に『ひとりで生きると決めたんだ』、『スマホを置いて旅したら』、アイスランド旅行記『風とマシュマロの国』など。著者初の文庫化となる本書だが、本人は依然としてタイトルを気に入っていない。
世の中と足並みがそろわない (新潮文庫) ふかわ りょう (著) 愛すべき「不器用すぎる芸人」ふかわりょうのユニークな日常 【目次】 解説:綿矢りさ |
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