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第45回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」最終候補作が決定! 伊澤理江さん『黒い海』など6作品

講談社は5月31日、令和5年度(第45回)「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」の最終候補作品を発表しました。

 

第45回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」最終候補作品が決定!

第45回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」の最終候補作品は次の通りです。なお、受賞作は7月20日に決定する予定です。

 
【第45回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」最終候補作品】

◎伊澤理江(いざわ・りえ)さん
『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(講談社)

◎伊藤喜之(いとう・よしゆき)さん
『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社)

◎齊藤彩(さいとう・あや)さん
『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社)

◎永田豊隆(ながた・とよたか)さん
『妻はサバイバー』(朝日新聞出版)

◎星野博美(ほしの・ひろみ)さん
『世界は五反田から始まった』(ゲンロン)

◎森功(もり・いさお)さん
『国商 最後のフィクサー葛西敬之』(講談社)

 

「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」について

「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」は、講談社が主催するノンフィクションを対象とした文学賞です。1979年に創始された「講談社ノンフィクション賞」を2019年(第41回)より改称。

講談社が2019年に創業110周年という節目の年を迎えるにあたり、戦後日本を代表するノンフィクションの書き手の一人・本田靖春さん(1933~2004)の名を冠することとなりました。ちなみに、本田さん自身も第6回講談社ノンフィクション賞の受賞者です。

 

黒い海 船は突然、深海へ消えた
伊澤 理江 (著)

その船は突然、深海へ消えた。
沈みようがない状況で――。

本書は実話であり、同時にミステリーでもある。

2008年、太平洋上で碇泊中の中型漁船が突如として沈没、17名もの犠牲者を出した。
波は高かったものの、さほど荒れていたわけでもなく、碇泊にもっとも適したパラアンカーを使っていた。
なにより、事故の寸前まで漁船員たちに危機感はなく、彼らは束の間の休息を楽しんでいた。
周辺には僚船が複数いたにもかかわらず、この船――第58寿和丸――だけが転覆し、沈んだのだった。

生存者の証言によれば、
船から投げ出された彼らは、船から流出したと思われる油まみれの海を無我夢中で泳ぎ、九死に一生を得た。
ところが、事故から3年もたって公表された調査報告書では、船から漏れ出たとされる油はごく少量とされ、船員の杜撰な管理と当日偶然に発生した「大波」とによって船は転覆・沈没したと決めつけられたのだった。
「二度の衝撃を感じた」という生存者たちの証言も考慮されることはなく、5000メートル以上の深海に沈んだ船の調査も早々に実現への道が閉ざされた。
こうして、真相究明を求める残された関係者の期待も空しく、事件は「未解決」のまま時が流れた。

なぜ、沈みようがない状況下で悲劇は起こったのか。
調査報告書はなぜ、生存者の声を無視した形で公表されたのか。

ふとしたことから、この忘れ去られた事件について知った、一人のジャーナリストが、ゆっくり時間をかけて調べていくうちに、「点」と「点」が、少しずつつながっていく。
そして、事件の全体像が少しずつ明らかになっていく。

彼女が描く「驚愕の真相」とは、はたして・・・・・・。

悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味 (講談社+α新書)
伊藤 喜之 (著)

「どこまで書く気やねん」(ガーシー)

社会に混乱と破壊をもたらしながら真の悪を斬る「闇の仕事人」か、あるいはただの時代の「あぶく」として消え去るのか――

ガーシーとその黒幕、そして相棒たち。日本に遺恨を持つ「手負いの者たち」の正体と本音とは。
日本の政治、経済、芸能、メディアの歪がつくりあげた爆弾男……彼らの本当の狙いとは何か、当事者本人が次々と実名で語る!

母という呪縛 娘という牢獄
齊藤 彩 (著)

深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。
2018年3月10日、土曜日の昼下がり。
滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。
周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿が見えなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した――。
髙崎妙子、58歳(仮名)。
遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり(仮名)と二人暮らしだった。
さらに異様なことも判明した。
娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。
結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をしていた。
6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。
一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。

母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
獄中であかりは、多くの「母」や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。
殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。

妻はサバイバー
永田 豊隆 (著)

妻に異変が起きたのは、結婚4年目、彼女が29歳の時だった。摂食障害、アルコール依存症……。介護と仕事、その両立に悩み続けた20年近くにわたる自らの体験を、貧困ジャーナリズム賞受賞歴もある朝日新聞記者が克明に綴る。

世界は五反田から始まった (ゲンロン叢書)
星野 博美 (著)

いつかここが焼け野原になったら、何が何でも戻ってきて、杭を打とう――30年前に手渡された、祖父が残した手記。便箋に綴られていたのは、家族の来歴と、地元五反田を襲った「もうひとつの東京大空襲」の記録だった。戦時下を必死で生きた祖父の目を通して、タワーマンションの光景が町工場の記憶と重なり合う。大宅壮一ノンフィクション賞作家が描いた、東京の片隅から見た等身大の戦争と戦後。

国商 最後のフィクサー葛西敬之
森 功 (著)

安倍晋三射殺で「パンドラの箱」が開き、一気に噴出した日本政財界の闇――
その中心にいたのは、この男だった。
JR東海に君臨し続けた「アンタッチャブルの男」にはじめて迫る。

「本書が解き明かすのは、鉄道をナショナリズムの道具とするため権謀術数を駆使した一人の経営者の半生だ。
結果としてそれが日本の鉄道にどれほど負の遺産ももたらしたか。
重い問いが読後にずっしりと残った」
ーー原武史(政治学者・放送大学教授)

「国鉄改革を足掛かりに政官財界に人脈を張り巡らせ、官邸やNHKをも操る。
自らの繁栄こそ国益だと信じた男と、その権勢を後ろ盾とした長期政権。
この十年の権力の核心に迫る圧倒的ノンフィクション」
ーー松本創(ノンフィクションライター)

禁断の「革マル取り込み」で魑魅魍魎の労働組合を屈服させ、30年以上にわたりJR東海に君臨。
政官界の人事を自在に操り安倍晋三最大の後見人となった。
国を憂い、国を導くその一方で、国益をビジネスに結びつける「国商」と呼ぶべきフィクサーだった。
国鉄解体という戦後最大の難事に身を捧げた改革の闘士は「怪物的黒幕」へといかにして変貌したのか!

 


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