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第36回三島由紀夫賞・山本周五郎賞の候補作品が決定 両賞とも5作品

新潮文芸振興会は4月20日、第36回三島由紀夫賞および第36回山本周五郎賞の候補作品を発表しました。

 

第36回三島由紀夫賞・山本周五郎賞 候補作品

第36回三島賞および山本賞の候補作品は次の通りです。

 
【第36回三島由紀夫賞 候補作品】

◎年森瑛(としもり・あきら)さん「N/A(エヌエー)」(文藝春秋)

◎小池水音(こいけ・みずね)さん「息」(『新潮』2022年10月号)

◎朝比奈秋(あさひな・あき)さん『植物少女』(朝日新聞出版)

◎千葉雅也(ちば・まさや)さん「エレクトリック」(『新潮』2023年2月号)

◎野々井透(ののい・とう)さん『棕櫚(しゅろ)を燃やす』(筑摩書房)

 
【第36回山本周五郎賞 候補作品】

◎浅倉秋成(あさくら・あきなり)さん『俺ではない炎上』(双葉社)

◎荻堂顕(おぎどう・あきら)さん『ループ・オブ・ザ・コード』(新潮社)

◎永井紗耶子(ながい・さやこ)さん『木挽町のあだ討ち』(新潮社)

◎岩井圭也(いわい・けいや)さん『完全なる白銀』(小学館)

◎吉川トリコ(よしかわ・とりこ)さん『あわのまにまに』(KADOKAWA)

 
■選考委員

〔三島賞〕川上未映子さん、高橋源一郎さん、多和田葉子さん、中村文則さん、松家仁之さん

〔山本賞〕伊坂幸太郎さん、江國香織さん、荻原浩さん、今野敏さん、三浦しをんさん

 
なお、最終選考会は5月16日(火)に開催されます。

 

三島由紀夫賞および山本周五郎賞について

三島由紀夫賞と山本周五郎賞はともに、新潮社が設立した「一般財団法人 新潮文芸振興会」が主催。

三島由紀夫賞は、作家・三島由紀夫の業績を記念し、1987年に創設。小説、評論、詩歌、戯曲を対象とし、「文学の前途を拓く新鋭の作品」に贈られる文学賞です。

山本周五郎賞は、大衆文学・時代小説の分野で昭和期に活躍した山本周五郎にちなみ、三島由紀夫賞とともに創設。「すぐれて物語性を有する新しい文芸作品」に贈られる文学賞です。一応、対象となるのは「小説」となっていますが、それ以外の分野でも対象となる可能性があります。

両賞とも、前年4月1日より当年3月31日までに発表された作品が選考対象となります。

 

N/A
年森 瑛 (著)

選考会で異例の満場一致!
第127回文學界新人賞受賞作

松井まどか、高校2年生。
うみちゃんと付き合って3か月。
体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。
――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。

優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。

★★★

文學界新人賞・全選考委員激賞!!
ここには誰のおすみつきももらえない、肉体から絞り出した言葉の生々しい手触りがある。――青山七恵
安易なマイノリティ表現への違和感の表明であり、同時にそのような表明の安易さへの批判でもあるという点で、まさにいま求められる文学なのではないか。――東浩紀
本作には紛うことなき現代を生きる人間が、そして現代がぶち当たっている壁が克明に描かれている。――金原ひとみ
世界が傷つくとみなす事項に対する、最初からの「傷ついてなさ」が、ぐっとくるのだ。――長嶋有
満場一致の受賞となり、今後の活躍を楽しみにしている。――中村文則
主人公にとって、また小説にとって、とても重要なもの、安易に言語化できないものたちが、物語の力によって、この小説の中に確かに存在している。――村田沙耶香


小池 水音 (著)

息をひとつ吸い、またひとつ吐く。生のほうへ向かって――。

喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、息を繋ぐようにして描きだす、各紙文芸時評絶賛の胸を打つ長篇小説。新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併録。注目の新鋭による初めての本。

植物少女
朝比奈 秋 (著)

美桜が生まれた時からずっと母は植物状態でベッドに寝たきりだった。小学生の頃も大人になっても母に会いに病室へ行く。動いている母の姿は想像ができなかった。美桜の成長を通して、親子の関係性も変化していき──現役医師でもある著者が唯一無二の母と娘のあり方を描く。

エレクトリック
千葉 雅也 (著)

性のおののき、家族の軋み、世界との接続――。
『現代思想入門』の哲学者が放つ、待望の最新小説!

1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!

棕櫚を燃やす
野々井 透 (著)

第38回太宰治賞受賞作
「聖なる家族と呼ぶべき一家の物語」――荒川洋治(現代詩作家)

父のからだに、なにかが棲んでいる――。
三十四歳の春野と、五歳年下の妹・澄香と父は、東京の庭付き一軒家に三人で暮らしている。姉妹は家を出たいとも思わず、職を転々としながら、三人で心地よい世界を築いてきた。そんな折、父に残された時間が一年だと知る……。玄関に脱ぎ捨てられた父の靴下、明け方のドライブ、三人で囲むすき焼き鍋。残された家族の日々は、静かで温かく、そして危うい。

喪失へと向かう家族を描く第38回太宰治賞受賞作と、書き下ろし「らくだの掌」を収録。

「築いても築いても、壊してばかりの私がそうやって壊すことができるのは、戻る場所があったからで、それは父だった。湖のような目をした、さもありなんの父がいつも在る。だのに、父は湖の目をどこかに失くし、冷たい音を発している。面倒だから、悲しいだけにさせてよ、そう思う。」(本文より)

俺ではない炎上
浅倉 秋成 (著)

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。
既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。
まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。
会社も、友人も、家族でさえも。
ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。
必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。

ループ・オブ・ザ・コード
荻堂 顕 (著)

小島秀夫氏、貴志祐介氏、東山彰良氏、大森望氏激賞!
混沌の世に捧ぐ、破格のエンタテインメント巨編、誕生。

疫病禍を経験した未来。WEO(世界生存機関)に所属するアルフォンソは、20年前に歴史の一切が〈抹消〉された、かつての独裁国家〈イグノラビムス〉へと派遣される。
いまや多数の欧米企業が参入し、「再生のテーマパーク」とも揶揄される彼の国で、児童200名以上が原因不明の発作に見舞われる奇病を発症、その現地調査を命じられたのだった。
サウダージという言葉に背を向け続けてきた者として、民族のアイデンティティが消去された〈イグノラビムス〉に居心地の良さを覚えはじめるアルフォンソ。しかし、時を同じくして、非常事態が発生。〈抹消〉の元凶となった生物兵器が何者かによって強奪されたのだ。
そして、「悲劇」の再来を恐れたWEO事務総長から、密命を言い渡される……。国家機関単位の任務を、たった数人で遂行することになったアルフォンソたちが辿り着く、衝撃の真実とは、一体。

生命倫理の根幹と善悪の境界を問う、近未来諜報小説の新たな地平。

木挽町のあだ討ち
永井 紗耶子 (著)

疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。
語り草となった大事件、その真相は――。
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの?末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。新田次郎文学賞など三冠の『商う狼』、直木賞候補作『女人入眼』で今もっとも注目される時代・歴史小説家による、現代人を勇気づける令和の革命的傑作誕生!

完全なる白銀
岩井 圭也 (著)

山岳×青春×ミステリ、最大級の感動作

写真家として活動する藤谷緑里はアラスカに向かっていた。シーラと北米最高峰デナリに挑むためだ。
緑里とシーラの旧友、リタ・ウルラクは新鋭の女性登山家として名を馳せていた。リタとシーラの故郷、サウニケは北極海に面した小さな島だが、90年代後半から地球温暖化の影響で海に浸食されている。このままでは島は海に沈む――そんな故郷の危機を世界に知らしめる。それがリタが登山家として名を上げようとした理由だった。だがリタは冬季デナリ単独行に挑み、下山途中に消息を絶ってしまう。頂上から「完全なる白銀」を見た――という言葉を残して。
行方不明となったあと、リタの言動を疑ったマスコミは彼女を<冬の女王>ではなく<詐称の女王>と書き立てた。緑里とシーラは、リタが登頂した証を求めるべくデナリに挑むことに。だが世界最難関の山への登攀は、一筋縄にはいかない。ブリザード、霧、荷物の遺失、高度障害……二人の信頼関係も揺らぐ。さまざまな困難を乗り越え、北米大陸で最も高い地へ手を伸ばす緑里。その先に見えたものとは。
極限の高地だけでなく、社会でも闘う女性たちを描きだす、気鋭の著者の新境地。

【編集担当からのおすすめ情報】
発売前から推薦の声、続々!
「山岳小説の新しい傑作がここに出現した。
読者よ、岩井圭也に瞠目せよ!」――夢枕 獏
「タイムリーなのに普遍的。
理知的なのにエモーショナル。」――恩田 陸

あわのまにまに
吉川 トリコ (著)

どれだけの秘密が、この家族には眠っているんだろう――

「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした?
2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、ある家族たちをとりまく真実。

あの時代、確かにそうやって、わたしたちは生きていた。
隠されていた「わたしたちの秘密」を理解したとき、あなたは平常心でいられるか。

『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞した著者が放つ、生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」を揺らがせる逆クロニクル・サスペンス。

〈世相をえぐり取る全6章〉
1 二〇二九年のごみ屋敷
2 二〇一九年のクルーズ船
3 二〇〇九年のロシアンルーレット
4 一九九九年の海の家
5 一九八九年のお葬式
6 一九七九年の子どもたち

 


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