【第21回小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞】小林秀雄賞は竹内康浩さん&朴舜起さん『謎ときサリンジャー』、新潮ドキュメント賞は鈴木忠平さん『嫌われた監督』が受賞
新潮社は8月26日、第21回小林秀雄賞および第21回新潮ドキュメント賞の選考結果を発表しました。
両賞とも、受賞作には記念品および副賞として100万円が贈られます。贈呈式は10月7日(金)、都内にて開催。
第21回小林秀雄賞 受賞作品
第21回小林秀雄賞の受賞作品は次の通りです。
<第21回小林秀雄賞 受賞作品>
竹内康浩(たけうち・やすひろ)さん・朴舜起(ぼく・しゅんき)さん
『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』(新潮社)
選考委員は、片山杜秀さん、國分功一郎さん、関川夏央さん、堀江敏幸さん、養老孟司さん。
〔授賞理由〕
サリンジャーの短篇「バナナフィッシュにうってつけの日」からここまで論を豊かに展開した。
単なる「研究」から飛び出し、「謎とき」以上の次元に到達している。
ストイックなまでに、テキストに純粋に向き合った姿勢を評価する。(文責・新潮文芸振興会事務局)
<受賞者プロフィール>
■竹内康浩(たけうち・やすひろ)さん
1965年生まれ、愛知県半田市出身。東京大学文学部卒業。北海道大学大学院文学研究院教授。『Mark X: Who Killed Huck Finn’s Father?(マークX 誰がハック・フィンの父親を殺したか)』がアメリカ探偵小説クラブ賞(エドガー賞)の評論・評伝部門で日本人初の最終候補となる。著書に『謎とき『ハックルベリー・フィンの冒険』 ある未解決殺人事件の深層』(新潮社)など。
■朴舜起(ぼく・しゅんき)さん
1992年兵庫県西宮市生まれ、鳥取県境港市出身。立教大学文学部英米文学専修を卒業後、サリンジャー研究を志し、北海道大学大学院に進学。2021年8月現在、同文学院欧米文学研究室博士課程3年。ハーマン・メルヴィルやワシントン・アーヴィングなど19世紀アメリカ文学からイアン・マキューアンをはじめとする現代イギリス文学まで幅広く研究中。
第21回新潮ドキュメント賞 受賞作品
第21回新潮ドキュメント賞の受賞作品は次の通りです。
<第21回新潮ドキュメント賞 受賞作品>
鈴木忠平(すずき・ただひら)さん
『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)
選考委員は、池上彰さん、梯久美子さん、櫻井よしこさん、藤原正彦さん、保阪正康さん。
〔授賞理由〕
圧倒的な取材力と落ち着いた筆致、巧みな構成で、中日監督だった落合博満と12人の選手を通じて人生を描き出した。いま読まれるべき、圧巻のノンフィクションである。(文責・新潮文芸振興会事務局)
<受賞者プロフィール>
1977年生まれ、千葉県出身。名古屋外国語大学卒業。日刊スポーツ新聞社でプロ野球記者として16年間勤務し、2016年に退社。2019年まではNumber編集部に所属して現在はフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』(文藝春秋)、取材・構成本に『清原和博 告白』『薬物依存症』(ともに清原和博さん著、文藝春秋)。
本作で第53回大宅壮一ノンフィクション賞と第44回講談社 本田靖春ノンフィクション賞を受賞。
なお、第21回新潮ドキュメント賞の候補作は以下の5作品でした。
【新潮ドキュメント賞 候補作】
◎鈴木忠平さん『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)
◎太田泰彦さん『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』(日本経済新聞出版)
◎川口穣さん『防災アプリ 特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)
◎永田和宏さん『あの胸が岬のように遠かった―河野裕子との青春―』(新潮社)
◎末並俊司さん『マイホーム山谷』(小学館)
小林秀雄賞および新潮ドキュメント賞について
新潮ドキュメント賞と小林秀雄賞は、ともに財団法人「新潮文芸振興会」が主催。以前は、新潮学芸賞の名称で2001年まで開催されていましたが、2002年からノンフィクションを対象とする新潮ドキュメント賞と、評論・エッセイを対象とする小林秀雄賞とに分離しています。
小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外で「自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品」に授与されます。
新潮ドキュメント賞はノンフィクションを対象とし、「ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品」に授与される文学賞です。
両賞とも第21回は、令和3年7月1日から令和4年6月30日までを対象期間としています。
謎解きサリンジャー: 「自殺」したのは誰なのか (新潮選書) 竹内 康浩 (著), 朴 舜起 (著) あの名短編のラストが実は「事件」だった? 驚天動地、圧巻の評論登場。「バナナフィッシュにうってつけの日」のラストは主人公の自殺ではなかった!? 前代未聞の問いは天才作家の作品世界全体に及び、やがては『ライ麦畑』までが……。世界最高峰のミステリ賞〈エドガー賞〉の評論・評伝部門で日本人初の最終候補となった「文学探偵」が弟子と読み解く新たなサリンジャーの世界。 |
嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか 鈴木 忠平 (著) なぜ 語らないのか。 中日ドラゴンズで監督を務めた8年間、ペナントレースですべてAクラスに入り、日本シリーズには5度進出、2007年には日本一にも輝いた。それでもなぜ、落合博満はフロントや野球ファン、マスコミから厳しい目線を浴び続けたのか。秘密主義的な取材ルールを設け、マスコミには黙して語らず、そして日本シリーズで完全試合達成目前の投手を替える非情な采配……。そこに込められた深謀遠慮に影響を受け、真のプロフェッショナルへと変貌を遂げていった12人の男たちの証言から、異端の名将の実像に迫る。 |
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