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佐藤優さんがドストエフスキーの長編小説の読みどころを効率的に解説した『生き抜くためのドストエフスキー入門』が発売即重版!

佐藤優さん著『生き抜くためのドストエフスキー入門』

佐藤優さん著『生き抜くためのドストエフスキー入門』

新潮社は、10月28日に刊行した、佐藤優さん著『生き抜くためのドストエフスキー入門』が売れ行き好調のため、発売後即重版を決定しました。

今年2021年はドストエフスキーの生誕200年、そして没後140年にあたります。ロシア最大の文豪の傑作長編群のポイントを効率的に抑えることのできる本書は、ロシア文学の読者のみならず、現代を生き抜かんとするビジネスパーソンにも役立つ内容となっています。

 

生誕200年、没後140年を記念したレクチャーを元にした文庫オリジナル作品『生き抜くためのドストエフスキー入門』

なぜドストエフスキーの作品は150年の時を越えて読まれ続けるのか?

ソ連崩壊と冷戦終結、中国の台頭、そしてコロナ禍。時代が激しく変わり続ける今なお、ロシア文学最大の作家による長編には現代人が生き延びるための知恵が込められているからにほかなりません。人は国家に抗えるのか、どうすれば自己実現できるのか。最高の水先案内人による超入門書、ドストエフスキーを読む前に読む本です。

 
<「はじめに」より抜粋>

振り返ってみると、ドストエフスキーはこれまでも危機の時代によく読まれてきた作家です。新型コロナウイルスの流行によって世界的に格差が拡大しつづけている今もまた、まさに読まれるべきタイミングと言っていい。ドストエフスキーは、資本主義が誕生し急速に発展していく時代の只中を生きた作家なので、作品の背景にはつねに格差や社会の歪みと、そこであがきながらも必死で闘う人間が描かれており、われわれが共感する点が多いのです。

 

本書の構成

はじめに 危機の時代の作家

第一章 『罪と罰』を読む

第二章 『白痴』を読む

第三章 『悪霊』を読む

第四章 『未成年』を読む

第五章 『カラマーゾフの兄弟』を読む

あとがき

ドストエフスキー年譜

 

著者プロフィール

佐藤優さん

佐藤優さん

著者の佐藤優(さとう・まさる)さんは、1960(昭和35)年生れ。東京都出身。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館などを経て、1995(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受け2013年執行猶予期間を満了。

2005年『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。主な著書に『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)、『日米開戦の真実―大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く―』『獄中記』『国家の謀略』『インテリジェンス人間論』『交渉術』『いま生きる「資本論」』『いま生きる階級論』『高畠素之の亡霊』『新世紀「コロナ後」を生き抜く』などがある。

 

生き抜くためのドストエフスキー入門 (新潮文庫)
佐藤 優 (著)

生誕200年! あの難解な長編が、こんなに面白いなんて――。超入門! これ一冊でドストエフスキーを語れます。

本文より
これから、みなさんと一緒にドストエフスキーの五大長編、つまり『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』を読んでいきたいと思います。
二〇二一年はドストエフスキー生誕二〇〇年にあたります。二〇〇年前、一八二一年といえば日本では文政四年、まだ江戸時代ですから、ずいぶん大昔に生まれた作家だなという感じがしますね。ちなみに夏目漱石が一八六七年生まれ、森鴎外が六二年の生まれになります。
そんな昔に生まれたドストエフスキーの小説は、いまだに世界中の人びとに読まれているし、きっと今から一〇〇年後にも変わらず読まれているに違いありません。時代を超えたその魅力は一体どこにあるのでしょうか? そして一〇〇年前でもなく、また一〇〇年後でもなく、現代の日本に生きる私たちはどんな意識をもって読めばいいのでしょうか? そんなことも一緒に考えてみたいと思います。
振り返ってみると、ドストエフスキーはこれまでも危機の時代によく読まれてきた作家です。新型コロナウイルスの流行によって世界的に格差が拡大しつづけている今もまた、まさに読まれるべきタイミングと言っていい。ドストエフスキーは、資本主義が誕生し急速に発展していく時代の只中を生きた作家なので、作品の背景にはつねに格差や社会の歪みと、そこであがきながらも必死で闘う人間が描かれており、われわれが共感する点が多いのです。
現在の日本で格差を描く力がある代表的な作家は雨宮処凛さんでしょう。雨宮さんは、犬猿の仲である共産党と公明党、両方のメディアに登場しつつ、れいわ新選組代表の山本太郎さんの側近も務めている。そんな幅広さが彼女にあるのは、イデオロギーに捕らわれず、つねに目の前にある貧困問題を第一に考えているからで、その徹底した現場主義を私は尊敬しています。
その雨宮さんが『コロナ禍、貧困の記録』(かもがわ出版)という本を出しました。コロナ禍が襲った二〇二〇年春から年末までの貧困当事者の声とそれに応じた活動をまとめたものです。たとえば、一度目の緊急事態宣言中の二〇年四月に開かれた生活電話相談には、派遣先のデパートが休業して収入がなくなった人、コロナウイルスに感染して入院し、退院しても雇い止めになって最後の給与は手取り七万円しかなかったという人、自宅の家賃も経営する店舗の家賃も払えない人、そして「コロナに感染してもしなくても死ぬしかない」というところまで追い詰められた人たちの切迫した声が寄せられました。
さらに同年八月の相談会で、雨宮さんが「コロナが生活を直撃する直前までと比較して、どれほど月収が下がったか」と質問したところ、自営業者はマイナス一一万四〇〇〇円、派遣社員がマイナス九万二〇〇〇円、フリーランスがマイナス六万円となっていることがわかった。派遣社員の月収を非正規の平均年収の一七九万円として計算すると、月収にして約一五万円。そこから九万二〇〇〇円マイナスすると、残りはわずか五万八〇〇〇円。東京では家賃を払うことすら難しい額です。では「地方に移住すれば」と言っても、地縁・血縁のない人が地方で仕事を見つけるのは至難の業だし、運よく仕事が見つかっても引っ越す資金がない。八方塞がりの状況で路上生活へ移行するか、自ら死を選択する人も増えているわけです。
また雨宮さんは、貧困当事者としてメディアに登場した人物が、「ほんとに貧困なのか」と責められる〈貧困バッシング〉、そして「お前より大変な人がいるのだから、現状をありがたく思え」といった形で貧困当事者を黙らせる〈犠牲の累進性〉が深刻化していることも指摘しています。
一方で私は、新型コロナのおかげで、株で一〇〇〇億円儲けた人や、「これで土地やビルの値段が下がる、うちの会社の発展にはまたとないチャンスだ」と大喜びする企業経営者を知っています。現に今(二〇二一年夏)、都内の高級レストランの個室は予約でいっぱいですよ。コロナで社会が流動化し、特に東京で貧富の格差が拡大していることが皮膚感覚でヒリヒリと感じられます。
緊急事態宣言をめぐって、「優先すべきは命か、経済活動か」という議論がありますね。もちろん命の方が大事に決まっているけれど、そもそも私たちが生きる資本主義社会は労働力を商品化する、すなわち命とカネを交換するシステムで成り立っています。システムのどこかに手を加えないと格差は止まりませんが、実際にどうすれば有効なのか、これはかなりの難問です。
こういう難しい時代にドストエフスキーを読むのは、大きな意義があります。……

 


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