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第17回新潮ドキュメント賞の候補作が決定 宮下洋一さん、磯部涼さん、古川勝久さん、松本創さん、国分拓さんの5作品

新潮文芸振興会は8月3日、第17回新潮ドキュメント賞の候補作を発表しました。

 

新潮ドキュメント賞について

新潮ドキュメント賞は、財団法人「新潮文芸振興会」が主催。ノンフィクションを対象とし、「ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品」に授与される文学賞です。

なお、以前は「新潮学芸賞」の名称で2001年まで開催されていましたが、2002年からノンフィクションを対象とする「新潮ドキュメント賞」と、評論・エッセイを対象とする「小林秀雄賞」とに分離しています。

 
第17回は、平成29年7月1日から平成30年6月30日までを対象期間としています。
選考委員は、池上彰さん、梯久美子さん、櫻井よしこさん、藤原正彦さん、保阪正康さん。

受賞作には、記念品および副賞として100万円が贈られます。

 

「第17回新潮ドキュメント賞」候補作

第17回新潮ドキュメント賞の候補作は次の通りです。

 
『安楽死を遂げるまで』(宮下洋一さん/小学館)

『ルポ川崎』(磯部涼さん/サイゾー)

『北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―』(古川勝久さん/新潮社)

『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(松本創さん/東洋経済新報社)

『ノモレ』(国分拓さん/新潮社)

 
今回の選考結果の発表は8月24日、授賞式は10月12日の予定です。

 

安楽死を遂げるまで
安楽死、それはスイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アメリカの一部の州、カナダで認められる医療行為である。超高齢社会を迎えた日本でも、昨今、容認論が高まりつつある。しかし、実態が伝えられることは少ない。

安らかに死ぬ――。本当に字義通りの逝き方なのか。患者たちはどのような痛みや苦しみを抱え、自ら死を選ぶのか。遺された家族はどう思うか。

79歳の認知症男性や難病を背負う12歳少女、49歳の躁鬱病男性。彼らが死に至った「過程」を辿りつつ、スイスの自殺幇助団体に登録する日本人や、「安楽死事件」で罪に問われた日本人医師を訪ねた。当初、安楽死に懐疑的だった筆者は、どのような「理想の死」を見つけ出すか。第40回講談社ノンフィクション賞を受賞した渾身ルポルタージュ。

 
ルポ 川崎(かわさき)【通常版】
ここは、地獄か?

工業都市・川崎で中1殺害事件や簡易宿泊所火災、老人ホーム転落死といった凄惨な出来事が続いたのは、偶然ではない――。

俊英の音楽ライター・磯部涼が、その街のラップからヤクザ、ドラッグ、売春、人種差別までドキュメントし、ニッポンの病巣をえぐる。

 
北朝鮮 核の資金源:「国連捜査」秘録
「最強制裁」を掲げるこの日本も、抜け穴だらけだった。
テロ国家は決して孤立などしていないのだ──。
国連制裁の最前線で北朝鮮を追いつめた男、衝撃の告発。

厳しい国際包囲網の中、なぜ彼らは核兵器や米国にまで届くミサイルを開発できるのか。
国連安保理の最前線で捜査にあたった著者が直面したのは、国連安保理常任理事国の足もとにまで張り巡らされた犯罪ネットワーク、それを駆使して戦闘機やミサイルすら密輸する非合法ビジネス、そして組織の中核で暗躍する日本人の存在だった──。
北朝鮮の急所を抉り出すスクープノンフィクション!

 
軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い
「責任追及は横に置く。一緒にやらないか」
遺族と加害企業の社長。相反する立場の2人は巨大組織を変えるためにどう闘ったのか。あの事故から始まった13年間の「軌道」を描く。

乗客と運転士107人が死亡、562人が重軽傷を負った2005年4月25日のJR福知山線脱線事故。
妻と実妹を奪われ、娘が重傷を負わされた都市計画コンサルタントの淺野弥三一は、なぜこんな事故が起き、家族が死ななければならなかったのかを繰り返し問うてきた。
事故調報告が結論付けた「運転士のブレーキ遅れ」「日勤教育」「ATS-Pの未設置」等は事故の原因ではなく、結果だ。
国鉄民営化から18年間の経営手法と、それによって形成された組織の欠陥が招いた必然だった。

「組織事故」を確信した淺野は、JR西日本自身による原因究明と説明、そして、組織と安全体制の変革を求める。そのために遺族感情も責任追及も封印し、遺族と加害企業による異例の共同検証を持ち掛けた。

淺野の思いに呼応し、組織改革に動いた人物がいた。事故後、子会社から呼び戻され、初の技術屋社長となった山崎正夫。3年半でトップを退くが、その孤独な闘いは、JR西日本という巨大組織を、長年の宿痾からの脱却へと向かわせた。
それは、「天皇」井手正敬の独裁に依存しきった組織風土、さらには、国鉄改革の成功体験との決別だった。

淺野と山崎。
遺族と加害企業のトップという関係ながら、同世代の技術屋ゆえに通じ合った2人を軸に、巨大組織を変えた闘い、鉄道の安全を確立する闘いの「軌道」を描く。
そこから見えてきたのは、二つの戦後史の「軌道」だった──。

 
ノモレ
奴隷にされた曾祖父が、100年以上前に密林で生き別れになった仲間。突如出現したイゾラドは、彼らの子孫、我々のノモレではないのか―。未知の人々を保護すべきか、警戒すべきか。ペルー国内が騒然となるなか、先住民イネ族の若きリーダー・ロメウは、曾祖父の言葉を思い起こしていた。1902年、入植者の白人が経営するゴム農園で奴隷にされた曾祖父たちは、生き延びるためにパトロンを殺し、二手に分かれ、逃げたのだ。曾祖父たちは故郷へ戻ったが、森に消えた仲間たちと二度と会うことはなかった。文明、歴史、人種、時間、言葉…。現代人の価値観に挑むノンフィクションの臨界点!

 
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