本のページ

SINCE 1991

大平一枝さんエッセイ集『人生フルーツサンド』が刊行

大平一枝さんの心に沁みるエッセイ集『人生フルーツサンド 自分のきげんのつくろいかた』が大和書房より刊行されました。

 

著者がNHK「あさイチ!」出演で話題! 今、もっとも注目される書き手のどこを読んでも心に沁みる最新エッセイ集!

自分をなだめる方法を知っている人は強い。
記念日じゃない日こそ大切。
――フルーツサンドのようにいろいろつまった作品集です。

 
◆あのフルーツサンドのような人生を

(「はじめに」より)

近所に何十回と通っている古い小さな喫茶店があり、色とりどりのフルーツサンドが、心配になるくらい安価で食べられる。カットされたフルーツの断面が美しい今はやりのあれだが、流行のずっと前から最高の食材を使って愚直に作り続けている。そこには、食べてみないとわからない職人ならではの秘密が隠されていて、食べるたび、私の人生もこうありたいと思わせられる。それについては本章で詳しく綴っているのでぜひお読みいただきたい。

二八年間各誌紙に綴ってきたエッセイを一冊に編んでいただく機会を得た。暮らしや家事、住まい、 仕事、家族。俯瞰するといろんな要素が詰まっていて、フルーツサンドのような本になった。

ライターとして駆け出しの頃、建築家の津端修一さん・妻の英子さんを何度か取材した。『人生フ ルーツ』という映画等で注目されるもっと前のことだ。雑木林に囲まれたお住いを訪ねると、いつも肩の力が抜けた穏やかな笑顔のお二人がいて、おいしいミネストローネとパンのランチや、庭で育てたハーブのサラダを振る舞ってくださった。物腰はやわらかいが、ニュータウンの土や植物、生態系を守りたいのだという志はエベレストのように高く、ゆるぎがない。工夫に満ちた美しい暮らし方以上に、その強さとやわらかさを印象深く思った。人としてのゆたかな多面性に魅了された。

酸っぱかったり甘かったり、やわらかだけど芯は心地よい歯ごたえがあったり。立派な先人を描いた映画タイトルと、毎回背筋が伸びる小さな喫茶店のきちんとしたサンドイッチに敬意を表して、僭越ながら本書にこのようなタイトルを付けた。

毎日は複雑で、考えることだらけだ。

歳を重ねたらもう少しシンプルに考えられるようになるかと思っていたがどうも違う。一本一本、歳月をかけて紡いできたものを振り返ると、整えるというより、なんとか自分をなだめる方法を探りながらつくろいながら、やってきたのだなあと思う。そういうなだめ方をたくさん持っている人に今も憧れ続けている。悩みのシミを完璧に取り去ることはできなくても、ゆっくりぼかせるヒントを持っている人。みずみずしい果実を自分の内に育て、歳を重ねるほど気負わず、しなやかに生きる人に。

 

本書の目次

一章 暮らしごと

二章 住まいと旅

三章 じりじり、 おたおた育児

四章 おしゃれの謎、粋のしくみ

五章 人生の庭

 

著者プロフィール

大平一枝(おおだいら・かずえ)さんは、作家・エッセイスト。長野県出身。編集プロダクションを経て、1995年に独立。市井の生活者を独自の目線で描くルポルタージュ、失くしたくないもの・コト・価値観をテーマにしたエッセイ多数。

著書に『ジャンク・スタイル』『東京の台所』(以上 平凡社)、『紙さまの話』(誠文堂新光社)、『それでも食べて生きてゆく 東京の台所』(毎日新聞出版)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)などがある。最新刊は『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ行」が苦手な君に』(ポプラ社)。

 

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です