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没後40周年、有吉佐和子さん『青い壺』が累計45万部を突破!

有吉佐和子さん著『青い壺』(文春文庫)

有吉佐和子さん著『青い壺』(文春文庫)

文藝春秋から刊行されている有吉佐和子さんの『青い壺』(文春文庫)が累計45万部を突破しました。長年にわたって愛されてきた本作は、原田ひ香さんの推薦コメントなどが追い風となり、昨年から再ブレイク。有吉佐和子さん(1931-1984)の没後40周年の今年、大きな注目を集めています。

 

原田ひ香さん「こんな小説を書くのが私の夢です」

『青い壺』は、定年後の夫との折り合いや遺産争い、女学校の同窓会旅行、そしてスペイン出身の修道女の帰郷といった、そのときどきの持ち主のエピソードから、人間のさまざまな心の綾を映し出す13編の連作短編集です。

 
中学生時代から有吉作品のファンで、『三千円の使いかた』が90万部のベストセラーとなった原田ひ香さんが、2022年に帯への推薦コメントを寄せました。これをきっかけに、書店での展開や口コミで面白さが伝わり、この半年だけで12万部、累計45万部を突破するベストセラーとなっています。

撮影:喜多剛士

撮影:喜多剛士

<原田ひ香さんコメント(帯より)>

有吉佐和子作品との出会いは、中学生の頃。『悪女について』を読み、あまりの面白さに虜になりました。次に見つけたのが『青い壺』です。悪女の代わりに青い壺が人に近づき、人生に変化をもたらします。陶芸家、定年後の夫婦、道ならぬ恋を匂わせる男女、相続争いする人々……さまざまな人の間を壺はめぐり、さらには遠いスペインまで行きます。各話ごとに工夫が凝らされ、すべての人物の心理と生活に説得力がある。こんな小説を書くのが私の夢です。

 
またこの一年の快進撃を受けて、原田ひ香さんが本作の魅力について綴った寄稿を文春オンラインで新たに公開。

★「3000円の価値はこの50年であまり変わっていない。」:https://bunshun.jp/articles/-/68233

 

絶版になった『青い壺』が奇跡の復刊を遂げた理由

1998年に絶版となった『青い壺』を掘り起こし、復刊させたのは文春文庫編集部の山口由紀子さん。

「ある日『青い壺』に目が止まりました。(中略)“この一冊に、有吉佐和子のすべてが入っている!”と思える面白さ。すぐ企画会議に出して新装版の刊行が決まりました」

「文藝春秋」1976年1月号の表紙と『青い壺』連載第1回

「文藝春秋」1976年1月号の表紙と『青い壺』連載第1回

かつて月刊文藝春秋に連載されていた『青い壺』。成り立ちは、https://books.bunshun.jp/articles/-/8498 からお読みください。

 

本書の構成

第一話
青磁ひとすじに制作を続ける陶芸家の省造。ある日デパートの注文品とともに焼きあがったその壺は見る者を魅了した。

第二話
定年後、家でぼんやりする夫を持てあました妻は、世話になった副社長へのお礼にデパートで青い壺を買い、夫に持たせた。

第三話
副社長の夫の部下の女性と、甥っ子を見合いさせるため二人を自宅に呼んだ芳江は、今どきの人たちに呆然とする。

第四話
青い壺に美しく花を生けようと奮闘する芳江。孫を連れた娘の雅子が急に帰ってきて、婚家の醜い遺産争いを愚痴るのだが。

第五話
老いて目が見えなくなった母親を東京の狭いマンションに引き取った千代子。思いがけず心弾む生活だったが……

第六話
夫婦ふたりで、戦後の焼け跡から始めたこじんまりとしたバー。医師の石田は、「御礼」と書いた細長い荷物を置いて帰った。

第七話
息子の忘れ物としてバアのマダムが届けてくれた壺をみて、老婦人は、
戦時中の外務官僚だった亡き夫との思い出がよみがえり、饒舌に語りだす。

第八話
長女が嫁ぎ、長男はアメリカに留学。姑は他界したある日、夫にレストランに誘われ……

第九話
女学校の卒業から半世紀、弓香は同級生たちと久しぶりに京都で集まる。戦争を経て子育ても終えた彼女たちは、家庭の状況も経済状態もそれぞれで……。

第十話
母校だったミッションスクールの初等科に栄養士として就職した、弓香の孫娘の悠子。野菜を食べさせたいと工夫を凝らすが、ある日…

第十一話
世話になったシスターが45年ぶりにスペインに帰郷するときいた悠子は、青磁の壺をプレゼントする。壺はついに、海をわたる!

第十二話
スペイン旅行中に急性肺炎になったという入院患者の男は、病室に飾った青い壺に触られそうになると、怒鳴るのだった。

第十三話
高名な美術評論家を訪ねた陶芸家の省造。スペインで見つけた「12世紀初頭の」掘り出しものとして、青い壺を見せられたが……。

解説:平松洋子

 

和歌山市立有吉佐和子記念館からも喜びの声

《「青い壺」は天性のストーリーテラー有吉佐和子の本領が遺憾なく発揮された小説です。
壺をめぐる一話完結の短編が一つ一つ楽しめ、それが13編連なるとなおかつすぐれた長編としても堪能できるとても贅沢な造りです。
登場人物の陶芸家は芸道もの、定年退職した夫婦は老人問題のテーマが潜められるなどしており、有吉文学全体が凝縮された一編といえるでしょう。》
――和歌山市立有吉佐和子記念館館長 恩田雅和さん

 
<和歌山市では「第1回 有吉佐和子文学賞」のエッセイを募集中!>

有吉佐和子さんのように1つのテーマにとらわれることなく、今思っていること、普段から感じていること、ずっと疑問に思っていること、大切な思い出、将来の夢、今までの自分を見つめなおして考えたこと、そして和歌山への想いなど、エッセイのテーマは自由です。

最優秀賞の入賞者には5万円分の図書カードをプレゼント。
詳細は和歌山市のHPをご覧ください

★URL:http://www.city.wakayama.wakayama.jp/kurashi/bunka_sports/1001119/1055471.html

 

著者プロフィール

有吉佐和子さん(1975年撮影)

有吉佐和子さん(1975年撮影)

有吉佐和子(ありよし・さわこ)さんは、昭和6(1931)年生まれ、和歌山出身。昭和31(1956)年に『地唄』で文壇デビュー。

紀州を舞台にした『紀ノ川』『有田川』『日高川』三部作、世界初の全身麻酔手術を成功させた医者の嫁姑問題を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老人介護問題に先鞭をつけ当時の流行語にもなった『恍惚の人』、公害問題を取り上げた『複合汚染』など意欲作を次々に発表し人気作家の地位を確固たるものにする。

多彩かつ骨太、エンターテインメント性の高い傑作の数々を生み出した。
昭和59(1984)年8月逝去。

 

新装版 青い壺 (文春文庫)
有吉 佐和子 (著)

無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が売られ贈られ盗まれ、十余年後に作者と再会した時――。
人生の数奇な断面を描き出す名作!

シングルマザーの苦悩、すれ違う夫婦、
相続争いに悩む娘の言葉を聴いてドキリとする親…
人間の奥深く救うドロドロした心理を小気味よく、鮮やかに描き出す絶品の13話!

 
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