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10代のメンタルは「史上最悪」――『スマホ脳』著者アンデシュ・ハンセンさん最新作『メンタル脳』が刊行

『スマホ脳』など世界的危機に応えるシリーズが日本国内でも100万部を超えるアンデシュ・ハンセンさんの最新作『メンタル脳』が新潮社より刊行されました。

 

現代人のメンタルは「史上最悪」

不眠、不安、うつ、孤独…現代人のメンタルは「史上最悪」と言われています。とりわけ若年層のメンタルは深刻です。コロナ禍の渦中とは言え2021年、ユニセフは世界の10~19歳の若者の7人に1人以上が心の病気の診断を受けていると報告。米国の疾病予防管理センター(CDC)は2023年2月、10代のメンタルヘルス問題は「国家的危機」とまで危機感を表明しました。

日本も例外ではありません。高校生で30%、中学生で24%、小学4年生~6年生でも15%が「中等度以上のうつ症状」を訴えているとの調査結果もあります。現在、日本全国に配置されたスクールカウンセラーは1万人を超えます。その一方、文部科学省によれば2022年に自殺した小中高校の児童・生徒は過去最多と史上最悪に。不眠で心療内科を受診する10代がこの20年で10倍に増えたというスウェーデンでは、世界的ベストセラー『スマホ脳』の著者で精神科医のアンデシュ・ハンセンさんが「10代のメンタルはかつてないほど悪い」と警告、『メンタル脳』を上梓してベストセラーとなりました。

 
『スマホ脳』はデジタル機器の進化に対して人間の脳の進化が追いついていないことを指摘、そのために起こるさまざまな弊害に警鐘を鳴らした一冊で、2021年「日本でもっとも売れた本」となりました。同書は累計70万部を突破、『最強脳』『ストレス脳』『脱スマホ脳かんたんマニュアル』といったハンセンさんの著作の累計は日本で100万部を超えています。

今回発売された『メンタル脳』は、「なぜ人は不安から逃れられないのか?」という問から始まった前著『ストレス脳』(世界34ヶ国で刊行予定)を、児童作家マッツ・ヴェンブラードさんの力を借りつつ若者向けにコンパクトに語り直した一冊です。同書は現地スウェーデンでは学校現場で活用され、『最強脳』『脱スマホ脳かんたんマニュアル』と合わせて4000校(全国の学校数の80%)で、計20万人の中高生に読まれています。

 
著者はわれわれ人類が現在に到るまで生き延びられている理由から語り始め、サバンナに暮らしていた時代から「脳」がどのように私たちを「生き延びさせて」きたのか、その仕組みを最新の脳科学を援用しながら平易に説明していきます。

と同時に、サバンナで暮らしていた時代に比べれば、はるかに疫病や戦争、飢餓といったリスクから遠ざかりながらも、なぜ現代人は気分が落ち込み、不安に追われ、引きこもりたくなるかを解説していきます。

 
著者が『ストレス脳』で指摘したように、世界保健機関(WHO)の試算によれば世界で2億8000万人が不安障害を抱え、2億8000万人がうつに苦しんでいるそうです。4人に1人が生涯でうつや不安障害を経験し、3人に1人がうつの原因ともなる「孤独」に陥ります。孤独は「1日15本の喫煙」と同等のリスクがあり、寿命を縮めることがわかっています。SNSは10代の自殺念慮の原因の6~13%に及ぶ可能性があるとも指摘されています。現代のわれわれは、日常的にストレスがもたらすリスクに囲まれていると言っても過言ではありません。

 
本書『メンタル脳』で明らかになるのは、10代の若者もまた、当然のことながらそうしたストレスと無縁ではありえないということです。著者は本書でこう述べます。

 
「精神的に苦しい時は、『自分はどこかがおかしいのでは』と思ってしまうかもしれません。自分は壊れているとか、欠陥があるという風に。ですがそうではありません。つらい気持ちは自分でもどこからきたかわからないことがありますが、それも人間であることの一部です。人間はそのようにできているのです」

 
そして同時に著者は「知識は解毒剤になる」と説きます。うつや不安や孤独に苛まれるとき、PTSDやトラウマや引きこもり衝動に悩むとき、本書はそれらから解放されるための〈心の取説(とりせつ)〉として機能するかもしれません。

 

「日本の読者の皆さんへ」より(抜粋)

私たちの4人に1人が人生において、うつや強い不安といった精神的な不調を経験します。25%という傾向は日本人にもスウェーデン人にも当てはまり、もっと言うと世界中どこでもそうなのです。ではなぜそれほど多くの人が苦しまなければいけないのでしょうか。

精神科医になって以来、ずっとその謎について考えてきました。そもそもそれが精神科医になった理由でもあります。

しかも世界的に今、10代のメンタルヘルスは「かつてないほど悪い」とも言われています。スウェーデンではここ20年、不眠で受診する10代の若者が10倍に増えています。

日本でも私の著書は『スマホ脳』をはじめとして、驚くほど多くの人に読んでもらえました。それはテーマが世界共通だからでしょう。スマホもメンタルも、どう付き合うかは世界中の人たちが毎日苦労している問題なのです。この本が日本でも良い効果を生み、多くの若者が自分の脳について学んでくれることを心から願うとともに、本を読んだ人たちがもっと運動をし、睡眠を大切にし、スマホに使う時間を減らしたいと思えるようになればうれしいです。成績のためだけでなく、メンタルも身体も元気でいるためにできることなのですから。

――アンデシュ・ハンセン

 

本書の構成

第1章 なぜ私たちは生きているのか

第2章 なぜ感情はあるのか

第3章 なぜ不安を感じるのか

第4章 なぜ記憶に苦しめられるのか

第5章 なぜ引きこもりたくなるのか

第6章 なぜ運動はメンタルを強化するのか

第7章 なぜ孤独とSNSはメンタルを下げるのか

第8章 なぜ「遺伝子がすべて」ではないのか

第9章 なぜ「幸せ」を追い求めてはいけないのか

 

著者プロフィール

 
■アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)さん

1974年生まれ、スウェーデン出身。精神科医。ストックホルム商科大学で経営学修士(MBA)を取得後、ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学に入学。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行い、その傍ら有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。

『一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、『スマホ脳』はその後世界的ベストセラーに。『最強脳』『ストレス脳』なども含めた日本での同氏の著作は累計100万部を突破している。

 
■マッツ・ヴェンブラード(Mats Wanblad)さん

1964年生まれ、スウェーデン・ストックホルム出身。児童作家。

 
■訳:久山葉子(くやま・ようこ)さん

1975年生まれ、兵庫県出身。翻訳家。エッセイスト。神戸女学院大学文学部英文学科卒業。スウェーデン大使館商務部勤務を経て、現在はスウェーデン在住。

 

メンタル脳 (新潮新書)
アンデシュ・ハンセン (著), マッツ・ヴェンブラード (著), 久山 葉子 (翻訳)

現代人のメンタルは「史上最悪」!
100万部突破『スマホ脳』シリーズ著者が
世界的危機「10代のメンタル」に応えるベストセラー、上陸!

ユニセフは世界の10~19歳の若者の7人に1人以上が心の病気の診断を受けていると報告、米CDC(疾病予防管理センター)は10代のメンタルヘルス問題を「国家的危機」と警告している。
日本の調査でも高校生の30%、中学生の24%、小学4年生~6年生の15%が「中等度以上のうつ症状」を訴えている。とりわけ深刻なのは10代の女子だ。男子に較べ、3倍もうつ症状に苦しめられているという。
では、それはなぜなのか? どうすればよいのか?
脳科学の見地から、それらの問いに応える「心の取説[トリセツ]」

 
【関連】
試し読み | アンデシュ・ハンセン、マッツ・ヴェンブラード、久山葉子/訳 『メンタル脳』 | 新潮社

 


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